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第1章:『悟る、クレイジーサイコレズ』
悟る、クレイジーサイコレズ7
しおりを挟む「この子は弟さん。そして、この人は木下君」
「この黒い影は何なんだ?神崎」
「きっと衝動とかストレスを具現化したものだと思う」
絵を手でなぞる神崎。
「理解されるってそんなに良いことのかな」
「そうか」
「そうか神崎。弟は救われたんだな?確かに?」
「そうよ」
「そうか」
木下サトルは、理解出来ない事象が起きていることを理解していた。神崎の話はあまりにも常軌を逸している。とうてい信じられる話ではない。でもさ、きっとそうなんだろう。憶測に憶測を重ねただけなら、自分の知りえなかったこの絵まではたどり着けない。狂人だからこそ分かり合える世界というものがあるのかもしれない。
「弟さんはね。恥ずかしかったのよ自分の思いを伝えることが」
「照れ隠しね。人がベッドの裏側を見る機会ってそう多くないのよ。たぶん、木下君が大人になって、自立して、この部屋から出るときに気が付いてほしかったのかな?もう死んでいるのに。それともサプライズのつもりだったのかな?時を経って、お兄ちゃんになら伝わるって思ってのかな?」
「よかったなー。ああ、よかった」
棒よみで良かったと言う木下サトル。泣いているじゃない。とうてい喜べることじゃないじゃない。
「良かったんだよ。俺には分からないけどさ。そんなサイコな考え分からいけどさ。俺にはこの絵が不幸の産物にはどうしても見えねえーよ。どうやっても幸せに描いたものにしか見えねえよ」
「分からないけど、理解するよ。おまえが良かったと思うなら、お兄ちゃんも良かったって思うことにするよ」
「木下君、、、」
「ありとう神崎。でも少しだけ泣かせたままにしてくれ」
「・・・」
数時間の時が流れた。やっと涙が治まったてきた。くそう悲しすぎる。神崎は何も言わずに隣にいてくれた。
「神崎」
「どうしたの木下君」
「おまえが人に理解されないって思っていることってなんなんだ?」
「え!?」
「何に悩んでいるのか分からないけどさ、俺は絶対に肯定するよ。到底分からない価値観だとしても悟ってみせるよ。俺は君を否定しない」
神崎瞳は、弟さんの絵を見つめていた。どうせ理解されないから人に話す必要もないと思っていたから、誰にも言ったことはない。でも、理解されるってそんなに良いことなのかなって絵を見て思った。
「私ね、サイコパスなの。たぶん弟さんと同じような類のもの」
「俺は君を否定しない、肯定する」
「そしてレズなの」
「お、おう」
木下サトルはカウンターパンチを喰らった。
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