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マツヲ。

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161:相手の主張の隙間を突いていけ!

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 痛むこめかみに手をあてて、軽くもむ。
 そもそも自分のしでかしたことを、悪いことだと自覚できていないような相手だ。
 それを自覚させたうえで、さらに説得するなんて、相当困難でしかないと思う。

 しかも、どれだけ相手が悪いのだとしても、あたまごなしに否定したら、それこそ相手の反発をまねきかねないわけで。
 そこはこちらも、慎重な対応が求められる点だった。

 なら、まずはこちらから歩み寄りの姿勢を見せるしかないよなぁ?
 ため息をつきたくなる気持ちをこらえ、軽く息をつくのにとどめると、つとめてなにげないふうをよそおう。

「……よし、ひとまず前提は、おまえが主張するとおりだとしよう。見た目や言動、性格がかわいいからパレルモ様が周囲から愛されているんだとして……」
「やっとパレくんのこと、わかってくれたんだね?!」
 まずは相手の主張をしっかりと聞き出そうと譲歩すれば、勝ち誇ったようなドヤ顔がかえされた。

 ───うん、地味にムカつくな、これ。
 でも、ここで引っかかるよりは先に話を進めてしまいたい。
 のどもとまで出かかった言葉をグッと飲み込み、攻撃的になりそうな自分を必死に引き止める。

「……だとしたら、なんでパレルモ様は常時、魅了の魔法なんてものを周囲にかけつづけてるんだ?本人の持つかわいらしさに周囲がやられているのなら、そんな魔法なんてかける必要ないハズだろ?」
 この世界の価値観に真っ向から背く設定だから、そんなおかしなことになっているのだと糾弾したい気持ちをこらえて、問いかけた。

 きっと相手はまた、パレルモ様のすばらしさを説いてくるのだろうと思いつつ、それでもあきらかに先方の主張とは矛盾していそうな点を、反証のひとつとして提起する。
 だけど。

「そんなの僕は知らないよ!そもそも魅了の魔法なんて、原作では使えないハズの魔法じゃん!?むしろなんでそんなもの使えてるのか、まったくもってナゾすぎるし!」
 さて、どういいわけが飛び出してくるのかと思ったら、クレセントからはすなおに『知ったことか』とかえされた。

 そのことに、少しだけおどろいた。
 いや、残念ながらあまり俺の表情は変わらなかったのだけど。

 だって───それってつまりは、この世界に改変をくわえたペロさんとやらが、意図的にこの状況を作り出したわけじゃないってことにならないか?!
 少なくとも、このクレセントが見てきた二次創作の作品のなかには、パレルモ様がこんなふうに魅了の魔法を垂れ流しにしているような設定はなかったってことなんだろう。

 ……まぁ、この件に関しては、最初は俺もおどろいたくらいだったし。

 なにしろ原作じゃ魅了の魔法は、パレルモ様がどんなに願っても使えなくて、最終的に闇落ちする原因になったくらいの魔法だもんなぁ。
 それを使えるどころか、常時垂れ流しにするなんて、原作の設定を真っ向から否定するようなものなんじゃないか?って気がして。

 ───でも本当は、そうじゃなかった。

 侵食者が『物語創作者ストーリーライター』の権能の力を使って無理やりに、パレルモ様を本来のキャラクター性とは真逆のゆるふわ天然白痴キャラにしてしまったから。
 この世界観を壊さずに、そんなキャラクターにされたパレルモ様が周囲から溺愛されるなんて設定を許容するには、その魔法の効果とするしかなかったんだ。

 さらには無意識下でも、相手を見極めつつ常時魔法を発動することで繊細な魔力操作を身につけさせ、原作ゲーム同様の攻撃魔法の得意な、知力高めのステータスを得ることにつながっていたわけで。
 結果的にその矛盾点は、あらたに足された設定を飲み込んだ世界観のなかでは、決して元のストーリー性を損なうことなく存在し得たことになる。

 そしてなにより俺にとって重要なのは、『物語の世界観を守るために、この世界自らが付け足してきた設定だった』ということだった。
 そこにこそ、俺にとっての希望があるのだから。

 一見すると原作の設定を真っ向から否定するような改変でも、実際にこの世界のことわりに許容され得たものがあったっていうことは、パレルモ様の影のような存在のテイラーが、自由に生きられるかもしれない未来を夢見るには、なによりの支えになるものだったんだ。

 ───そういう意味では、パレルモ様のゆるふわキャラ化も、悪いことだけじゃなかったのかもしれないけれど……。
 でも、逆にこの改変された世界に生きる今のテイラーとしては、ゆるせないこともあるんだよな。
 そう、それは───。

「とはいえ、いくらパレルモ様がかわいさを全面に押し出したところで、今もブレイン殿下にたいして、どんな身分の方か理解せず、礼を欠いた態度を取りつづけているんだからな?!」
 さすがにこれはどうかと、俺は思う。
 ふつうにかんがえて公爵家の嫡男が、おなじ学校に通う自国の第二王子の顔を知らないのは大問題じゃないのか?!

「はぁ~?どこが失礼な態度なのさ!?ピュアっ子天使ちゃんなパレくんに、ブレイン様だって鼻の下のばしてるんでしょう?!それなら問題ないんじゃないの?」
 それにたいするクレセントの主張は、あまりにも底が浅かった。

 だいたい、いくらパレルモ様がヒロインとおなじ言動をとったからといって、おなじように好感度があがるわけじゃないのにさ。
 それはかつて、この世界を司る女神様にも肯定された、この世の真理でもあるのだけど。

「それこそ下級貴族のヒロインベルがブレイン殿下の顔を知らなかったとしても、身分的にこれまで会う機会がなかっただろうから仕方ないんだけどな?でもパレルモ様は、この国の筆頭公爵家の嫡男なんだぞ?!そんな何度も顔を合わせてきたであろう地位にいる人物が、自国の王子様たちの顔も知らないのはマズイだろ、ふつうにかんがえて!」

「それは、パレくんが身分を気にしない子だから……」
「『身分を気にしない』のは、あくまでもパレルモ様のほうが高い身分なら問題ないだろうけど、今回は逆なんだから、むしろ失礼にあたるだろうが!」

 ここは俺としても、ゆずれないポイントだった。
 言葉につっかえそうになる相手に、ここぞとばかりに追及していく。
 そこではじめて、クレセントの顔色に変化が生じたのだった。
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