白い花が咲く丘で

黒月禊

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亡霊と殺人鬼

【1】

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「おらよっと」
ザシュッ

「ハッ!」
ザクッ

「へへっ、俺の方が多かったな」

「何を言ってるんだ。俺の方が多い」
互いに倒した魔物の数をいつの間にか退治から競い合っていた

「はぁ!?気のせいだろ」
「それはない。これで俺は三十体だ」
「へー俺は三十一だ」
「子供があんたは…」
「悔しいってならそう言えよお坊ちゃん」
「子供扱いするな」

前衛でスイウンと俺が口論しながらも魔物を倒す

「がんばれー!二人ともぉ~!」
「がんばれー」
アベルの陽気な力の抜ける声援と
少し困ったような声のスノー

「これは、食えるのか?」
「これはハピノス茸だね」
「ぬぅ?美味いのかな?」
「美味らしいけど。致死率百%だから、やめとこうね」
「ぬぅ……」
ピンクと茶色の不気味なキノコを見つめるカイン
流れが見えるが好きにさせとこう

「よっと!」
シュッ
「ッ!?」
背後から一文字に撫で切りされる
それをしゃがんで躱す
「危ないだろ!」
「戦闘中に呆けてんのが悪いんだよ!」
口元に悪い笑みを浮かべながらスイウンがそう言った
クゥ…

荒れた野道を進んでいる
元は舗装された道だったろうに今は地面から草が生え
デコボコとなっており荒れている


「なぁ絶対俺の方が多かったよな」
「それはない!」

「うーんどうだろう?正直言って僕あまり見てなくて。ほらこんなに野いちごが取れたよ?」
嬉しそうに話すアベル
アベルに聞いたのが間違いだったようだ

「俺も数は数えてなくて、ごめんね。でも二人ともすごかったよ」
柔らかく微笑むスノー

君がすごいと言ってくれるなら
無限に戦えそうだ!

「まぁこんな雑魚じゃな」
もう飽きたようで武器を魔法で消しながら前に進むスイウンに俺たちはついていく
カインがキノコを食べたらしく涙目のアベルに背中をどつかれている




「お、見えたな」
スイウンの呟かれた言葉通りに眼前に広がる景色は
我が祖国ゼンクォルツ王国だった
高い壁に囲まれた、大国だ

「ここが、ヴァルツの住んでいる国なんだね」
横にいるスノーが感嘆しながらそう言った
「ああ、そうだ」
俺は答えながら、やはり故郷に戻ってこれた安心感を感じた
そう思いながらも、スノーにはそんな存在がないんだと
改めて思った
俺は自然にスノーの肩を抱き寄せる
「ここは豊かで民は優しい。いい国だからな」
微笑んでそう言った
「…うん。楽しみさ。でも、フフそれじゃあ王様みたいな言い方だね」
「そ、そうか?そうかなアッハッハ」
内心ギクっとしたが笑って誤魔化す

まだこの国の王子だとは言っていない
スイウンには感づかれていそうな気はするが何も言わない
どのタイミングで言うか…こ、告白は既にしたから
あとは返事をもらうだけだがやはり、気が臆してしまう
ふ、振られてしまったら俺はどうすればいいんだ?
そんな想像だけで力が抜けてしまう
よろけて小石に躓いてしまい鼻でスイウンに笑われてしまう

……

柔らかい日差しの中
冷たい風が肌を刺す

どこか胸が沸き立つ様な気持ちと
恐れを感じる…

あの竜討伐から大分時間が経っている
俺の騎士団の仲間たち
そして王国の皆
自分一人がいなくても…きっと大丈夫なはず
………




「ヴァルツ?」
「!」

隣から心配そうな顔をしたスノーがいる
「なんでも、なんでもないよ」
きっと下手くそな笑顔だろう
それでもスノーは納得はしていないだろうに
頷いてくれた


「約束」

「えっ!?」
慌ててスノーを見つめる
や、約束ってあの、約束?

