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第一章 終わり。そして、新たな道へ。
Ep.1.0-① 終わり。あるいは新たな始まり。-①(加筆修正版)
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人がそこそこいる駅のホームに、無機質な声の構内放送が響き渡る。
「間も無く三番線を快速電車が通過いたします。黄色い線の内側までお下がり下さい……」
あぁ、マジでうるさい。
こんな事に対して、俺はいつもだったらなんの感情も抱くこともないのに、今日に限って、ひどく耳障りに感じてしまう。
いや、それだけじゃない。
周りで話している人の声とか踏切の音、どこからか聞こえてくるカラスの鳴き声なども含めて、何もかもに対してだ。
何故、今日、俺がこんなに精神状態が不安定になってしまっているのか、それには訳がある。
思い出すたびに嫌になる。
だが、しょうがないことなのだ。
現実はそう甘くはないとここまで徹底的に思い知らされたのは一体いつぶりだろうか。
だが今、俺はこの重い現実に着実に、そして、冷静に向き合うべき……。
いや、向き合わなければならないのだ。
実は今日、九月十三日は二日間に渡って開催される俺の通う、桜花閣高校の文化祭、禊凛祭の二日目にして、最終日だった。
この文化祭の最終日というタイミングで、俺、霞ヶ浦佑介は長い間ずっと気になっていた、同じクラスで最もかわいいと言われている佐川亜理紗さんという人に告白しようと考えていた。
俺が佐川さんの事を好きになったのは、だいたい一年くらい前だっただろうか。
確か、高校に入学してから二、三か月ぐらいがたったころだったと思う。
中学の頃、あまり上手く立ち回ることができず、後悔の多かった俺は、高校に入学して一週間ぐらいは俺もクラスになじめるように、恐怖心に鞭を打ち、慣れない人付き合いに必死になっていた。
(決して高校デビューとかを狙っていたのではない!)
しかし、そんな努力は報われる事なんて無く、どうやら俺のコミュ症具合は体にこびり付いてしまっている物のようだった。
入学してから三週間が経つ頃になると、一日の授業が全部終わったら、早急に教室を出て所属している剣道部の部室に向かうという生活リズムになり。
また、部活の時も人とは必要最低限の会話しか交わさないなどと、俺は早くもクラスの輪からさらに言うならば学校の輪からも見事に浮き始めてしまい、見事に兼ねてから避けたいと思っていたスクールカースト最下位の部類になってしまっていた。
こんなような状態だったから、俺はどうでもいいと思うようになってしまい、高校生活を放棄することを早々に決めた。
諦めてからはもう、酷かった。
毎日をただただ流れるようにボーっと過ごすようになってしまい、気づいたらその日の授業が終わってるなんてザラだった。
授業を適当にやり過ごし、放課後になったら黙々と一人で竹刀を振るう。
そんな日常だった。
そんな頃、とても美しく長い茶髪を持ち、整った顔立ちをしていて、明るく、優しくて、その上、頭のいい佐川さんは、早速学年、クラス、男女問わず人気だった。
十人話している奴らがいたら少なくとも四人は佐川さんの事を話している、そんな状況のせいで、嫌でも俺の耳には佐川さんの噂が入ってきた。
例を一部だけでも挙げると、
・毎日三人以上の人(女子を含め)から告白されているも、全て断っている。
・休日に原宿で有名俳優とデートしているのを誰かが見た。
・近く、ファッション女優としてデビューする予定がある。
など。
こんな真偽不明の噂がたくさん出回っていることを知り、俺は真実かどうかは別として、素直にこんなに沢山の噂が出回るなんてすごいなとか思っていた。
そんな彼女、佐川亜里沙さんは、いつぐらいからだっただろうか。
なぜなのかは分からないが、休み時間になる度にいつも机に突っ伏して寝たふりを決め込んでいるようにしていた俺に、積極的に話しかけてきてくれるようになった。
また、俺がクラスの輪に馴染めるように休日や放課後の遊びに誘ってくれたり、会話に入れるようなきっかけを作ってくれたり、困ったら助け船を出してくれたりといろいろな手助けをしてくれた。
その他にも、昼ご飯を一緒に食べようと誘ってきたり、帰りも一緒に帰ろうと誘ってくれたり積極的に俺関わろうとしてくれたり……。
そのおかげで、入学から一か月が立つ頃には、相変わらず自分から人に話しかけたりするのはまだ少し難があったものの、俺は少しずつクラスに馴染めるようになった。
それと同時に、なぜそこまでして俺の事を助けてくれるのか、ずっと不思議に思っていた。
一度、一緒に帰っているときに、それとなく聞いてみたことがあった。
「ねえ、佐川さん、なんでそこまでして俺の事を助けてくれるの?
