黒曜の誓い、竜を狩る者たち

ンヴ

文字の大きさ
79 / 100

79

しおりを挟む
記憶の森の最深部。そこは、歪んだ時空の狭間のような、不安定な空間だった。アトロポスは、その中心で禍々しいオーラを放ち、俺たちを待ち構えていた。彼女の周囲には、無数の運命の糸が絡み合い、絶望的な未来の可能性を絶えず紡ぎ出している。

「フフフ……面白い。まさか、お前たちが私の試練を乗り越え、ここまで辿り着くとはな。だが、それもまた、運命の糸が示す一つの結末に過ぎぬ。お前たちのその矮小なる希望も、やがては絶望へと収束するのだ」
アトロポスは、嘲るように言った。その瞳には、もはや以前のような焦りの色はなく、むしろ、自らの紡ぎ出す運命への絶対的な確信が宿っている。

「アトロポス! お前の歪んだ運命論は、もう聞き飽きた!」
俺は、虹色に輝く魂の剣を構え、叫んだ。「俺たちの未来は、俺たちが決める!」

「そうだ! どんな運命だって、私たちみんなで力を合わせれば、きっと変えられるはずだよ!」
ルナもまた、聖なる光を放ち、アトロポスを睨みつけた。

仲間たちも、それぞれの覚醒した力を解放し、アトロポスに立ち向かう。
ザナックとカイの剣技は、運命の糸の隙間を縫うように、アトロポス本体へと迫る。
アルドリスとリアラの連携は、アトロポスの魔術的な防御を打ち破り、その力の源を断ち切ろうとする。
リオとセナは、古代の知識と星の民の技術を融合させ、運命の糸そのものを無力化する特殊なフィールドを展開する。
そして、フレアとクロノスもまた、それぞれの力を駆使し、俺たちを援護する。

「おのれ……! なぜだ……!? なぜ、私の紡ぐ運命が、お前たちには通用しないのだ……!?」
アトロポスは、初めて本気の狼狽を見せた。彼女の絶対的な自信が、揺らぎ始めている。

「それは、俺たちの絆が、お前の運命の糸よりも強いからだ!」
俺は、仲間たちの全ての想いを乗せた渾身の一撃を、アトロポスに向かって放った。

虹色の光と、聖なる光、そして仲間たちのそれぞれの力が一つとなり、アトロポスが紡ぎ出す絶望の運命の糸を、完全に断ち切った。
「ぐあああああああっ!」
アトロポスは、断末魔の叫びを上げ、その体が黒い塵となって消滅していった。
「……これが……運命に……抗う……力……だと……いうのか……。カイロス……様……」
彼女は、最期にそう呟き、完全にその存在を消した。

アトロポスを倒した安堵も束の間、記憶の森全体が激しく揺れ動き始めた。空間が歪み、時空の裂け目が無数に現れる。そして、その裂け目の中心から、形容しがたいほどの、圧倒的なプレッシャーと共に、一つの巨大な「意思」が姿を現した。

それは、特定の形を持たない、宇宙の法則そのものが具現化したかのような、超越的な存在だった。その存在からは、絶対的な「秩序」と、そして「無慈悲なまでの調和」の意志が放たれている。

「……見事だ、人間どもよ。そして、光の乙女。お前たちは、我が仕掛けた『可能性の試練』――アトロポスという駒を、見事に打ち破った」
その「意思」――「調律者」は、直接的な言葉ではなく、俺たちの魂に直接語りかけてくるかのように、その思考を伝えてきた。その声は、何の感情も宿しておらず、ただ淡々と、世界の法則を語るかのように響く。

「お前が……調律者……!」
俺は、息を飲んだ。目の前の存在は、これまでのどんな敵とも比較にならない、まさに「神」と呼ぶべき領域の存在だった。

「いかにも。私は、この宇宙の調和を維持するために存在する、古の盟約の執行者。そして、お前たちは、その調和を乱す、イレギュラーな存在だ」
調律者は、冷ややかに告げる。

「俺たちが……調和を乱すだと……?」
俺は、困惑した。俺たちは、ただ平和を願い、世界を守ろうとしてきただけだ。

「そうだ。お前たちのその強すぎる『絆』、そして『個の意志』は、宇宙の法則に歪みを生じさせ、やがては大きな不均衡と破滅をもたらす。故に、私はお前たちを排除し、世界を再び『無』へと還し、新たなる調和の秩序を創造する」
調律者の言葉は、俺たちにとってあまりにも理不尽で、そして絶望的なものだった。

調律者が、その絶対的な力で、俺たちを消滅させようとした、その瞬間。
天から、荘厳な光と共に、もう一人の超越的な存在が降臨してきた。その存在は、調律者とは対照的に、温かく、そして慈愛に満ちたオーラを放っている。

「……待ちなさい、調律者。彼らの『絆』は、決して破壊の要因ではありません。それは、新たな調和を生み出す、可能性の光なのです」
その声は、穏やかで、しかし揺るぎない意志を宿していた。

「……裁定者……! なぜ、お前がここに……!?」
調律者の声に、初めて焦りの色が浮かんだ。

「私は、古の盟約のもう一つの側面。世界の『正しい選択』を導き、そして『新たなる調和』の可能性を見守る者。そして、私は判断しました。この者たちの絆こそが、この宇宙を、より高次な調和へと導く鍵となる、と」
「裁定者」と名乗る存在は、静かに、しかし力強く宣言した。

調律者と裁定者。宇宙の法則を司る二つの超越的な存在が、俺たちを挟んで対峙する。
調律者は、俺たちの絆を「不調和」と断じ、世界を無に還そうとする。
裁定者は、俺たちの絆を「新たなる調和の可能性」と認め、俺たちに未来を託そうとする。

世界の運命は、この二つの超越的な存在の意志と、そして、俺たち自身の「選択」にかかっていた。
物語は、宇宙の法則そのものを賭けた、壮絶なる最終局面へと突入していく――。
果たして、俺たちは、この絶望的な状況の中で、どのような未来を選び取るのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...