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第二章 王国国立学園入学。

Ep.8.0-④ 誤算に次ぐ誤算。-④

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後ろを振り向くと、父さんがいた。
でもどこかさっき見た時よりもずっと痩せこけてるように見える。

「レ、レイジ……。
 なんか突然過ぎないか?
 第三王女様と婚約だなんて……。
 父さんよく分からなくて頭痛いぞ?
 それに……はあ、人がわちゃわちゃ寄ってきて死ぬかと思った……」

あ、やべ、エレナ様とルアの事で父さん達のことすっかり忘れてた……。
ごめんよみんな、色々と迷惑かけちゃって。

母さんと兄さん、姉さんそれに加えてニールおじさんもなんか色んな人に絡まれるのが落ち着いたみたいで、俺の近くに集まってきた。
やっぱりみんな、父さんと同じように結構疲れた顔をしていた。

「な、なあレイジ?
 いきなり婚約ってどういうことだ?
 それに加えて、おまえのあの“ 技能 スキル”、二刀流 ダブルブレイドって……」

近くに来たハック兄さんにそう言われた途端、俺の頭に嫌な予想が浮かんだ。

もしかしたら俺、兄さんに上手くいき過ぎてる事を僻まてれるんじゃ? 
だとしたら早く弁明したほうがいい。
いや、弁明するような事情もないじゃないか……。

でも、今後も兄さんとは仲良くしていきたい。
なんとか言い訳しないと!

「ち、違うんだハック兄さ……」

俺が弁明しようとすると、予想とは裏腹に兄さんが目を輝かせながら捲し立てた。

「すげえじゃないかレイジ!
 俺はおまえみたいな超ハイスペックな弟がいてくれて本当に誇りだぜ!
 マジ、すご過ぎねえか!?
 二刀流 ダブルブレイドってあの王国五聖の一人のレウラス卿の持ってたっていうやつだろ?
 す、すげえ、すご……」

「ちょっとあんたは落ち着きなさいよ。
 次期アルフェリス家当主として恥ずかしくないように振る舞いなさいよ、全く!」

ゴチン!

「いってえな!
 ゲンコツはひどいぜセリファ姉!」

「ふん、うるさくするのが悪いのよバカ!
 少しはレイジを見習いなさいよ!」

セリファ姉さんが、兄さんのあまりの興奮具合に呆れてゲンコツで言葉を遮った。

でも、かくいうセリファ姉さんもいつもの冷静さを失っていたってことはあのゲンコツが怖いからあえて言わないことにしておく。
君子危うきに近寄らずってやつだ。

「ふん!
 うるせいやい!
 おい、レイジ、お前は兄ちゃんの味方か?
 それともセリファ姉の味方か?」

げ、そんなしょうもないことに俺を巻き込むなよ……。

「ねえ、レイジ。
 レイジはこんなバカ兄よりも私の味方よね?」

セリファ姉さんまで……。
はあ。

「セリファ姉さんも、ハック兄さんもしょうもないよ?
 どっちの味方とか……。
 他人に頼らず当事者間で解決しなよ。
 ……はっきり言ってダサいよ……二人とも……。
 色んな人がいる所で恥をかくような言動は避けた方がいいと思うよ……」

「同意。
 私もそう思う」

いつの間にかフェリシア姉さんが隣に居たようだ。

この人影薄いよなぁ。
すっごく優しくていい人なんだけど。

そう冷ややかな視線を向けながらそう言うと兄さんもセリファ姉さんも顔を赤くして俯いた。

「おい、な、なあレイジ……」

あ、ごめん父さん。
また存在ごと忘れてた。

「ごめん父さん、父さんのことすっかり忘れてた」

「ちょっと!
 ひどいぞレイジ!
 父さん悲しいぞ、全く誰がこんな風に冷めた子に育てたんだ?」

いや、あんた達だろ。
ん?
あ、でも俺のこの人格は霞ヶ浦佑介だった頃の分を受け継いでるから十六年分は霞ヶ浦佑介としての俺の父さんと母さんか。 
 
「そうよ。
 全く。
 誰が育てたんだか」

いや、母さんまで便乗するなよ……。 

「あなた達でしょう?
 はあ……全く……。
 それに俺は冷めた人間なんかではありません」

「あ、そうだったそうだった。
 全くもう、レイジちゃんは本当に昔からそっけないわね。
 お母さん悲しいわ」

はあ、めんどくさい……。
この話題早めに話を戻した方が楽だな。

「分かったよ、母さん。
 で、父さん。
 何か言おうとしてなかった?」

「ああ、そうだったな」

母さんはまだ何か言いたげだったが、父さんは真面目な顔に戻った。

よし、とりあえずこれで話を戻せる。
 
「とりあえずレイジ、エレナ王女との婚約おめでとう。
 同じアルフェリス家の人間として誇らしく思うよ」

「あー、貴方ったら私が先に言いたかったのに……。
 レイジちゃん。
 婚約おめでとう」

父さんも母さんも心から嬉しそうに微笑んだ。

「う、うん。
 まあ、ありがとう、父さん、母さん。
 まだ実感湧かないんだけどね」

俺はそう言って少し笑った。

「まあ、そんなもんだろ。
 父さんも十九歳の時に母さんを妊娠させちゃって結婚したけど、最初は全然実感湧かなかったぞ?」

「もう……!
 貴方ったら……!」

母さんは顔を赤くしながら父さんをバシバシと叩いた。

え、あなた達◯キ婚だったの!?

はあ、どこまで途轍もないんだ……この人たちは……。

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