ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

文字の大きさ
50 / 188

50:最愛の『うちの子』はイイコです

しおりを挟む
 セブン・ナガ・スコーピオン。
 前世でシナリオライターだった俺が、個人エピソードのシナリオをメインで担当していたキャラクターだ。
 つまり、俺からすればクラスメイトのひとりである一方で、気持ちのうえではまぎれもなく最愛の『我が子』だった。

「その……あんたと少し話がしてみたかったから……となり、いいか?」
「あ、あぁ、どうぞ」
 あわててベンチのはしに寄れば、ためらいなくとなりに座ってくる。

 なんだろう、なかなか自分から人に近づかないタイプなのに、めずらしいこともあるもんだ。
 ボーッとその姿を見てしまってから、ハッと気づく。

「あ、そうだ!今朝の、ありがとな?スゲェ助かった」
「別に……」
 忘れないうちにと、朝のお礼を述べれば、ぶっきらぼうなこたえがかえってくる。

 うわ、そのツンツンした態度、まちがいなくセブンだ~!
 ツンデレキャラだもんな、セブンは。
 しかも否定はしなかったってことは、やっぱり今朝のは俺が困ってたのに気づいて、助けてくれたってことでいいらしい。

「それに昨日も。倒れた俺のこと、保健室まで運んでくれたんだろう?意識のない人運ぶなんて、かなり重かったんじゃないのか?」
 俺の身長は平均よりも少し高いくらいあるけれど、逆にセブンは平均よりもやや低いくらいだ。

 俺とは身長差があるし、なにより背負うにしても自分からしがみついてくれる相手とちがって、脱力してる相手を運ぶのって全体重がかかってくるから重く感じるハズなんだけど……。
 前世で酔いつぶれた同僚を背負って帰ったときのあの大変さを思い出すに、本当にセブンには迷惑をかけてしまったと、申し訳なさすぎて凹む。

「問題ない……というか、むしろオレが蹴ったボールが強すぎたばっかりに、あんたを昏倒させてしまって……本当にすまなかった!」
 なのに相手は逆にボールをぶつけてしまったと、恐縮しながらあやまってくる。
 うーん、さすがはうちの子、見た目で誤解されやすいけど、本当はめっちゃイイコなんだよなぁ!!

「あぁ、それこそ気にすんなよ、体育の授業中のケガなんてよくあることだし、特に昨日のはボーッとしてた俺が避けられなかっただけだし」
 うれしくなる気持ちはそのまま顔に出て、思わずゆるんでしまう。
 仕方ない、俺のなかでのセブンは別格なんだから。

「…………あんた、変わってんな」
「そうかな?ふつうだと思うけど……」
 言葉に詰まったセブンは、しばし目線を泳がせたあとに、俺のことを変わっていると評する。

「いや、ふつうはケガをさせた相手のこと、そんな簡単にゆるしたりしないだろ!この学校にかよう貴族の子どもなんて、みんなそうだろ!?」
 セブンが過剰反応を示すのは、この世界では身分差が厳しいからこそだろう。

 スコーピオン家は、表向き男爵位でしかない設定だ。
 それに黒髪が不吉の象徴のように言われているせいで、歴代その『』を受け継ぐものの特徴として、黒髪の人間が生まれつづけていることもあって、言われなき迫害を受けてきたという経緯がある。

 だからそう、ブレイン殿下が風紀委員長をつとめるこの学校内では、面と向かってひどいことをする生徒はいないまでも、やはりセブンは少し浮いた存在だった。
 実際は警戒心が強くて人見知りをするタイプなだけなのに、たぶんほとんどの生徒からは怖い人だと誤解を受けていたりする。

「ハハ、でもまぁ結果的にケガらしいケガをしたわけじゃないし、むしろあの日は体調最悪だし寝不足だったから、結果的には保健室でゆっくり眠れてよかったというか……」
 でもまぁ、俺からすればそんなことはどうでもいいことだった。

「だけどっ!オレのボールを蹴る力が強すぎたばっかりに……!」
 幼いころから、人よりも強大なこの『力』の制御がうまくできずにいたセブンは、周囲の人を傷つけてしまっては、そのたびに孤立してしまっていたから。
 それが彼にとってのトラウマになっていた。

「うんうん、でも脚力や腕力が強いのは、外で戦うときには悪いことじゃないだろ?ついでに言えばそのおかげで、俺は保健室まで運んでもらえたんだし」
 ギュッと身を強ばらせるセブンに、少しでも安心してもらいたくて、そのうつむきがちなあたまをなでる。

「っ!?」
 それを予想もしていなかったのか、セブンはぎょっとしたような顔で、目を見開いて固まっていた。
 本人を悩ませるその『力』に関しては、セブンルートでヒロインが励ますことで克服できるようになるから、それまでの辛抱だ。

 今はまだヒロインがこの学校に転入してきてないけど、おそらくゲームの設定的にはまもなくだろうと思う。
 だからそこまでは、ほんの少しだけ俺が甘やかしてやりたいなんて思う。

「俺なんて、悲しいくらいにショボいステータスだから、毎回外での実習は苦労してるからなー。それに、パレルモ様を有象無象から守らなきゃなんないから、セブンの強さを少しでもわけてもらいたいくらいだけどな」
 お世辞じゃなくて、これは本当に。

 あのゆるふわぼっちゃんの貞操の危機を守るには、俺じゃ力不足だもんなぁ。
 ……なんて思いつつ、さっきから黙ってあたまをなでさせてくれるうちの子があまりにもめずらしくて、ついその顔を見てみれば、おどろくほどに真っ赤に染まっていた。

 あれっ?
 これはひょっとして、またヤラカシたパターンか!?
 だって、セブンルートでヒロインが『セブンは悪くない』と手を取って、ギュッとにぎるシーンの姿そのものだ。

 このツンデレさんは、人から触れられることを極端に嫌う傾向があるけれど、心をゆるした相手からのそれは、すなおに受け止めてくれる。
 つまり、親密度があがるほどに、物理的な接触回数も増えていくというわけだった。
 その第一歩が、この真っ赤に染まる照れた顔だ。

 おかしいな、会話の内容もアプローチの仕方も全然ちがうハズなのに、いったいぜんたい、どうしてこうなった!?
 いや、照れるセブンは、めちゃくちゃかわいいんだけども!!

 でも今は困る!
 その『デレ』はヒロインが登場するまで、とっておいてくれ!
 そんな複雑な気持ちをかかえ、俺はあいまいな笑みを浮かべることしかできなかったのであった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

処理中です...