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50:最愛の『うちの子』はイイコです
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セブン・ナガ・スコーピオン。
前世でシナリオライターだった俺が、個人エピソードのシナリオをメインで担当していたキャラクターだ。
つまり、俺からすればクラスメイトのひとりである一方で、気持ちのうえではまぎれもなく最愛の『我が子』だった。
「その……あんたと少し話がしてみたかったから……となり、いいか?」
「あ、あぁ、どうぞ」
あわててベンチのはしに寄れば、ためらいなくとなりに座ってくる。
なんだろう、なかなか自分から人に近づかないタイプなのに、めずらしいこともあるもんだ。
ボーッとその姿を見てしまってから、ハッと気づく。
「あ、そうだ!今朝の、ありがとな?スゲェ助かった」
「別に……」
忘れないうちにと、朝のお礼を述べれば、ぶっきらぼうなこたえがかえってくる。
うわ、そのツンツンした態度、まちがいなくセブンだ~!
ツンデレキャラだもんな、セブンは。
しかも否定はしなかったってことは、やっぱり今朝のは俺が困ってたのに気づいて、助けてくれたってことでいいらしい。
「それに昨日も。倒れた俺のこと、保健室まで運んでくれたんだろう?意識のない人運ぶなんて、かなり重かったんじゃないのか?」
俺の身長は平均よりも少し高いくらいあるけれど、逆にセブンは平均よりもやや低いくらいだ。
俺とは身長差があるし、なにより背負うにしても自分からしがみついてくれる相手とちがって、脱力してる相手を運ぶのって全体重がかかってくるから重く感じるハズなんだけど……。
前世で酔いつぶれた同僚を背負って帰ったときのあの大変さを思い出すに、本当にセブンには迷惑をかけてしまったと、申し訳なさすぎて凹む。
「問題ない……というか、むしろオレが蹴ったボールが強すぎたばっかりに、あんたを昏倒させてしまって……本当にすまなかった!」
なのに相手は逆にボールをぶつけてしまったと、恐縮しながらあやまってくる。
うーん、さすがはうちの子、見た目で誤解されやすいけど、本当はめっちゃイイコなんだよなぁ!!
「あぁ、それこそ気にすんなよ、体育の授業中のケガなんてよくあることだし、特に昨日のはボーッとしてた俺が避けられなかっただけだし」
うれしくなる気持ちはそのまま顔に出て、思わずゆるんでしまう。
仕方ない、俺のなかでのセブンは別格なんだから。
「…………あんた、変わってんな」
「そうかな?ふつうだと思うけど……」
言葉に詰まったセブンは、しばし目線を泳がせたあとに、俺のことを変わっていると評する。
「いや、ふつうはケガをさせた相手のこと、そんな簡単にゆるしたりしないだろ!この学校にかよう貴族の子どもなんて、みんなそうだろ!?」
セブンが過剰反応を示すのは、この世界では身分差が厳しいからこそだろう。
スコーピオン家は、表向き男爵位でしかない設定だ。
それに黒髪が不吉の象徴のように言われているせいで、歴代その『力』を受け継ぐものの特徴として、黒髪の人間が生まれつづけていることもあって、言われなき迫害を受けてきたという経緯がある。
だからそう、ブレイン殿下が風紀委員長をつとめるこの学校内では、面と向かってひどいことをする生徒はいないまでも、やはりセブンは少し浮いた存在だった。
実際は警戒心が強くて人見知りをするタイプなだけなのに、たぶんほとんどの生徒からは怖い人だと誤解を受けていたりする。
「ハハ、でもまぁ結果的にケガらしいケガをしたわけじゃないし、むしろあの日は体調最悪だし寝不足だったから、結果的には保健室でゆっくり眠れてよかったというか……」
でもまぁ、俺からすればそんなことはどうでもいいことだった。
「だけどっ!オレのボールを蹴る力が強すぎたばっかりに……!」
幼いころから、人よりも強大なこの『力』の制御がうまくできずにいたセブンは、周囲の人を傷つけてしまっては、そのたびに孤立してしまっていたから。
それが彼にとってのトラウマになっていた。
「うんうん、でも脚力や腕力が強いのは、外で戦うときには悪いことじゃないだろ?ついでに言えばそのおかげで、俺は保健室まで運んでもらえたんだし」
ギュッと身を強ばらせるセブンに、少しでも安心してもらいたくて、そのうつむきがちなあたまをなでる。
「っ!?」
それを予想もしていなかったのか、セブンはぎょっとしたような顔で、目を見開いて固まっていた。
本人を悩ませるその『力』に関しては、セブンルートでヒロインが励ますことで克服できるようになるから、それまでの辛抱だ。
今はまだヒロインがこの学校に転入してきてないけど、おそらくゲームの設定的にはまもなくだろうと思う。
だからそこまでは、ほんの少しだけ俺が甘やかしてやりたいなんて思う。
「俺なんて、悲しいくらいにショボいステータスだから、毎回外での実習は苦労してるからなー。それに、パレルモ様を有象無象から守らなきゃなんないから、セブンの強さを少しでもわけてもらいたいくらいだけどな」
お世辞じゃなくて、これは本当に。
あのゆるふわぼっちゃんの貞操の危機を守るには、俺じゃ力不足だもんなぁ。
……なんて思いつつ、さっきから黙ってあたまをなでさせてくれるうちの子があまりにもめずらしくて、ついその顔を見てみれば、おどろくほどに真っ赤に染まっていた。
あれっ?
