ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

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48:突然のフラッシュバック

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 どうしろっていうんだよ、この状況!?
 最初に思ったのは、それだった。
 だってもう、パレルモ様をさしおいて、俺が囲まれてもみくちゃにされるとか、冗談キツいだろ!

 基本的にテイラーもだけど、『』にしたって元来陰キャ側の人間なんだぞ?!
 こんなふうに人に囲まれるのなんて、慣れてない。
 どうさばいていいのか、わからなかった。

 と、そのとき。
「ブレイン殿下とはまたたく間に恋に落ち、一夜にして激しく燃えあがったそうですわ!それはさながら、出会いがしらの正面衝突事故のごとく……!」
 澄んだ高い声が響く。

 声の主は、キャロライナ嬢だ。
 どうやらいかんともしがたい状況におちいっている俺を見かねて、助けに入ってくれたらしい。

「まぁ、キャロライナ様!そのお話おうかがいしても?」
「えぇ、ワタクシのわかる範囲で教えてさしあげましてよ!」
 そうして、きゃいきゃいはしゃぐご令嬢方を、一手に引き受けてくれた。

 ありがたい、ありがたいんだけど、なんだか若干誤解がありそうな気もするし、大げさに語られそうな気もするのは気のせいだろうか?
 正直なところ、不安しかなかった。

「それじゃ、女子もいなくなったところで……テイラー!ウワサのキスマーク見せてもらおーか!」
「嫌だ、冗談じゃない」
 ニヤッと笑ったジミーが、ふざけたことを言い出したのに、見せものにされるのはごめんだとその場から逃げ出そうとしたのに……。

「スマン、テイラー!好奇心には勝てなかった!」
「なっ!?んなモン見ても、おもしろくもなんともないだろ?!」
 気がつけばその他のクラスメイトによって囲まれ、退路はふさがれていた。

「そりゃふつうの男の裸なんて見てもおもしろくないけどさ、その痕をつけたのがブレイン殿下だと思ったら、俄然興味が湧いてきたというか……」
 申し訳なさそうに言うわりに、顔には隠しきれない笑いが浮かんでいる。

「ということで、みんな、やっちゃって~!」
「「「よっしゃ、まかせろ!」」」
 ジミーからの号令に、俺を取り囲んでいた男子生徒たちが一斉にこちらの腕や肩、腰をつかんでくる。

「はっ?ふざけんなよ!?朝礼前なんだぞ、冗談キツいだろ!」
 さすがにはずかしさもあるし、こっちだって必死だ。
 無愛想きわまりない顔になって、正面に立つクラスメイトをにらみつける。

 けれど、どれだけ文句を言ったところで、暴走する彼らは止まらなかった。
 そしてなにより、多勢に無勢。
 相手を止めようにも、左右から複数で肩と腕を押さえつけられてしまえば、ロクな抵抗なんてできやしない。

「やめろよ!離せってば!!」
「それじゃー、失礼しまーす♪」
 ネクタイに手をかけ、シュルリと音を立ててはずしてくるクラスメイトのモブ男子からは、楽しげな気配しか伝わってこない。

 なにより本人は屈託のない笑顔だし、ちょっとした好奇心を満たすための悪ふざけにすぎないんだってことは、これに協力する周囲の生徒たちの笑い声からもわかることだった。
 だけど、その手がシャツのボタンにかかったとたん、心臓は大きく飛びハネた。

「っ!」
 なんだろう……まさかこんなことが───その手の動きが怖い、だなんて。
 相手はただのクラスメイトで、そこに悪意はないハズなのに……。
 まともに息ができないくらいに、からだが強ばっていく。

 もちろんわかってる、あたまでは。
 これはただ服の下に隠れたキスマークを見るための確認行為でしかなくて、状況はとはちがうんだってことは。
 それに、そもそも結果だけ見れば未遂で済んでいて、致命的ななにがあったわけでもなかった。

 それでも、わらわらと周囲からのびてくる手が、有象無象の手によってシャツのボタンをはずされていくのが、───『魅了香チャーム・パフューム』をかがされて無理やり襲われかけた一昨日の夜とかぶって感じられてしまって……。
 そう思ってしまったら、もうダメだった。

「~~~~~っ!や、やめ……っ!」
 ギュッと目をつぶって悲鳴をこらえたところで、代わりにかぼそい息がもれる。
 必死にふるえそうになるからだをなだめても、きっと顔色の悪さは隠しようがない。
 今の自分の姿は、彼らからすれば過剰反応を示しているようにしか見えないんだろう。

 そのときだ。
 バン!!
 固いなにかを叩くような大きな音が、教室内に響いた。

「てめぇら、朝っぱらからうるせーんだよっ!!」
「「「…………………」」」
 これでもかと不機嫌さがにじむ声に、室内は水をうったかのように静まりかえる。

 机の上に手を置き、こちらをにらみつけてくる少年。
 この世界では不吉とされる黒髪に、キツくつりあがる眉毛と、タレ気味な目もとをいろどる金の瞳。
 声とおなじく、不機嫌を体現したかのようなしかめっ面。

 声の主は、俺にとっての『うちの子』であるセブンだった。

「ご、ごめん……セブン……」
 だれかがあやまったのをきっかけに、気まずそうな空気をまとったまま、俺に群がっていた生徒たちが解散していく。
 おかげで、なかばシャツのボタンははずされていたものの、それ以上はだけさせられることもなく済んだ。

 そのことにまずホッとして、息をつく。
 そうすれば強ばっていたからだから、余計な力が抜けていった。
 大丈夫、なんとかふるえてはいない。
 ……残念ながら、まだ顔色は悪いままかもしれないけれど。

 そうして解放されたところで、深呼吸をくりかえしていれば、徐々に気持ちは元の自分にもどってくる。
 前を合わせて、ギュッとにぎりしめたままだったシャツをそっと手放せば、困ったことにシワがついてしまっていた。

 ───ひょっとして今のって、セブンが助けてくれたのか……?
 どういうつもりだったのかと相手の真意を探ろうとしたものの、セブンと目が合ったと思った瞬間に、ふいっとそらされる。
 その横顔は、どことなく気まずそうに見えた。
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