「…ほら」
嬉しそうな顔でスノーが微笑む

「あ、うん…」
まだ国は目の前にあるのに
ま、待てなかったのかな
そんなに俺のこと……


「案内してくれんでしょ?楽しみだなー」
「あ、案内…」
「もしかして忘れてた?」
「そんなわけないだろ!?」
慌てて首を振る
忘れてないけど、心臓に悪い

「貴様、何を恐れておるのだ?」
「…‥恐れてなどいない!」
アベルに背負われているカインが俺を見ていった
そう、ビビってなんかいない
……




国璧の大門まで来た
我輩はこれにてさらば
と言って去ろうとしたカインがアベルに捕まり形態変化で小さなムササビとなりポケットに収納された
なぜムササビなのか…


大勢の列ができている
商人や旅人などで溢れている
その真横を抜けていく
「どこにいくんだい?」
「こっちには騎士隊員用の通用口があるんだ」
俺の言葉をきいてスノーは横に並んでついてくる
列から離れ一団から離れた場所につき壁に触れる
「開け」
触れた箇所から青い光が放たれ魔法陣が浮かぶ
そうして触れた場所に扉が現れた
「ほう。認識阻害と識別機能がついておるのだな」
「そうだ。普段は隠密や決められた者しかここを利用できないが、今回はここを使おう」
取っ手を掴み扉を開く
そこには光へとつづく通路の空間があった
「…回廊」
小さくスイウンが呟いたが誰の耳にも届かなかった

「久しぶりの大きな国だ~!楽しみだなー!」
「我輩はこんな国で時間を無駄にする気はないのだが」
「一番乗りー!」
「グヘッ!?」
アベルがカインを掴んで光のなかへと飛び込んだ


「…さぁ行こうか」
「…うん」
興味深そうに見つめるスノー
手のひらを差し出しそれに気づいたスノーは照れながらも俺の手に手を重ねて歩み出す



「あれスイさん?」

「…ああ」
何かを考えていたらしいスイウンが声をかけられて返事をして早足で扉の中に入っていった


「さぁ俺たちも行こうか」
「うん!」
嬉しそうに微笑むスノーと共に
俺は祖国に帰還したのであった


≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫



「うわぁーーー!!」
「「「……」」」


「……物置?」
「騎士団詰所だ!」
なんて失礼なことを言うんだ!
すこし、少しばかりものが多くて散らかってるだけだ
男所帯だから仕方ない
…でもこんなに散らかっていただろうか
中は明かりがついていなく窓のカーテンの隙間から僅かに光が漏れている
「…」
壁に触れ魔力ラインが引かれている箇所に魔力を流し
部屋の明かりを灯す
「「「…」」」

「きったね」
「……なぜだ」
部屋は荒れ果てていた
埃が被り床にはかけ布だろうものと箱詰めされたものが並んでいる
テーブルの上には洋燈と何かの紙が置いてある

「…コホ」
「す、すまない!」
急いで窓を開けて換気する
冷たい風と日差しが入り込む
視界には王城と城下町が見えた
「見晴らしがいいね」
「そうだな」
二人で並んで景色を見る
「あれは何?」
「ああ、あれか?あれは樅木を色々な物で飾った聖夜祭の為の飾りだよ」
街路樹と共に並べられた樅木に赤と金の布が巻かれ
家や店によって様々な飾り付けをする
「へぇ…。あの丸いのは月?」
「あれは太陽だな。この国は太陽神を国教として信仰しているからそれのモチーフと、見てみてくれその隣にあるのが月女神の三日月、二柱の神は互いに存在する事で世界を守っていると言われているんだ」
「へぇー」
太陽神をモチーフにした樅木の隣に
銀と青の布を巻かれた月女神をモチーフにした樅木もある
「月女神はリトリシア皇国の祭っている神の一柱だから、普段は太陽神の様に崇められてないが、聖夜祭は神同士の逢瀬が叶うんだ」
「そうなのか?いろいろ神話を聞いたけど、その話は初めてだよ。逢瀬?」
「ああ。…創世神がこの世界を作りその後太陽神が星を照らし暗く冷たい夜の世界にも光が届く様にと月女神が夜を照らす。互いになくてはならない存在で、普段彼らは星を対極に回っているから互いに愛し合っているのに会うことができない」

