魔王を倒した勇者

大和煮の甘辛炒め

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終章 魔王討伐へ

五十話 魔王様は期待はずれとのこと

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戦いの場所は古城の玄関口に変わっていた。

バルクがトルキが突き出した拳を避ける。

「ちっ、ちょこざいな……!」

トルキが苛立つ。

拳が全く当たらない。

『攻撃が小振りになった。防御重視に切り替えたか……!それもそうだ』

チュンチュンとブリエッタの拳が迫る。

トルキがギリギリで避ける。

『この二人!とくにこのおっさん、避けるだけで精一杯だ。いつこいつらが蒼蒼を出すか分からない以上、迂闊に攻撃を受けるわけにはいきません』

トルキが黒爪を装備する。

「ブラックスラッシュ」

トルキが黒爪をふるい、黒い斬撃を繰り出す。

ブリエッタ達が散開する。

『中距離攻撃に切り替えて俺らを牽制しだした……よし、上手く牽制出来てるな。俺の話を真に受けるとは、悪魔の癖に生真面目な奴だ』

ブリエッタがチュンチュンに目配せする。

チュンチュンが頷いて、トルキに向かって走り出す。

ブリエッタがトルキに飛び掛かって攻撃を仕掛ける。

「ちっ、速い!」

トルキが後ろに飛び退く。

『こいつの一挙手一投足が私の生命を脅かす……くっ、次から次へと!』

ブリエッタの後ろからチュンチュンが飛び出す。

『ブリエッタさんの言ってたことが本当なら私にも出せるはず、蒼蒼を!』

チュンチュンが拳に魔力を込める。

トルキが焦燥に駆られる。

『こいつが蒼蒼を出す可能性が少しでもあるなら、避けるべきなのだろう。だが、いつまでもそんなことをしていては埒が明かない。私は……』

トルキが腕をクロスさせて、踏ん張る。

『こいつが蒼蒼を出せない可能性に賭ける!』

ブリエッタがチュンチュンをチラ見する。

『チュンチュンの攻撃を受けるのか……ハッタリに気付いたのか?だがもう遅い。前に注意を向けすぎだ』

「うおおお!」

チュンチュンの拳がトルキに迫る。

『受け止めてブラックスラッシュで切り刻んで……なッ!』

後ろに巨大な気配を感じる。

バルクがトルキの後ろに回り込んでいた。

バルクの拳が魔力で輝く。

『しまっ』

あまりの焦燥にトルキの頭が真っ白になる。

「「蒼蒼!」」

チュンチュンとバルクの拳が蒼く輝く。

空間が蒼く照らされる。

ブリエッタが目を閉じる。

「マブーッ!」

轟音と共に爆風が吹き荒ぶ。

「フフフ、運が悪いですね!」

トルキが階段の踊り場に着地する。

バルクとチュンチュンが追いかけようとするがブリエッタが鬼気迫る表情で止める。

「身体全体に魔力を纏ったんですよ。インパクトの瞬間にね、これでも蒼く光るんですね」

トルキが恍惚とした表情を浮かべながら言う。

「正直取り乱しそうになりました。でも、もう安心だ」

トルキがバルク達に飛び掛かろうとしたその時。

ラオフー

三本の斬撃がトルキを三枚下ろしにする。

『おいおい、今はキツいぜ』

ブリエッタが外に走り出す。

バルクとチュンチュンも踊り場から放たれる異様な気配を察知して撤退する。

というより生命が最大限の警報をならして身体を駆り立てた。

『身体が勝手に逃げ出した……?あそこにいたのは何なんだ?』

バルクが汗びっしょりになりながらひたすら走る。

「お前ら、アスフェンとアリスの所と合流するぞ!」

ブリエッタが後ろを振り返って言う。

チュンチュンとバルクが頷く。

ブリエッタが前を向く。

『あいつは……まさか』


⭐⭐⭐

「どんなもんかと見に来てみれば、ペラコントもキュールもやられている。この悪魔には期待していたのだが……俺が間違っていたらしい」

魔王が階段を降りる。

「いまだ俺の役に立とうとしているのはカマルだけか」

魔王がどっかと座り込む。

「もう少し待ってやるか」

魔王が狂気の笑みを浮かべる。

「楽しませろよ、人類。俺が死ぬくらいに」



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