これはひょっとして、またヤラカシたパターンか!?
だって、セブンルートでヒロインが『セブンは悪くない』と手を取って、ギュッとにぎるシーンの姿そのものだ。
このツンデレさんは、人から触れられることを極端に嫌う傾向があるけれど、心をゆるした相手からのそれは、すなおに受け止めてくれる。
つまり、親密度があがるほどに、物理的な接触回数も増えていくというわけだった。
その第一歩が、この真っ赤に染まる照れた顔だ。
おかしいな、会話の内容もアプローチの仕方も全然ちがうハズなのに、いったいぜんたい、どうしてこうなった!?
いや、照れるセブンは、めちゃくちゃかわいいんだけども!!
でも今は困る!
その『デレ』はヒロインが登場するまで、とっておいてくれ!
そんな複雑な気持ちをかかえ、俺はあいまいな笑みを浮かべることしかできなかったのであった。
前世でシナリオライターだった俺が、個人エピソードのシナリオをメインで担当していたキャラクターだ。
つまり、俺からすればクラスメイトのひとりである一方で、気持ちのうえではまぎれもなく最愛の『我が子』だった。
「その……あんたと少し話がしてみたかったから……となり、いいか?」
「あ、あぁ、どうぞ」
あわててベンチのはしに寄れば、ためらいなくとなりに座ってくる。
なんだろう、なかなか自分から人に近づかないタイプなのに、めずらしいこともあるもんだ。
ボーッとその姿を見てしまってから、ハッと気づく。
「あ、そうだ!今朝の、ありがとな?スゲェ助かった」
「別に……」
忘れないうちにと、朝のお礼を述べれば、ぶっきらぼうなこたえがかえってくる。
うわ、そのツンツンした態度、まちがいなくセブンだ~!
ツンデレキャラだもんな、セブンは。
しかも否定はしなかったってことは、やっぱり今朝のは俺が困ってたのに気づいて、助けてくれたってことでいいらしい。
「それに昨日も。倒れた俺のこと、保健室まで運んでくれたんだろう?意識のない人運ぶなんて、かなり重かったんじゃないのか?」
俺の身長は平均よりも少し高いくらいあるけれど、逆にセブンは平均よりもやや低いくらいだ。
俺とは身長差があるし、なにより背負うにしても自分からしがみついてくれる相手とちがって、脱力してる相手を運ぶのって全体重がかかってくるから重く感じるハズなんだけど……。
前世で酔いつぶれた同僚を背負って帰ったときのあの大変さを思い出すに、本当にセブンには迷惑をかけてしまったと、申し訳なさすぎて凹む。
「問題ない……というか、むしろオレが蹴ったボールが強すぎたばっかりに、あんたを昏倒させてしまって……本当にすまなかった!」
なのに相手は逆にボールをぶつけてしまったと、恐縮しながらあやまってくる。
うーん、さすがはうちの子、見た目で誤解されやすいけど、本当はめっちゃイイコなんだよなぁ!!
