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43:腹黒殿下の囲い込み作戦
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重厚なつくりの木製の扉の先には、ロの字形に机がならべられ、ずらりと風紀委員が勢ぞろいしていた。
しかもブレイン殿下が入室するなり、皆が一斉に立ち上がって腰を折り曲げてあいさつしてくる。
うっ、圧がスゴい……!
「皆、忙しいなか、よくあつまってくれたね。さっそく本題に入っていこう。しかしその前にひとつ重要な案件がある。ここにいる少年は先日の違法薬物摘発の際、私の手違いにより危険にさらしてしまった被害者だ。あらためて、風紀委員長として、キミに謝罪をしようと思う。すまなかった!」
低く響くいい声が俺のことを紹介したと思った矢先に、なんとブレイン殿下が俺に向きなおり、あたまを下げてきた。
「なっ……!?あたまをあげてくださいっ!そんな王族のかたにあやまっていただくなんて……っ!!」
当然のように周囲はザワつくし、なにより俺だっておどろく。
だって、本来王族とは白いものを黒だと言えば黒くなるような、そんな絶対的な権力を持った存在だ。
そんな王族が、伯爵家の次男にすぎない俺に向かってあたまを下げるとか、ありえないだろ?!
かえって怖いし、勘弁してくれよ!
なのにブレイン殿下は、あたまを上げない。
「私は、己が力をよくわかっているつもりだ。あやまった選択をしようとも、それが正しいものになってしまう。だからこそ、真に正しくありたいと風紀委員をえらんだんだ。その誇りにかけて、キミには正式に謝罪させてもらう」
「「「申し訳なかった!!」」」
そんな殿下の姿にとまどっていたのも最初だけで、説明が終わるころにはそれ以外の風紀委員の人たちまでもが一斉に俺に向かってあたまを下げてあやまってくる。
その迫力は、なかなかのものだった。
「み、皆さまのそのお気持ちは受け取りました!もうけっこうです!本当に……その、もう気にしませんので!だから皆さまあたまを上げてください!お願いします!!」
それに気圧されながらも、必死に声をあげれば、ゆっくりとブレイン殿下が折った腰をもどす。
その気配を悟ったのか、皆そっと姿勢をもどしてくれた。
あぁよかった、こういうところで一斉に謝罪を受けるなんて、心臓によくないだろ。
気づかれないように、そっと息をつく。
スマートに謝罪を受け入れるのなんて、たぶん俺にはムリだ。
「さて、諸君が今見たように、この少年の心根は非常に真っ当で誠実だ。どうか皆、家名にまどわされずに、彼自身を見てほしい」
「「「御意!!」」」
統率のとれた委員会のメンバーには、気圧されっぱなしだった。
「うん?『どういうことか?』と聞きたそうな顔をしているね?」
「………はい」
隣に立つブレイン殿下の顔をそっと見上げれば、おだやかな笑みがかえされる。
うぅっ、その笑顔がまぶしい。
「簡単だよ、人は不測の事態に直面したとき、本性が出る。私という王族が突然あたまを下げたときの姿を皆には見てもらった。どうせキミのことだから、おどろいて、ついでに若干怯えるだろうと告げておいた」
どうやら俺は、試されていたらしい。
「本当に委員長のおっしゃるとおりでした。その瞬間を逃すまいと見ておりましたが、みじんも勝ち誇ることもなく、ただひたすらにおどろき、恐縮しているようにしか見えませんでした」
そう言葉を添えてくるのは、副委員長をつとめるブレイン殿下の側近のひとりだ。
名前はスコッチ・タイガー・ボネット。
ボネット侯爵家の次男だ。
彼もまた、作中のブレイン殿下の風紀委員の活動中のスチルにだけは小さく横顔で登場するものの、表向きには名前すらあかされていないモブだった。
いかにも剣が得意そうな騎士っぽい雰囲気の先輩で、よく鍛えられた体つきと、グレーがかった銀の短髪に黄色の瞳の組み合わせは、どことなく狼を思わせる。
たしかにこんな眼光するどくにらみつけられたら、たいていの人はビビって非行も働かなくなりそうだ。
ある意味で、とても風紀委員向きだよな……。
───まぁ、個人的には名前は虎なのに、見た目は狼っぽいとか、どっちなんだよ!?って気がするんだけど。
それはこの際、置いておくとして。
「ほら、どうだいスコッチ?彼は信用できるだろう?」
「たしかに……ついでにいかにもすなおそうで、いろいろとお察しいたしました」
「優秀なキミが、私の側近かつ副委員長でよかったよ」
周囲を置き去りにしたまま、ふたりだけでにこやかに会話が進んでいる。
だけどこれはよくある光景なのか、風紀委員のメンバーは黙ってふたりのやりとりを見守っていた。
ところで、謝罪をすることが目的なら、もう俺は帰っていいんだろうか?
