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62:想像以上に危険な立ち位置
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「いいか、危機感の足りてないあんたのために聞くぞ?王族の恋人となるのに、重要とされる要件はなんだ?」
あらたまった顔でセブンがたずねてくる。
こころなしか、その目が据わっているように見えるのは気のせいだろうか?
「えぇと、家柄、品格……それと後ろ楯あたりか?」
この世界の身分差は厳しいからこそ、実家の爵位というものが重要視される。
それに本人が連れて歩くのにはずかしくないだけの作法を身につけているかとか、あとは王族の場合は政争の道具となりかねないからこそ、その人物の背後関係なんかも大事だろうとあたりをつける。
「そうだな、さすがにそれはあんたならわかってるか……でももうひとつあるだろ、『貞淑さ』ってのがさ」
「あー、うん、たしかにそれな」
要は性に奔放な相手だとして、お手つきにしたその女性が妊娠した場合、その子種がだれのものなのかわからなくては大問題ともなりかねないわけで。
「その要件のなかで、王族の恋人の座を追いやりたいとき、手っとり早く失わせることができるのはどれだと思う?」
「手っとり早く……?」
たとえば気にくわない相手が恋人の座におさまっているとして、それを追い出すならば……。
家柄はそう簡単に凋落するものではないし、品格だって長年で身についたものを忘れさせるのはむずかしいだろう。
後ろ楯にしてもそうだ、相手のある話だけに第三者の思惑で、そう簡単にはずしたりできないはずだ。
なら、こたえはおのずとしぼられる。
「となると『貞淑さ』か……。でもいきなり別の男に走らせるってのは、むずかしくないか?」
とっさに脳裏に浮かんだのは、『別れさせ屋』とか『ホストのガチ恋営業』とか、そういったものだったけど、たぶんセブンの険しい顔を見るに、俺の発言ではまだ的はずれなんだろうなぁ……。
「あんたなぁ!人のこと言えないくらい、ゆるふわなあたましてんだろ!もっとあるだろ、直接的にそれを失わせる方法がっ!!」
「まさ、か……っ!?」
「そうだよ、そいつを───複数の男に襲わせればいい。そのあとにマワされたって、そこら中にウワサを流せば完了だ」
「っ!!」
ギクリ、とからだが強ばった。
たしかにそれなら、ウワサの真偽をたしかめられたところで本当のことだし、事実と認めざるを得ないだろう。
そうだ、だれかの悪意によって簡単にその座を追い落とすことができるんだ────。
「わかったか、あんたを外に置いといちゃ危険な理由が!」
「うん……ようやく、理解した……」
ここまで言われれば、さすがに危機感を持たざるを得ない。
俺が周囲の人たちから『ブレイン殿下の恋人としてふさわしくない』と思われるほどに、その危険度は増すってことだろ?
ならもう、ほとんどの校内の人から恨みを買っててもおかしくない今の俺は、むちゃくちゃ危険ととなり合わせだってことじゃんか!
「どうしよう……」
今さらながら怖くなってきた。
だってもし、そんなことになったら……。
自分に向かってのびてくる、有象無象の手を想像するだけでふるえが走る。
あんなこと、ほかのだれかとするなんて、かんがえもつかなかった。
しかもそれが無理やりだったとしたら……?
ダメだ、まちがいなく吐く。
ちょっと前までは、この世界の侵食者はパレルモ様総受け主義だから、テイラーなんてモブは歯牙にもかけられないだろうからと油断していられた。
だけどそれが、もともとあった貴族同士の足の引っぱり合いの手法と、侵食者により書きかえられてしまった世界線とが偶然にも合致してしまったとしたら……?
その牙は、当然のようにただのモブにすぎないハズの俺にまで向けられることになる、というわけだ。
それも、そこに侵食者の意図があろうとなかろうと関係なく。
───想像した瞬間に、ゾッとした。
それまで安全な地面だと信じていた足もとが、急激に音を立ててくずれていくような、そんな不安にさいなまれる。
「安心しろ、あんたのことは俺がそばにいて守ってやるから!」
「セ、セブン~~!!」
ヤベェ、うちの子がカッコよすぎる!
こんなの、絶対ヒロインならホレるだろ!!
「よしよし、大丈夫だからなー」
思わず半泣きでしがみつけば、嫌がられずに受け入れられ、むしろあたまをなでかえされた。
スゴい、ツンデレさんなうちの子がデレてくれている!
ありがとうございまーす!!
思わずそんなふうにさけびたくなるのを、グッとこらえる。
「つーかあんたの髪の毛、やわらかいな」
「そうか?」
「それになんかいい匂いするし……」
スン、と匂いをかがれて、今さらながらにこの体勢のはずかしさに気がつく。
立ったまま、俺よりも背の低いセブンにしがみついて、あやされているというこの状況。
たぶんはたから見たら、ただおたがいに熱く抱き合ってるようにしか見えないだろ。
しかも、寮のロビーという人目についてもおかしくない場所だとしたら……。
「───へぇ、この私の目の前で堂々と浮気をするとは、いったいキミはなにをかんがえているんでしょうかねぇ?」
聞きおぼえのある声とともに腰に手をまわされて、ひょい、と軽々セブンと引き離された。
「あ、紫殿下……」
「えっ?!」
セブンのセリフに、あわててふりかえって見上げた先にあったのは、まばゆいくらいの端麗なる顔で。
「そんなに欲求不満だというのなら、いいでしょう、今夜は寝かせてあげませんからね?」
「ンっ!」
そう言ってこちらの耳へと軽く歯を立て、うっすらと笑うブレイン殿下のバラ色の目は、みじんも笑っていなかった。
「なん、で……」
その寒気のするような笑みを前に、俺はロクなセリフもつむげずにいた。
ただ、どうやら致命的にヤラカシてしまったことだけはたしかのようだった。
あらたまった顔でセブンがたずねてくる。
こころなしか、その目が据わっているように見えるのは気のせいだろうか?