「あぁ、それこそ気にすんなよ、体育の授業中のケガなんてよくあることだし、特に昨日のはボーッとしてた俺が避けられなかっただけだし」
うれしくなる気持ちはそのまま顔に出て、思わずゆるんでしまう。
仕方ない、俺のなかでのセブンは別格なんだから。
「…………あんた、変わってんな」
「そうかな?ふつうだと思うけど……」
言葉に詰まったセブンは、しばし目線を泳がせたあとに、俺のことを変わっていると評する。
「いや、ふつうはケガをさせた相手のこと、そんな簡単にゆるしたりしないだろ!この学校にかよう貴族の子どもなんて、みんなそうだろ!?」
セブンが過剰反応を示すのは、この世界では身分差が厳しいからこそだろう。
スコーピオン家は、表向き男爵位でしかない設定だ。
それに黒髪が不吉の象徴のように言われているせいで、歴代その『力』を受け継ぐものの特徴として、黒髪の人間が生まれつづけていることもあって、言われなき迫害を受けてきたという経緯がある。
だからそう、ブレイン殿下が風紀委員長をつとめるこの学校内では、面と向かってひどいことをする生徒はいないまでも、やはりセブンは少し浮いた存在だった。
実際は警戒心が強くて人見知りをするタイプなだけなのに、たぶんほとんどの生徒からは怖い人だと誤解を受けていたりする。
「ハハ、でもまぁ結果的にケガらしいケガをしたわけじゃないし、むしろあの日は体調最悪だし寝不足だったから、結果的には保健室でゆっくり眠れてよかったというか……」
でもまぁ、俺からすればそんなことはどうでもいいことだった。
「だけどっ!オレのボールを蹴る力が強すぎたばっかりに……!」
幼いころから、人よりも強大なこの『力』の制御がうまくできずにいたセブンは、周囲の人を傷つけてしまっては、そのたびに孤立してしまっていたから。
それが彼にとってのトラウマになっていた。
「うんうん、でも脚力や腕力が強いのは、外で戦うときには悪いことじゃないだろ?ついでに言えばそのおかげで、俺は保健室まで運んでもらえたんだし」
ギュッと身を強ばらせるセブンに、少しでも安心してもらいたくて、そのうつむきがちなあたまをなでる。
「っ!?」
それを予想もしていなかったのか、セブンはぎょっとしたような顔で、目を見開いて固まっていた。
本人を悩ませるその『力』に関しては、セブンルートでヒロインが励ますことで克服できるようになるから、それまでの辛抱だ。
今はまだヒロインがこの学校に転入してきてないけど、おそらくゲームの設定的にはまもなくだろうと思う。
だからそこまでは、ほんの少しだけ俺が甘やかしてやりたいなんて思う。
「俺なんて、悲しいくらいにショボいステータスだから、毎回外での実習は苦労してるからなー。それに、パレルモ様を有象無象から守らなきゃなんないから、セブンの強さを少しでもわけてもらいたいくらいだけどな」
お世辞じゃなくて、これは本当に。
あのゆるふわぼっちゃんの貞操の危機を守るには、俺じゃ力不足だもんなぁ。
……なんて思いつつ、さっきから黙ってあたまをなでさせてくれるうちの子があまりにもめずらしくて、ついその顔を見てみれば、おどろくほどに真っ赤に染まっていた。
あれっ?
これはひょっとして、またヤラカシたパターンか!?
だって、セブンルートでヒロインが『セブンは悪くない』と手を取って、ギュッとにぎるシーンの姿そのものだ。
このツンデレさんは、人から触れられることを極端に嫌う傾向があるけれど、心をゆるした相手からのそれは、すなおに受け止めてくれる。
つまり、親密度があがるほどに、物理的な接触回数も増えていくというわけだった。
その第一歩が、この真っ赤に染まる照れた顔だ。
おかしいな、会話の内容もアプローチの仕方も全然ちがうハズなのに、いったいぜんたい、どうしてこうなった!?
いや、照れるセブンは、めちゃくちゃかわいいんだけども!!
でも今は困る!
その『デレ』はヒロインが登場するまで、とっておいてくれ!
そんな複雑な気持ちをかかえ、俺はあいまいな笑みを浮かべることしかできなかったのであった。
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見つけ次第削除いたします。
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