佐川さんに、メリットなんて無くない……?」
そう聞くと、佐川さんは驚いたような顔をしてしばらくして、こう答えた。
「え、急にどうしたの?
それは……ね、
昔……。
う、ううん、と、特に理由なんてないよ。
佑介君。
ほら、人が何か困っていたら助けるのは当然のことでしょ?
ね、ほらそれよりも明日のさ……。」
そんな風に何か、ごまかすような答え方をされて少し引っかかった。
何か裏があるのかもしれないとか考えたりもしたが、佐川さんに限ってまさかそんなわけないだろうし、それ以上詮索するのはやめておいた。
何よりそのせいで変な、気まずいような関係になってしまって、今のこの関係が無くなってしまうのが本当に嫌だったし、怖かった。
そう、俺はいつからか佐川さんに惚れ込んでしまっていたのだ。
分かっていた。
カーストトップレベルの佐川さんと、最下位レベルの俺とでは身分違いだって、身の程知らずだって……。
でも、分かっていたとしても、好きにならないでいられるはずがなかった。
正直、この気持ちを抱えたまま、佐川さんに関わり続けるのはもう限界だった。
だから長い間悩んだ末に、この文化祭というタイミングで佐川さんに告白しようと思っていたのだった。
それで例え振られたとしても素直に諦めがつく、そう思っていた。
だけど、現実はそれを許してはくれなかった。
***
こんにちは!はじましての方は、はじめまして!錦木れるむと言います。Ep.1.0-①(加筆修正版)をお読みいただきありがとうございます!
この小説は、自分が某カクヨムに掲載しているものの転載です。これから、カクヨムの方に追いつくまでは一日、二話ずつ投稿していきます。カクヨムでは、基本毎日更新しています。(日曜日は番外編の投稿をしています。)
ご気軽にコメントお願い致します。
必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、お気に入りもよろしくお願いいたします!これからよろしくお願いします!
「間も無く三番線を快速電車が通過いたします。黄色い線の内側までお下がり下さい……」
あぁ、マジでうるさい。
こんな事に対して、俺はいつもだったらなんの感情も抱くこともないのに、今日に限って、ひどく耳障りに感じてしまう。
いや、それだけじゃない。
周りで話している人の声とか踏切の音、どこからか聞こえてくるカラスの鳴き声なども含めて、何もかもに対してだ。
何故、今日、俺がこんなに精神状態が不安定になってしまっているのか、それには訳がある。
思い出すたびに嫌になる。
だが、しょうがないことなのだ。
現実はそう甘くはないとここまで徹底的に思い知らされたのは一体いつぶりだろうか。
だが今、俺はこの重い現実に着実に、そして、冷静に向き合うべき……。
いや、向き合わなければならないのだ。
実は今日、九月十三日は二日間に渡って開催される俺の通う、桜花閣高校の文化祭、禊凛祭の二日目にして、最終日だった。
この文化祭の最終日というタイミングで、俺、霞ヶ浦佑介は長い間ずっと気になっていた、同じクラスで最もかわいいと言われている佐川亜理紗さんという人に告白しようと考えていた。
俺が佐川さんの事を好きになったのは、だいたい一年くらい前だっただろうか。
確か、高校に入学してから二、三か月ぐらいがたったころだったと思う。
中学の頃、あまり上手く立ち回ることができず、後悔の多かった俺は、高校に入学して一週間ぐらいは俺もクラスになじめるように、恐怖心に鞭を打ち、慣れない人付き合いに必死になっていた。
(決して高校デビューとかを狙っていたのではない!)
