ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

文字の大きさ
73 / 188

73:ゆらぎようのない事実にくつがえる評価

しおりを挟む
 パレルモ様がやさしいというのを伝えるためのエピソードとして、リオン殿下が話してしまったのは、今朝ほど起きた寮の部屋の交代劇についてだった。
 そんなの話だけを聞いたら、決してパレルモ様を持ち上げるためのネタにはなり得ないのに……!

「───うん?……公爵家用の部屋とはいえ、この寮に3人部屋なんてあったかな?」
「いいえ、まちがいなくそこは2人部屋ですよ、兄上」
 素朴な疑問を呈するハバネロ殿下に、ブレイン殿下がこたえている。

「……てことは、そこの君はどうなったんだい?」
 純粋な問いかけだからこそ、当事者としては非常にこたえにくかった。

「ちょうど空いている部屋がありましたので、そちらに移ることになりました」
 なるべく事実をオブラートに包み、ハレーションが起きにくいようにと、言葉を選ぶ。

「それは大変じゃないか!こんなところに連れまわしている場合じゃないだろ、ブレイン!部屋を移るというのは、準備も必要なことだろ?」
 そんな俺に、ハバネロ殿下は大仰におどろいて見せた。

「そうなんですよ、伯爵家の子が入れる空き部屋なんて、ここ数年、掃除もろくにされていないような汚い場所だけでしたからね。なかなか改装も終わらないというわけです」
 そのとたんに、俺の横にある紫の髪にいろどられた端麗な顔は、我が意を得たりとばかりに笑みを浮かべる。

 ───あぁ、やっぱり!
 最初から、これをねらっていたんだろう。
 この話をしたときからパレルモ様の言動に腹を立てているように見えたので、どうやってフォローをしようかと思っていた矢先に、いちばん面倒な場所で暴露するなんて!!

「当然、その改装の手配はそのパレルモくん主導でやっているんだよね?」
「いいえ、兄上。この子自らで手配をしてやっていましたね」
「えぇっ!?いくらなんでもそれはないだろ!」
 あぁ、やっぱりマズイ展開になってしまった……。

「……えーと、君はそのパレルモくんから、そうするようにと指示されたのかい?」
「そう、ですね……」
 よりによって、俺のほうに直接話しかけてきたハバネロ殿下に、苦々しい思いが込み上げてくる。

「ウソはいけないよ、ハニー?ライムホルン公爵子息からは、『部屋を代わってやって』と『お願い』されただけじゃなかったっけかな?」
「っ、ブレイン殿下……っ、これ以上はその……っ!」
 顔から血の気は引いていき、胃がキリキリと痛む。

「同室の伯爵家の子を追い出して、男爵家の子をまねき入れておきながら、フォローもなしかい!?いくらなんでも、おかしいよそれは!担任や寮の監督員はなにしているんだ!?」
 ───あぁ、クソ!
 善意100%のそのセリフが、心に突き刺さる。

 その担任や寮の監督員の上司にあたる校長や理事長にしてもそうだ、どことなく顔色が悪い。
 なにしろ公爵家のご子息が、その配下の子にたいしてワガママを言うのなんてよくあることだし、ふだんなら気にも止めないで済むような話だろうに。

 でもそれを非難しているのは、ハバネロ王太子殿下───つまり、この国の第一王子なわけだ。
 ならばそれは、些事として聞き流してしまうわけにもいかなくなってくる。

「ちょっとハバネロ兄上、『追い出した』だなんて人聞きが悪い!パレルモはただ親切心から、転入生をまねき入れてやっただけで、その心根の美しさは褒められるべきだろう?!担任もふくめ、皆パレルモを褒めていたぞ!」
 とっさにパレルモ様をかばおうとして、リオン殿下は反論の声をあげた。

「───リオン、現実をよく見るんだ」
 けれどハバネロ殿下は、困ったものを見るような顔で、相手を見つめている。
 今の話を聞いただけで、おそらくハバネロ殿下は俺の身に突如ふりかかった理不尽なできごとを理解されたんだろう。

 そりゃそうか、直接パレルモ様に会ったことがない人なら、魅了の魔法にもかかりようがないもんな……。
 最初から色眼鏡で見なければ、パレルモ様の選択は非常に稚拙なものだったから。

「たしかに身分を越えて、どんな相手にも親切にできるのは、そのパレルモくんとやらの美徳なんだろう。だけど、その代償を実際に払ったのは、そこにいるダグラス伯爵家の子なんだろう?ならばそれは上に立つものとして、親切どころか、ただの無責任じゃないか」
 そしてハバネロ殿下は、そうキッパリと言いきる。

「ハバネロ兄上までなに言ってるんだ!言うにこと欠いて、パレルモが無責任だなんて失礼だろ!」
「どうしたんだ、リオン……?」
 なおも必死に言いつのるリオン殿下を見るハバネロ殿下の目には、哀れみの色が浮かんでいた。

「ハッ、そうか、ダグラス!貴様、兄上に告げ口したんだろ!自分が理不尽にも追い出されたんだって!そんなふうに己の主を売るとは、最低だな、貴様は!!」
「っ!」
 キッとにらみつけられ、思わず身をすくめれば、背中にそっとブレイン殿下が支えるように腕をまわしてくる。

「───リオン、この子は決してそんな言い方はしていない。最後までかばおうとしていたよ?」
「じゃあなんで、そんなパレルモをおとしめるような言い方するんだ!?」
「いいや、私は事実をただ、ありのままに伝えたまでだよ。そう兄上に伝わったのなら、ライムホルン公爵家の子が事実そうだったのだろうよ」

 横にいるブレイン殿下は、やわらかな笑みを浮かべたままに、弟の勘ちがいを訂正している。
 というより、わかっててあおってるだろ、これ……。

 言っとくけど俺は、己の主の悪事を暴き立てるようなマネなんて、したくなかったのに!
 そうでなければ、まるで告げ口をするようなこんなタイミングで王族の方々にまで知られてしまうとか、最悪だろ!
 パレルモ様を裏切ってしまったかのような罪悪感がこみ上げてきて、苦しくてたまらない。

「~~~っ!パレルモ様は、どなたにもおやさしい方ですし、あの方の望むようにフォローをするのも、ライムホルン公爵閣下に命じられた私の仕事ですから……っ!」
 そうこたえるのが、やっとだった。 

 この場にはこの国の最高権力者がそろっているわけで、下手をして不興を買えば、ライムホルン公爵家といえども、なんらかのお咎めを受けないともかぎらないわけだ。
 その原因が俺だと知れたら、まちがいなく我が家はやつあたりにより没落、俺自身は残忍な処刑コースまっしぐらだ。
 そんなの、冗談じゃない!

「どういうことなんだ、ブレイン?今の学校は、私がいたころとは常識が変わってしまったのか?」
「……あるいは、本当にそうなのかもしれませんね?」
 まるでこの世界の改変に気づいているかのようなブレイン殿下の返答に、俺はただ胃とあたまの痛みをこらえるのに必死だった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

処理中です...