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39話 旅立つ前に
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セルセレム城にて──
『魔王様に会わせてやる』
ウェドガーさんからまずは礼儀を通すとして、堕天使族の王様に挨拶をすることになった。
ほんとうは王様への挨拶を飛び越えて、ファルルと一緒に魔王様に会いに行くつもりだったとウェドガーさんに正直に伝えると、最初は驚きながらも、少し呆れていた。
呆れた理由、それはもちろんボクにではなくてファルルのおてんばぶりと自己中心的な考えに、だそうだ。
そして、驚いた理由はボクがいつの間にか魔王様の妹と知り合っていたということだった。
そして今ボクとウルフィは、ウェドガーさんがツカツカと音を立てながら歩く、その後ろをついて行く。
聖騎士たちの侵攻のせいで損壊してはいるとはいえ、セルセレムの城は立派な石造りでその美しさを未だ損なわない。真っ白な石材が多く使われているようで、例えて言うならまさに天使のお城といった風情だ。
「こちらだ。ついてくるがよい」
その王城内へはウェドガーさんのおかげでボクが人間と魔族の混血だとしても問題なく通れた。
魔王様の側近である彼が一緒なのだから当たり前だけど。
……それ以前に聖騎士を撃退したボクのことを魔王様に紹介する前に、その父たるセルセレム王へ御目通りし、挨拶をするのは礼儀だとウェドガーさんはボクに言う。
「しかし魔王様の妹君にも困ったものですな……まったく、あのお方の妹とは信じられん……」
そしてファルルのことを呟いたウェドガーさんの諦めたような顔はなんだか印象的だった。
ファルルの企てを正直に言ってしまったのは良くなかったかな……?
彼女は興味本位でボクに力を貸してくれる感じだったけれど、悪意は感じなかったし、それにボクとウルフィは今着てる衣装だって彼女に買ってもらったものだ。
もし彼女が責められるようならどうにか庇ってあげたいな……
それにしても兄妹、か……。
エイナは元気にしてるだろうか……?
ボクがついていてやらなくて大丈夫かな……。
いつもずっこけて、泣いて泣いて泣き喚く妹のことを思い出す。
そんな時はいつも、ボクが水の精霊さんに力を借りて痛みを消してあげたっけな……
すると、そんな思考を消すかのようにウェドガーさんは歩きながらボクに話しかける。
「しかしロクス、出会った時とはずいぶんと違う着飾り様ですな。その漆黒の衣装、値打ち物ではないか。ウルフィ殿の鉄甲も魔法付与されておる一級品であるし、お主ら金はどうしたのだ? ……まさか盗んだのではあるまいな?」
「そんな! ボクは盗みなんてしないですよ!? ……実はその……話しても良いのですけど、黙っててもらえますか……?」
「ふむ……話す内容によっては、ですな」
「ワッフッフ! ファルル様に買ってもらったワン!! ウェドガーさては羨ましいワンね? あげないワンよ?」
「……真かロクス?」
「……はい、ウルフィの言った通りです……」
「……」
周囲には堕天使族の衛兵や種の違う術士、学者っぽい風体の魔族達が忙しなく歩き回っている雑音ひしめく中で、ボクら三人の周りだけなぜか音が消えたかのように沈黙し、ウェドガーさんはため息を一つ吐いていた。
『魔王様に会わせてやる』
ウェドガーさんからまずは礼儀を通すとして、堕天使族の王様に挨拶をすることになった。
ほんとうは王様への挨拶を飛び越えて、ファルルと一緒に魔王様に会いに行くつもりだったとウェドガーさんに正直に伝えると、最初は驚きながらも、少し呆れていた。
呆れた理由、それはもちろんボクにではなくてファルルのおてんばぶりと自己中心的な考えに、だそうだ。
そして、驚いた理由はボクがいつの間にか魔王様の妹と知り合っていたということだった。
そして今ボクとウルフィは、ウェドガーさんがツカツカと音を立てながら歩く、その後ろをついて行く。
聖騎士たちの侵攻のせいで損壊してはいるとはいえ、セルセレムの城は立派な石造りでその美しさを未だ損なわない。真っ白な石材が多く使われているようで、例えて言うならまさに天使のお城といった風情だ。
「こちらだ。ついてくるがよい」
その王城内へはウェドガーさんのおかげでボクが人間と魔族の混血だとしても問題なく通れた。
魔王様の側近である彼が一緒なのだから当たり前だけど。
……それ以前に聖騎士を撃退したボクのことを魔王様に紹介する前に、その父たるセルセレム王へ御目通りし、挨拶をするのは礼儀だとウェドガーさんはボクに言う。
「しかし魔王様の妹君にも困ったものですな……まったく、あのお方の妹とは信じられん……」
そしてファルルのことを呟いたウェドガーさんの諦めたような顔はなんだか印象的だった。
ファルルの企てを正直に言ってしまったのは良くなかったかな……?
彼女は興味本位でボクに力を貸してくれる感じだったけれど、悪意は感じなかったし、それにボクとウルフィは今着てる衣装だって彼女に買ってもらったものだ。
もし彼女が責められるようならどうにか庇ってあげたいな……
それにしても兄妹、か……。
エイナは元気にしてるだろうか……?
ボクがついていてやらなくて大丈夫かな……。
いつもずっこけて、泣いて泣いて泣き喚く妹のことを思い出す。
そんな時はいつも、ボクが水の精霊さんに力を借りて痛みを消してあげたっけな……
すると、そんな思考を消すかのようにウェドガーさんは歩きながらボクに話しかける。
「しかしロクス、出会った時とはずいぶんと違う着飾り様ですな。その漆黒の衣装、値打ち物ではないか。ウルフィ殿の鉄甲も魔法付与されておる一級品であるし、お主ら金はどうしたのだ? ……まさか盗んだのではあるまいな?」
「そんな! ボクは盗みなんてしないですよ!? ……実はその……話しても良いのですけど、黙っててもらえますか……?」
「ふむ……話す内容によっては、ですな」
「ワッフッフ! ファルル様に買ってもらったワン!! ウェドガーさては羨ましいワンね? あげないワンよ?」
「……真かロクス?」
「……はい、ウルフィの言った通りです……」
「……」
周囲には堕天使族の衛兵や種の違う術士、学者っぽい風体の魔族達が忙しなく歩き回っている雑音ひしめく中で、ボクら三人の周りだけなぜか音が消えたかのように沈黙し、ウェドガーさんはため息を一つ吐いていた。
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