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マツヲ。

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126:ふいに差し込む光明のきざし

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 実際のところ、こうして部屋の外で待ちぼうけを食らっていたからと言って、パレルモ様を放置してしまっていた罪が減じられるわけではないと思う。
 それどころか、この間にもライムホルン公爵家に連絡が行き、俺にたいする処分が話し合われているかも知れなかった。

「テイラー、大丈夫かよ?さっきから顔色よくないぞ?」
 ジミーに話しかけられ、ハッとする。
「あ、あぁ、大丈夫だ……」
 どうやら息を詰めて、かんがえこんでしまっていたみたいだ。

「ホントに?テイラー、体力ないんだからムリすんなよ?」
「……おぅ、わかってるよ」
 半信半疑といった様子でこちらを見るジミーの視線には、こちらを本気で心配する色がにじんでいた。

 そりゃな、俺のステータスはいかにもモブらしい、冴えない数値しか並んでないけどな。
 年下にまで心配されるほど、貧弱なつもりはないっ!
 思わずそう言い返しそうになったところで、グッとこらえる。

 なんとなくジミーからの心配は、いつもの茶化すような気配が感じられなかったから。
 ハッキリと口に出してはいないけど、今の俺の立場が相当マズイことになっているのは、わかっているのかもしれない。

 だってこのところ、毎晩のようにブレイン殿下にお持ち帰られてるせいでパレルモ様を放ったらかしにしてしまっているのは事実だし、そうじゃなくても昨日の査問会での立場はおたがいに敵対するみたいな位置にあったのも事実だ。
 これをもって、俺がパレルモ様にたいする裏切り行為を行ったと断じられてもおかしくはなかった。

 そりゃ、ライムホルン公爵のパレルモ様への溺愛ぶりは、いっそ異常なくらいだもんな?
 公の場でもパレルモ様のことを『私の天使ちゃん』と呼んではばからないし、パレルモ様に不埒な思いを抱くものは、だれであろうと容赦なく処刑しようとしてきたし。

 でもあれ、やっぱりパレルモ様が無意識に垂れ流してる、魅了の魔法のせいなんだよなぁ……?
 年齢以上に幼く見えるパレルモ様がやたらと男から襲われがちなのも、周囲が溺愛してくるのも、たぶんそれが原因のハズ。

「……なぁテイラー?オレ、バカだからよくわかんなかったんだけど、パレルモ様って、いつも魅了の魔法っての?それをまわりにかけてんのかな?」
「えっ!?」
 まるでそんな俺の思考を読んだかのようにジミーに問われ、思わず声が上ずりそうになる。

「あぁ、そうだな……魔法科の先生もそうおっしゃっていたし、事実ではあると思うよ……まぁ、なぜか俺たちには効いてないみたいだけど」
 たしかにこの世界では、外交官のような渉外担当の職種ならば必須とされる魔法かもしれないけれど、パレルモ様のまきちらすはレベルがちがう。

「そっか……そうかんがえるとパレルモ様のMPって、とんでもなくね?!」
「たしかに……!常時発動に近いとしたら、とんでもないMPが必要になるな?!」
 すごいぞ、ジミー!
 お前、おバカキャラなのに、よく気がついたな!?

 原作ゲームでのパレルモ様はかわいい顔して悪辣で、そして権謀術数のうずまく貴族の世界をうまくわたっていくためにと、両親からの指示で容赦ない勉強や魔法の特訓で鍛えられてきた。
 それだけに知力だの魔法力だのといったステータスは、それにふさわしい数値になっていたけれど。

 この世界線でのパレルモ様は、反対に小さなころから甘やかされて溺愛されてきただけに、勉強は嫌いだと言って丸投げしていたし、ちょっと前までは俺が宿題すら代わりにやっていたくらいだ。
 それなのに、どうやって魔法力のステータスが上がるのかと思っていたら、こんなところで整合性が取られていたのか……。

 うぅむ、『世界のことわり』のなんとしてでも整合性を取ろうとする機能、凄まじいな?!

 そりゃ常時発動といっても、だれもいない空間や、俺たちやパレルモ様のところの付き人さんたちのような、自分に絶対的な服従を誓っている相手にまでかける必要はないわけで。
 無駄に垂れ流す必要はない場所では、それも無意識ながらもセーブをしていたとしたら……そりゃ魅了の魔法の習熟度はあがるし、知力も魔法力もあがるよな?

 なにも知力というのは、学力とイコールではないのだから。
 その場の空気や相手の顔色を読み取る能力だったり、言葉選びのセンスだったり、学力にはあらわれない賢さというのも世のなかにはあるもんなぁ……。

「ん、てことは……」
「テイラー?おーい、急に黙り込んでどうしたんだよ!?」
 なにかがふいにひらめきそうな、そんな予感にせき立てられる。

「悪い、ちょっとかんがえたいから、黙っててくれるか?」
「わ、わかったよ……」
 ジミーを黙らせたところで、しばし思考のうずに飲み込まれる。

 かんがえるのは、当然この世界に侵食して、改変を加えてきた相手のことだった。

 パレルモ様の性格や過去すら改変し、ただの愛されピュアピュア系ショタっ子にしやがった、この世界に侵食したソイツには言ってやりたいことがある。
 もう何度もくりかえし、心のなかでさけんできたことではあるけれど。

『パレルモ様を愛されキャラに改変するなら、その理由までちゃんと作り込みやがれ!!』というそのひとこと。

 なにしろきちんとした理由もなく、だれからも愛されるキャラクターなんて設定をぶちこんできたせいで、この世界線でのパレルモ様は魅了の魔法がホイホイ使えるようになっているなんていう、原作に真っ向から反するトンデモ設定になっているんだからな?!

 そもそも魅了の魔法と言ったら、原作ゲームのパレルモ様では絶対に習得できなかった魔法で、精神支配系では絶対服従の魔法しか使えないばっかりに、主人公の星華の乙女に惚れた末の凶行に走った原因になったという、いわく付きの魔法だ。
 そこにまず俺は、引っかかりをおぼえていた。

 でもそれが、こうしてパレルモ様のステータス問題を解決する理由となり得ていたのなら、話は別だ。
 それってつまりは───

 その許容範囲をきちんと把握することこそ、今の俺にとっては問題を解決する糸口になるんだ!
 ふいに差してきた光明のきざしに、不謹慎ながらも心が踊り出しそうになっていた。
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