なんとなくこれまでに受けていたような嫉妬まじりのそれとはちがって好意的ではあるものの、それでも好奇の目にさらされるのは、やはり慣れなかった。
「───さて、あらためて本題に入ろう。私が風紀を取り締まるこの学校で違法薬物が横行するなど、ゆるされることではない。この件は私への挑発であり、風紀委員へと売られたケンカだ。今回は風紀委員の総力をあげて対応したいと思っている」
と、そこでいったんブレイン殿下は言葉を切る。
風紀委員の生徒たちは、皆まっすぐな視線を向けていて、そこには信頼がにじんで見えた。
そっか、ブレイン殿下はゲームのなかでは腹黒キャラだなんて言われているけれど、それは王族として生まれ育ったゆえの性格だもんな。
本当はすごく、まっすぐな気性の方なのかもしれないな……。
「しかし相手は手ごわく、昨晩の取り締まりでたどれた売人は、金で雇われただけの人物だった。だからこそ、あえて風紀委員長の私が隙を見せ、相手を泳がせて一網打尽にしようとかんがえた」
「なるほど、相手を油断させるのは常套手段ですね」
ブレイン殿下の言葉に、副委員長が同意を示す。
「ということで、私は新しい恋人に夢中な、アホな風紀委員長を演じようと思う。その協力をしてくれるのが、彼だ」
そう言ったブレイン殿下は、俺の肩を抱き寄せると、おでこにキスをひとつ落としてきた。
「っ!??」
「「「承知いたしました!」」」
はぁっ!?
なんだよ、それっ??
聞いてないぞ!?
「そんなの聞いてな……っ!」
「昨晩キミは、犯人をあげるための手伝いをしてくれると言っただろう?まさかあれはウソだったのかい?」
「それはもちろん本当ですけど!だからってこれは……んぅっ!」
抗議の声は、あっという間に封じられた───ブレイン殿下のくちびるによって物理的に。
つまり、衆人環視のなかで、キスされたわけで。
おいっ、なんなんだよこれはっ!!
本当にまったく聞いてないからなぁぁ!!
しかしそんな俺の叫びは、当然のようにふさがれたままの口から、もれることはなかった。
しかもブレイン殿下が入室するなり、皆が一斉に立ち上がって腰を折り曲げてあいさつしてくる。
うっ、圧がスゴい……!
「皆、忙しいなか、よくあつまってくれたね。さっそく本題に入っていこう。しかしその前にひとつ重要な案件がある。ここにいる少年は先日の違法薬物摘発の際、私の手違いにより危険にさらしてしまった被害者だ。あらためて、風紀委員長として、キミに謝罪をしようと思う。すまなかった!」
低く響くいい声が俺のことを紹介したと思った矢先に、なんとブレイン殿下が俺に向きなおり、あたまを下げてきた。
「なっ……!?あたまをあげてくださいっ!そんな王族のかたにあやまっていただくなんて……っ!!」
当然のように周囲はザワつくし、なにより俺だっておどろく。
だって、本来王族とは白いものを黒だと言えば黒くなるような、そんな絶対的な権力を持った存在だ。
そんな王族が、伯爵家の次男にすぎない俺に向かってあたまを下げるとか、ありえないだろ?!
かえって怖いし、勘弁してくれよ!