しかし、そんな努力は報われる事なんて無く、どうやら俺のコミュ症具合は体にこびり付いてしまっている物のようだった。
入学してから三週間が経つ頃になると、一日の授業が全部終わったら、早急に教室を出て所属している剣道部の部室に向かうという生活リズムになり。
また、部活の時も人とは必要最低限の会話しか交わさないなどと、俺は早くもクラスの輪からさらに言うならば学校の輪からも見事に浮き始めてしまい、見事に兼ねてから避けたいと思っていたスクールカースト最下位の部類になってしまっていた。
こんなような状態だったから、俺はどうでもいいと思うようになってしまい、高校生活を放棄することを早々に決めた。
諦めてからはもう、酷かった。
毎日をただただ流れるようにボーっと過ごすようになってしまい、気づいたらその日の授業が終わってるなんてザラだった。
授業を適当にやり過ごし、放課後になったら黙々と一人で竹刀を振るう。
そんな日常だった。
そんな頃、とても美しく長い茶髪を持ち、整った顔立ちをしていて、明るく、優しくて、その上、頭のいい佐川さんは、早速学年、クラス、男女問わず人気だった。
十人話している奴らがいたら少なくとも四人は佐川さんの事を話している、そんな状況のせいで、嫌でも俺の耳には佐川さんの噂が入ってきた。
例を一部だけでも挙げると、
・毎日三人以上の人(女子を含め)から告白されているも、全て断っている。
・休日に原宿で有名俳優とデートしているのを誰かが見た。
・近く、ファッション女優としてデビューする予定がある。
など。
こんな真偽不明の噂がたくさん出回っていることを知り、俺は真実かどうかは別として、素直にこんなに沢山の噂が出回るなんてすごいなとか思っていた。
そんな彼女、佐川亜里沙さんは、いつぐらいからだっただろうか。
なぜなのかは分からないが、休み時間になる度にいつも机に突っ伏して寝たふりを決め込んでいるようにしていた俺に、積極的に話しかけてきてくれるようになった。
また、俺がクラスの輪に馴染めるように休日や放課後の遊びに誘ってくれたり、会話に入れるようなきっかけを作ってくれたり、困ったら助け船を出してくれたりといろいろな手助けをしてくれた。
その他にも、昼ご飯を一緒に食べようと誘ってきたり、帰りも一緒に帰ろうと誘ってくれたり積極的に俺関わろうとしてくれたり……。
そのおかげで、入学から一か月が立つ頃には、相変わらず自分から人に話しかけたりするのはまだ少し難があったものの、俺は少しずつクラスに馴染めるようになった。
それと同時に、なぜそこまでして俺の事を助けてくれるのか、ずっと不思議に思っていた。
一度、一緒に帰っているときに、それとなく聞いてみたことがあった。
「ねえ、佐川さん、なんでそこまでして俺の事を助けてくれるの?
佐川さんに、メリットなんて無くない……?」
そう聞くと、佐川さんは驚いたような顔をしてしばらくして、こう答えた。
「え、急にどうしたの?
それは……ね、
昔……。
う、ううん、と、特に理由なんてないよ。
佑介君。
ほら、人が何か困っていたら助けるのは当然のことでしょ?
ね、ほらそれよりも明日のさ……。」
そんな風に何か、ごまかすような答え方をされて少し引っかかった。
何か裏があるのかもしれないとか考えたりもしたが、佐川さんに限ってまさかそんなわけないだろうし、それ以上詮索するのはやめておいた。
何よりそのせいで変な、気まずいような関係になってしまって、今のこの関係が無くなってしまうのが本当に嫌だったし、怖かった。
そう、俺はいつからか佐川さんに惚れ込んでしまっていたのだ。
分かっていた。
カーストトップレベルの佐川さんと、最下位レベルの俺とでは身分違いだって、身の程知らずだって……。
でも、分かっていたとしても、好きにならないでいられるはずがなかった。
正直、この気持ちを抱えたまま、佐川さんに関わり続けるのはもう限界だった。
だから長い間悩んだ末に、この文化祭というタイミングで佐川さんに告白しようと思っていたのだった。
それで例え振られたとしても素直に諦めがつく、そう思っていた。
だけど、現実はそれを許してはくれなかった。
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こんにちは!はじましての方は、はじめまして!錦木れるむと言います。Ep.1.0-①(加筆修正版)をお読みいただきありがとうございます!
この小説は、自分が某カクヨムに掲載しているものの転載です。これから、カクヨムの方に追いつくまでは一日、二話ずつ投稿していきます。カクヨムでは、基本毎日更新しています。(日曜日は番外編の投稿をしています。)
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