「それは、寂しいね」
「そうだな。だけど一年に一度、その日は月と太陽が重なる日…、皆既日食があるんだ」
「あの昼間なのに夜みたいに暗くなるって話を聞いたことがある」
「そうだね。この国ではそれを神々の逢瀬だと言って皆で祝うんだ。だから聖夜祭」
「ふーん。御伽噺の様だね。神様の恋物語なんて…」
「…まぁね」
「国全体のお祭りかぁ。いつなんだろ」
「えぇと…あっ、明日だ!」
俺は頭の中で日数を数え、明日聖夜祭だと気づく
「本当!?俺、見てみたいかも!」
珍しく子供の様に瞳を輝かせて喜ぶスノー
「是非祭りを見てくれよ。その際は俺が案内してあげるからさ」
「うん!楽しみだなー」
これでスノーを誘える口実ができた
俺ってなかなかスマートなやり方が身に付いたんじゃないか?
と自分で自分に胸を張る
窓の外から聖夜祭の準備のためか、白いローブに金色の布を首にかけた子供たちが笑いながら走っている
「聖歌隊の子供たちだな」
スノーと二人で見つめる
寒空の下でも楽しそうな子供たちが戯れている
「……うん。いいね」
「ん?」
窓枠に組んだ腕を乗せて顎を置きながら
横目で俺を見る
その目は澄んでいて、どこか大人っぽく見えてドキッとした
「素敵な国だなって思って」
ここでヴァルツが育ったんだね…
と小さく呟く
俺はそれに城の方を見て
そうだと小さく呟いた


「あはは!お祭りなんて久しぶりだぁ!覚えてる兄さん?あの町のお祭り以来だよね!」
後ろの方で陽気な声で話すアベルに
子供の姿のカインが目を細めテーブル前の椅子に座り頬杖をついて顔を逸らす
「……そんな昔のこと、覚えておらん」

「えぇ!?じゃあ二人でヤギのミルクを買ったり、果物のシロップ漬けやキャラメルナッツとか買ったよね!」
「知らん…」

「僕たちも聖歌隊の歌の練習だってしたし、お祈りもしたじゃないか!?あの時兄さんは歌なんてって言ってたけど隠れて練習してたの知ってたんだよ!」
「知らん!」
「だ、だって。ほらあの子たちだって…」
「うるさい!!」
バキッ!
気のテーブルが上から砕かれる
壊したのはカインで
俺たちは驚いて固まる

「に、兄さん」

「古臭い昔話をしおって!何がしたい!」
「何って、僕は思い出を」
「何が思い出だ!!全てを壊した私に対する嫌味か!」
「違うよ!そんなつもりじゃ」
「私は何も知らん!思い出したくもない…。あれは私の罪。そして貴様の消えぬ愚行」
「ッ!!」
「フン…。神に呪われた私と神に愛されすぎたお前に、私の気持ちが理解できるはずもない」
「兄さん!!」
「やめろ!…我が愛が願うから、仕方なくお前がそばに居るのを許しているが思い上がるな!未来永劫我らは咎人なのだ!」
「それは……」
「…もうそんぐらいにしてやれよ」
スイウンが仲裁する様に割って入る
「こやつが喧しくするからだろう!」
「仕方ねぇだろ?こういうやつなんだからよ。大人なら大人らしく接してやるのが余裕ってもんだろ?」
「…青二才風情が偉そうに」
「へっ。その青二才に指摘されてちゃ世話ないぜ」
「ハッ!万年下働きの小童が」
「あ~!?言いやがったなてめぇ。弟半泣きさせてるダメ兄貴に、代わってお仕置きしてやんよ!」
「う、うるさい!貴様などにできるものか!」
「オラっ!」
「ぷぎゃっ!?」
脳天に拳骨を喰らう
「ぐぅ!」
「おふっ!」
蹲って頭を押さえていたカインはしゃがんだ体勢から飛ぶように跳ねてスイウンの腹に頭突きをした
見事な入り具合だ