なのにブレイン殿下は、あたまを上げない。
「私は、己が力をよくわかっているつもりだ。あやまった選択をしようとも、それが正しいものになってしまう。だからこそ、真に正しくありたいと風紀委員をえらんだんだ。その誇りにかけて、キミには正式に謝罪させてもらう」
「「「申し訳なかった!!」」」
そんな殿下の姿にとまどっていたのも最初だけで、説明が終わるころにはそれ以外の風紀委員の人たちまでもが一斉に俺に向かってあたまを下げてあやまってくる。
その迫力は、なかなかのものだった。
「み、皆さまのそのお気持ちは受け取りました!もうけっこうです!本当に……その、もう気にしませんので!だから皆さまあたまを上げてください!お願いします!!」
それに気圧されながらも、必死に声をあげれば、ゆっくりとブレイン殿下が折った腰をもどす。
その気配を悟ったのか、皆そっと姿勢をもどしてくれた。
あぁよかった、こういうところで一斉に謝罪を受けるなんて、心臓によくないだろ。
気づかれないように、そっと息をつく。
スマートに謝罪を受け入れるのなんて、たぶん俺にはムリだ。
「さて、諸君が今見たように、この少年の心根は非常に真っ当で誠実だ。どうか皆、家名にまどわされずに、彼自身を見てほしい」
「「「御意!!」」」
統率のとれた委員会のメンバーには、気圧されっぱなしだった。
「うん?『どういうことか?』と聞きたそうな顔をしているね?」
「………はい」
隣に立つブレイン殿下の顔をそっと見上げれば、おだやかな笑みがかえされる。
うぅっ、その笑顔がまぶしい。
「簡単だよ、人は不測の事態に直面したとき、本性が出る。私という王族が突然あたまを下げたときの姿を皆には見てもらった。どうせキミのことだから、おどろいて、ついでに若干怯えるだろうと告げておいた」
どうやら俺は、試されていたらしい。
「本当に委員長のおっしゃるとおりでした。その瞬間を逃すまいと見ておりましたが、みじんも勝ち誇ることもなく、ただひたすらにおどろき、恐縮しているようにしか見えませんでした」
そう言葉を添えてくるのは、副委員長をつとめるブレイン殿下の側近のひとりだ。
名前はスコッチ・タイガー・ボネット。
ボネット侯爵家の次男だ。
彼もまた、作中のブレイン殿下の風紀委員の活動中のスチルにだけは小さく横顔で登場するものの、表向きには名前すらあかされていないモブだった。
いかにも剣が得意そうな騎士っぽい雰囲気の先輩で、よく鍛えられた体つきと、グレーがかった銀の短髪に黄色の瞳の組み合わせは、どことなく狼を思わせる。
たしかにこんな眼光するどくにらみつけられたら、たいていの人はビビって非行も働かなくなりそうだ。
ある意味で、とても風紀委員向きだよな……。
───まぁ、個人的には名前は虎なのに、見た目は狼っぽいとか、どっちなんだよ!?って気がするんだけど。
それはこの際、置いておくとして。
「ほら、どうだいスコッチ?彼は信用できるだろう?」
「たしかに……ついでにいかにもすなおそうで、いろいろとお察しいたしました」
「優秀なキミが、私の側近かつ副委員長でよかったよ」
周囲を置き去りにしたまま、ふたりだけでにこやかに会話が進んでいる。
だけどこれはよくある光景なのか、風紀委員のメンバーは黙ってふたりのやりとりを見守っていた。
ところで、謝罪をすることが目的なら、もう俺は帰っていいんだろうか?
なんとなくこれまでに受けていたような嫉妬まじりのそれとはちがって好意的ではあるものの、それでも好奇の目にさらされるのは、やはり慣れなかった。
「───さて、あらためて本題に入ろう。私が風紀を取り締まるこの学校で違法薬物が横行するなど、ゆるされることではない。この件は私への挑発であり、風紀委員へと売られたケンカだ。今回は風紀委員の総力をあげて対応したいと思っている」
と、そこでいったんブレイン殿下は言葉を切る。
風紀委員の生徒たちは、皆まっすぐな視線を向けていて、そこには信頼がにじんで見えた。
そっか、ブレイン殿下はゲームのなかでは腹黒キャラだなんて言われているけれど、それは王族として生まれ育ったゆえの性格だもんな。
本当はすごく、まっすぐな気性の方なのかもしれないな……。
「しかし相手は手ごわく、昨晩の取り締まりでたどれた売人は、金で雇われただけの人物だった。だからこそ、あえて風紀委員長の私が隙を見せ、相手を泳がせて一網打尽にしようとかんがえた」
「なるほど、相手を油断させるのは常套手段ですね」
ブレイン殿下の言葉に、副委員長が同意を示す。
「ということで、私は新しい恋人に夢中な、アホな風紀委員長を演じようと思う。その協力をしてくれるのが、彼だ」
そう言ったブレイン殿下は、俺の肩を抱き寄せると、おでこにキスをひとつ落としてきた。
「っ!??」
「「「承知いたしました!」」」
はぁっ!?
なんだよ、それっ??
聞いてないぞ!?
「そんなの聞いてな……っ!」
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