「えぇと、家柄、品格……それと後ろ楯あたりか?」
この世界の身分差は厳しいからこそ、実家の爵位というものが重要視される。
それに本人が連れて歩くのにはずかしくないだけの作法を身につけているかとか、あとは王族の場合は政争の道具となりかねないからこそ、その人物の背後関係なんかも大事だろうとあたりをつける。
「そうだな、さすがにそれはあんたならわかってるか……でももうひとつあるだろ、『貞淑さ』ってのがさ」
「あー、うん、たしかにそれな」
要は性に奔放な相手だとして、お手つきにしたその女性が妊娠した場合、その子種がだれのものなのかわからなくては大問題ともなりかねないわけで。
「その要件のなかで、王族の恋人の座を追いやりたいとき、手っとり早く失わせることができるのはどれだと思う?」
「手っとり早く……?」
たとえば気にくわない相手が恋人の座におさまっているとして、それを追い出すならば……。
家柄はそう簡単に凋落するものではないし、品格だって長年で身についたものを忘れさせるのはむずかしいだろう。
後ろ楯にしてもそうだ、相手のある話だけに第三者の思惑で、そう簡単にはずしたりできないはずだ。
なら、こたえはおのずとしぼられる。
「となると『貞淑さ』か……。でもいきなり別の男に走らせるってのは、むずかしくないか?」
とっさに脳裏に浮かんだのは、『別れさせ屋』とか『ホストのガチ恋営業』とか、そういったものだったけど、たぶんセブンの険しい顔を見るに、俺の発言ではまだ的はずれなんだろうなぁ……。
「あんたなぁ!人のこと言えないくらい、ゆるふわなあたましてんだろ!もっとあるだろ、直接的にそれを失わせる方法がっ!!」
「まさ、か……っ!?」
「そうだよ、そいつを───複数の男に襲わせればいい。そのあとにマワされたって、そこら中にウワサを流せば完了だ」
「っ!!」
ギクリ、とからだが強ばった。
たしかにそれなら、ウワサの真偽をたしかめられたところで本当のことだし、事実と認めざるを得ないだろう。
そうだ、だれかの悪意によって簡単にその座を追い落とすことができるんだ────。
「わかったか、あんたを外に置いといちゃ危険な理由が!」
「うん……ようやく、理解した……」
ここまで言われれば、さすがに危機感を持たざるを得ない。
俺が周囲の人たちから『ブレイン殿下の恋人としてふさわしくない』と思われるほどに、その危険度は増すってことだろ?
ならもう、ほとんどの校内の人から恨みを買っててもおかしくない今の俺は、むちゃくちゃ危険ととなり合わせだってことじゃんか!
「どうしよう……」
今さらながら怖くなってきた。
だってもし、そんなことになったら……。
自分に向かってのびてくる、有象無象の手を想像するだけでふるえが走る。
あんなこと、ほかのだれかとするなんて、かんがえもつかなかった。
しかもそれが無理やりだったとしたら……?
ダメだ、まちがいなく吐く。
ちょっと前までは、この世界の侵食者はパレルモ様総受け主義だから、テイラーなんてモブは歯牙にもかけられないだろうからと油断していられた。
だけどそれが、もともとあった貴族同士の足の引っぱり合いの手法と、侵食者により書きかえられてしまった世界線とが偶然にも合致してしまったとしたら……?
その牙は、当然のようにただのモブにすぎないハズの俺にまで向けられることになる、というわけだ。
それも、そこに侵食者の意図があろうとなかろうと関係なく。
───想像した瞬間に、ゾッとした。
それまで安全な地面だと信じていた足もとが、急激に音を立ててくずれていくような、そんな不安にさいなまれる。
「安心しろ、あんたのことは俺がそばにいて守ってやるから!」
「セ、セブン~~!!」
ヤベェ、うちの子がカッコよすぎる!
こんなの、絶対ヒロインならホレるだろ!!
「よしよし、大丈夫だからなー」
思わず半泣きでしがみつけば、嫌がられずに受け入れられ、むしろあたまをなでかえされた。
スゴい、ツンデレさんなうちの子がデレてくれている!
ありがとうございまーす!!
思わずそんなふうにさけびたくなるのを、グッとこらえる。
「つーかあんたの髪の毛、やわらかいな」
「そうか?」
「それになんかいい匂いするし……」
スン、と匂いをかがれて、今さらながらにこの体勢のはずかしさに気がつく。
立ったまま、俺よりも背の低いセブンにしがみついて、あやされているというこの状況。
たぶんはたから見たら、ただおたがいに熱く抱き合ってるようにしか見えないだろ。
しかも、寮のロビーという人目についてもおかしくない場所だとしたら……。
「───へぇ、この私の目の前で堂々と浮気をするとは、いったいキミはなにをかんがえているんでしょうかねぇ?」
聞きおぼえのある声とともに腰に手をまわされて、ひょい、と軽々セブンと引き離された。
「あ、紫殿下……」
「えっ?!」
セブンのセリフに、あわててふりかえって見上げた先にあったのは、まばゆいくらいの端麗なる顔で。
「そんなに欲求不満だというのなら、いいでしょう、今夜は寝かせてあげませんからね?」
「ンっ!」
そう言ってこちらの耳へと軽く歯を立て、うっすらと笑うブレイン殿下のバラ色の目は、みじんも笑っていなかった。
「なん、で……」
その寒気のするような笑みを前に、俺はロクなセリフもつむげずにいた。
ただ、どうやら致命的にヤラカシてしまったことだけはたしかのようだった。
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