「て、……てめぇ」
「ぐふぅ………」
互いにダメージが残っているのか満身創痍でその場に蹲る二人
何をやっているのかこいつらは…

「僕のために争わないで!!」
青い瞳を潤ませながらアベルが言った
「「違うわボケ!」」
二人の声が揃う


……

「仲が良いんだね」
「……かもな」
スノーと俺は呆れながらそう言った




≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫





「じゃ行ってくるわ」

「いってらっしゃい」
「わ、我輩も!」
「ほら兄さん行くよ!」
「グェッ!」
変な声を出して強制的にアベルに背負われて二人は詰所から出ていった

「じゃ俺も行ってくるね」
「ああ。あの二人がいるから、大丈夫だと思うけど。気をつけて」
ぎゅっとスノーの手を握る
俺たちは一旦別行動となった
スイウンは団に報告があると出ていきアベルとカインそしてスノーは前夜祭の街を散策するようだ
俺は一旦騎士団…王城に戻るつもりで自分の安否を報告せねばならない
事故とはいえ、騎士団長でもある俺が不在で迷惑をかけてしまったかもしれない
そう思うと足が重くなるが、逃げてはいられない

「じゃあ夜に合流で。食事は一緒かな?」
コメント首を傾げる
真っ直ぐな青い光沢感のある白髪が揺れる
「大丈夫だ。必ず戻る」
「うん。待ってる」
見つめあって確認し合う
まるで恋人、夫婦のような会話じゃないかと錯覚して顔がにやけてしまうのを堪える



「行ってらっしゃい…」
「おう!行ってくる!」
笑顔で手を振って別れる


三人は町の中へ進んでいった
俺はそれを見送って王城へと歩みを進めた

あの月夜に照らされた川の水面でスノーと出会い
助けられて俺は初めて…恋をした
恩人であるという点と見目に魅了されたのは勿論だけどそれだけじゃない…
どこか浮世離れした態度でありながら面倒見が良くて
褒めると視線を逸らしながら頬を染めて嬉しそうに笑う姿に俺はときめき、あの山小屋で過ごした日々は充実していつまでも続いてほしいとすら思ってしまった
今までの俺は…この国の歴史に恥じない王家の人間として日々修練してきた
それについて不満も疑問もない
国を守り民を助け、多くの幸福のために貢献できるならこの身を賭しても惜しくはないと思っていた
両親のように気高く民に愛される存在であれ
兄のように人望があり才色兼備な麗人に憧れ
ひたすら騎士道に励んできた
それは俺の誇りであり人生だった
仲間にも恵まれ皆が賞賛してくれていても心のどこかで俺は俺自身を認めることができない
未だに国宝である宝剣も完全には解放できず
騎士団を率いている俺がいなくても兄上がいれば、この国は安泰だった
……劣等感、なのだろうか
あの人の右腕になって共にこの国の繁栄の為に尽力できればと思っていた
俺は俺の影に怯えていたのかもしれない

だけど
スノーと出会い運命を感じて
仲間ができて、まるで冒険譚のように旅をして
俺は
俺は楽しかったんだ

この国にずっといては、知ることができなかったことだろう
不満はないはず…自分の生き方は己で決めてきたのに
揺れてしまっている自分に俺はショックを受けている

…だけどこのままじゃダメだ
夢も、恋も諦めたくないと
心から思う

負けてきた
負け続きだった
スノーがいなければ川底で死んでいたかもしれない
スイウンがいなければ邪神の一族に殺されていたかもしれない
カインにスノーを奪われてあの隊長とやらに助けて貰えなかったら殺されていただろう
アベルに出会わなかったらスノー救出に間に合わなかったかもしれない

