エリート妻色情飼育―性奴隷は人妻にかぎる―

山田さとし

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第八部 最後の仕上げ

第五十六章 マドンナ

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場面は春香が「秘密の部屋」で凌辱された日の数週間前にさかのぼる。

※※※※※※※※※※※※※※※
春香調教前「レストラン」
20●2年5月25日 PM 7:00


「カンパーイ・・・」

三つのグラスが合わさる音の後に、男達の逞しい喉の動きとつつまし気な裕子のうなじが見えていた。

「かっー・・美味いっ・・・」
井上が思い切り目を閉じて放つ言葉を悟は楽しそうに聞いていた。

井上と春香が婚約を報告した夜の事だった。
今夜は井上の婚約祝いを二人でささやかにする事にしたのだが、裕子も呼んだのだ。

「でも残念だわ、
佐山さんも来れば良かったのに・・・」

一通り酔いが廻る頃、裕子の言葉に大きな声で井上が答えた。

「仕方無いですよ。
社長のお供じゃ、
いくら専務だって誘えないし・・・
タマにはこうして
飲むのもいいものですよ・・・」

井上の顔が真赤になっている。

「あら、随分頼もしいのね・・・?」
裕子の声に、すかさず悟が同調する。

「そうなんだよ、コイツ・・・
遂この間まではコチコチだったのに
今じゃすっかり亭主気取りなんだぜ。

何でも佐山さんが処女だったもんで
それこそ有頂天になってるのさ・・・」

「せ、専務・・それ言わないって約束・・・」

慌てる井上の言葉を遮るように、裕子が妖しい微笑みを投げながら言った。

「あら、そうなんだ・・井上さん、幸せ者ね?」

井上の顔が更に赤くなる。
間近で見る裕子の美貌は、井上の酔いを加速させるには十分であった。

入社以来、ずっと憧れていた裕子と同席する事だけでも今夜は興奮していたのだ。

才色兼備の裕子の美貌は社内の男達を魅了していた。
噂では過去に離婚の経験があるというが、かえってそれが妖しい魅力を添えているのだった。

何を隠そう、春香に出会う前は本気で裕子に惚れていた井上だった。
そう、井上にとって裕子は「マドンナ」なのだ。
裕子が席を外してる時、グイグイ酒をあおぎながら悟が言った。

「どうだ、いい女だろう・・・?」
裕子への井上の熱い眼差しに気付いていた悟が、からかうような表情をしている。

「幸せ者だな、お前は・・・
佐山さんみたいな綺麗なお嬢様と婚約して。
だけどな、井上・・・」

何時も冷静な悟にしては、顔を酔いで赤くしながら大きな声で言う。

「お前は将来秋元グループを継ぐ
俺の片腕になるんだ。
分るなっ・・・?」

「ハ、ハイッ・・専務、光栄です・・・」
悟の意外な言葉に、お世辞では無く本気で井上はそう思った。

留学経験もある悟は頭脳明晰で、何をやらせても優れていた。
そんな男に将来の片腕などと言われれば、興奮するのも当り前である。

「お前と俺は一身同体だっ・・・。
俺は例え自分の女でも
お前となら共有してもいいとさえ
思ってるんだ・・・」

悟の言葉が酔いで痺れている井上の頭に、心地良く響いていく。
井上は感動して涙も流さんばかりに、悟に掴まれた手を握り返して言った。

「お、俺もっ・・専務もためなら・・・
専務のためなら何でもします・・・」

感動しやすい性格なのだろう。
冷めた若者が多い中で珍しく純情であった。

そんな所が気に入っている悟ではあったが。
井上に言った事は本心であった。

T大を優秀な成績で卒業した井上は性格も素直で、悟は将来の片腕として井上を買っていた。
そして完全に自分の意のままになる程に育てていきたいと思うのだった。

そう、まるで奴隷のように。
裕子が席につく瞬間、悟が耳元で囁いた。

「抱いていいぞ・・井上・・・」

※※※※※※※※※※※※※※※

井上は今、まさに人生の絶頂であった。

仕事も順調で尊敬する悟の元、会社で尤も重要なポストを任されている。
誰もが羨むような美女の春香と婚約して、社長からも祝福されている。

そして今・・・。
井上は甘い香りに酔いが覚める想いだった。

憧れの裕子と腕を組みながら、二人きりで夜道を歩いているのだ。
興奮で心臓が爆発しそうな程早くなっている。
急な用事が出来て先に帰った悟であったが、裕子は妖しい微笑を浮かべ囁いた。

「いいじゃない、飲みましょうよ・・・
それとも私とじゃ、イヤ・・・?」

裕子の持つ、切れ長の潤んだ瞳の魔力を退けられる男はいやしないだろう。
井上は吸い込まれるように見つめ返すと、心地良い世界に踏み込んでいった。

悟が投げた言葉が頭に絡みついている。

『抱いていいぞ、井上・・・』 

どういう意味であったのか。
あれから直ぐに帰った悟の笑みが、不自然に井上の思考をかき混ぜていくのだった。

気が付いた時には裕子のマンションの前まで来ていた。
井上の手を取りながら放たれた裕子の言葉が、胸の奥深く入り込んでいった。

「好きよ、井上さん・・・」
男の足はその手に導かれるまま、マンションのオートドアをくぐるのだった。
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