ある白猫の生涯

すんのはじめ

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 身体中にお湯を掛けられ、セッケンだらけにされ くしゃくしゃにされて、最後に濡れたタオルで嫌というほど顔を擦られて、最後に、もう一度、もういいんじゃないかというほどシャワーを掛けられて

「ミナツ ミナツぅ タオル!」と、お母さんが叫んだと思うとこの家の女の子のミナツちゃんが、バスタオルを広げて俺を抱えたのだ。

 リビングに連れて行かれて、身体中を拭いてくれているんだけど、俺は、どっちかというとほっといてくれる方が良いのだ。自分で舐めて乾かすからー

『フガァーッ』と、軽くパンチをしながら たまらず抗議すると

「なによー 拭いてあげてるんだから そんなに汚いのダメでしょ 家ン中歩き廻るんだからね おとなしくしてなさいよー ほらっ きれいになったじゃぁない ふわふわよー 真っ白できれい」と、頭をコツンとされた。

「岩はお風呂でお母さん引っ掻いたでしょー 腕から血が滲んでいたわよ 今だって ほらっ 私の手から血が・・・ 謝っておきなさいよ でないと 今晩 ご飯ないかもよー」と、ミナツちゃんは俺に手を見せてきていた。

『そんなこと言われても あんなにびしょ濡れになるのは初めてだしー 危険を感じたんだよー』と、言い返したつもりで俺は、知らんぷりして自分の身体を舐めていたら、お母さんがリビングに戻ってきて、傷にオロナインを塗りながら

「ミナツちゃんもやられたの? 塗っておきなさいよ バイキン入るからネ 岩 初めてだから しょーがないけど 今度もそんなだったら ベランダから家には入れませんからネ!」

 俺は『今度? また そんなめに合わせるの?』 と お母さんを見直していたら

「なによー その顔はー 当たり前じゃぁないの お外を歩き回ってるんだからー ダニでもくっつけてきたらどうすんのよー 少しは 反省しなさい!」

 と、人んちの飼い猫になるってことは、こういう試練も乗り越えなきゃあなんないのかと、ミナツちゃんがさっきから俺を抱きかかえて、喉元を撫でてくれている。だから、ゴロゴロと甘えている素振りをしていたのだ。俺は、本当はこんな風に触られるのが苦手なのだけど・・・。相手が女の子だから優しい・・・

  その夜は、少し家族の一員としての責任を感じて、ベランダから庭を見張っていたのだ。お母さんが魚の肝なんかを夕方 菜園に埋めていたのを眺めていたから、きっと 何かが掘り返しに来るに違いないと感じていたのだ。

 辺りの家の電気も消えて暗くなった頃。案の定 獣の臭いがしてきた。近所の猫では無い きっと イタチなんだろう 俺はベランダから威嚇の『シャーァッ』と叫んだのだけど、無視するように菜園の周りの臭いを嗅ぎまわっている。だから 俺は屋根から駐車場の上に跳び移っていくと その物音で奴は逃げて行った。

 たから その夜は 明るくなるまで 駐車場の屋根の上で過ごしたのだ。これは 俺の 役目なのだと・・・。日中だって 油断は出来ない 縄張の見廻りは怠りなくやらなければならないのだ。

 ― ― ― ☆ ☆ ☆ ― ― ー

「岩 聞いたわよ お隣さんに お前 庭に降りてきたカラスを追い払っているんだってね 見たってー それに 多分 夜中にイタチも見張っているんだろうってー そ~いえばトマトの基に埋めたとこ 荒らされてないわー いつも 何者かに掘り返されるんだけどー 今年は立派なトマトになりそうね! すごい用心棒だね いや ボディガード? ボディキャッツかな?」

 と、言いながらお母さんはさっきから 干したジャコの頭と内臓部分を取り続けているのだ。ミナツちゃんが学校から帰ってきたみたいで

「あー ミナツ このジャコの頭 ご飯と混ぜてー 岩のご飯 この子 もう直ぐ夕方の見廻りに行くからね」

『うぅー うまそー 早くくれ! お母さんは 俺が毎日 夕方 見回りに行くことを知っているんだぁー』

 うまい! こんなのはノラ猫だったら 絶対に食べられないよなー 『フニャー フガー』と、感激しながら噛み締めていたのだ。食べ終わって、お母さんが玄関から表に送り出しくれた。俺は、腹ごなしを兼ねて辺りを見廻りした後、隣の家のアンテナに止まっているカラスに向かって『ニャー』と、俺はここに居るぞと威嚇した後、駐車場に居住まいを決めて、見張りを続けたのだ。

 お父さんが帰って来るまでそんな調子で、車の音がして、降りてくると

『ニャーン』と 側に寄って行って、甘えているようにするのだ。そうすると、お父さんは単純に喜んで「おぉー お出迎えかー」と、また、一緒に家の中に入って行って、お父さんの晩ご飯のおすそわけをもらうのだ。

「岩はね ウチの菜園を守ってくれているみたいなのよ 最近 植えたものが荒らされていないのよー」と、お母さんが言っていて

「そうかー イタチとかカラスかな」

「そうみたい お隣さんが お宅の猫ちゃんがカラスを追っ払っているの見たってー」

「ふ~ん 岩 えらいぞー」と、食べていたすき焼き風の肉をくれたのだ。

「だけどな 岩 イタチを追っ払うのはいいけど 取っ組み合いはするなよ! 奴等はどんな病気を持って居るかわからんからー 引っ掻かれでもしたら うつるからな」

 と、注意されたけど 俺は あいつ等にはきっと負けないと思っていた。そして、その後はベランダから外に出て、駐車場の屋根の上から見張りを続けたのだ。そんなに、この家の人から喜ばれて大切にされるのならお易いことだと思っていた。

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