惨敗だった

誰もいない通路を乾いた笑いが響く


ギシッ
拳を強く握り締める音がする

だから俺はもう、負けない
眼前の王門を睨みつける

弱いままでいるのは嫌だ
守れないのは嫌だ
守られるのも嫌だ
俺自身のために強くなりたい

強者に出会って愛する人ができてヴァルツは
人生で初めて、向上心を持って
自らに誓いを立てたのであった



≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫



王城は静寂に包まれていた

……おかしい

騎士庁舎にも寄ったがもぬけの殻だった
聖夜祭の警備関係で忙しいのかもしれない
が、誰もいないのは変だった
誰かしら留守を任される者がいるはずなのに
王城内も衛兵はいるが数が少ない
これでは侵入者や奇襲があった際対応が厳しいはずだ
この状態を兄上が放置させているわけがない
何かあったのか…
俺は歩く速さを早めた


…「開けてくれ」

「はい」
王の間の門番に声をかける
ギィ……

音を立てて大きな扉が開く
「兄上!」
赤と金の布が垂れ下がっている王の間の玉座に
影になっているがそこには兄の姿が見受けられた

「兄上!遅れながら帰還いたしました!」
片膝をつき声が大きくなりながらもそう言った
顔をあげる
目の前の兄は俯いたまま、反応がない
……そういえば

「なぜ、兄上が玉座に?」
両親である国王と王妃の姿が見えない

「…今更戻ってきたのか…」
「ッ!」
その声は憎々しげで棘があった
思わず体がすくむ
「も、申し訳ありません」
「………いや、すまない」
俯いた顔を覆うようにした後息を吐き
俺を見る

「よく戻ってきてくれた。ヴァルツ…」
どこか疲れと哀愁を滲ませた顔をした兄ヴァージルが
弟の帰還に言葉をかけた
その言葉を聞けてやっとヴァルツは安堵することができた

「はい、兄上….」
互いに見つめ合い互いの無事を確認する
やはりあの優しい兄だったと確認できた

「それで、陛下たちは…」
そう尋ねた
聞きたいことは山ほどあったが
今目の前にある違和感を聞いた


「死んだ」

「…………え?」
思わず下手な笑みを浮かべる
何を言っているんだ兄上は冗談など滅多に言わない人なのに

「ご、ご冗談を。ああ今は聖夜祭前ですよね忙しいはずですから、代理でしょうか?来る前に庁舎も見たんですが誰もいなくて驚きましたよ。兄上は、お疲れのようで少し痩せられましたか?俺は怪我を負いましたが運良く恩人に助けて貰って、あ!是非兄上に紹介したい人がいて」
「死んだと言っている」
「……………」

兄の目を見つめる
この真っ直ぐな視線はいつもの兄の目だった
そこに嘘偽りは感じなかった
「……な、なぜ!?何があったのですか!」
詰め寄る
ヴァージルは動じた様子も見せず冷ややかなままだった

「病で崩御なされた…」
目を閉じて、そう言われた
「や、病……」
持病などあっただろうか、流行病?
俺のいない間に…なんて事が…

「それで、兄上が即位なさったのですね。私がお側にいない間に、その、申し訳ございません」
何をいえばいいのかわからず、謝った

「まだ即位はしていない」
「そうでしたか。ですが兄上なら何も問題なく民も受け入れるでしょう私も賛成です」
「……クハハ」
「ッ!」
嘲笑うように笑い出すヴァージル
その様子に、今までの姿が重ならなかった
目の前にいるのは、誰だ?

「王子は二人いる」
「えっと、はい…」
一応、俺も王位継承権がある
だがそれは当然の如く、兄のものだと思っていたし
権利は放棄してないが無いものと思っていた

「そして、王はお前を選んだ」
「何を」
「貴様が次代の王だと!そう今際の際に言い放ったのだ!」
兄の怒号と共に衝撃の事実が突きつけられた









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