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正当性恋愛の錯誤
【4】
しおりを挟むなんでだ?
なぜうまくいかない?
あいつはあんな熱がこもった目で見つめるくせに
目が合う前に回避され
気配を感じると消え、声をかけるとでかい笑顔の男を盾にして消え、昼飯を誘おうとすると窓から消え、放課後下駄箱の前で待ち伏せすると奴は帰っていたりする
もしや、避けられている?
これが二月たってえた結論だった
「今更じゃないかな?てか遅すぎじゃないその結論」
ロイヤルミルクティー風飲料と書かれた紙パックジュースを飲みながら隣の男は言った
風ってなんだ?
「それは香料でミルクティー感を演出しているだけだからね。ミルクもティーも入ってないよ」
「はぁ?詐欺じゃねぇーかそれ」
「だから風って書いてあんじゃん」
「そうか。よくそんなもん飲めるな」
「この明らかに偽物なのにそれなりに努力した感じとチープさがたまらない」
「……お前が理解できない」
「別にしてほしくないもん。飲んでみ」
「じゃあ一口、………悪くはないな」
可もなく不可もない、絶妙なバランスだった
その時強い、ひりつくような視線を感じ振り返った
奴だ!!
だが俺が動くと気配は去っていった
「……チッ」
「え?なに」
「なんでもない。ただあいつを気配を感じただけだ」
「ははっ。動物かよー」
「強い気配を感じた」
「なにジャンプ作品みたいなこと言って。霊圧感じちゃった?チャドの霊圧感じる?」
「感じない」
「マジか。残念」
二人でベランダから空を仰ぎ見る
自分の分の百%フルーツジュースを一口飲む
やっぱこっちの方がうまいな
風でもなく絶対美味しいはずなのに
人はなぜ、明らかな指標ではなく冒険を望んでしまうのか
好奇心は止めることはできないのかもしれない
そんなことを動いてないように見える雲を見て思った
ッ!
「チッ」
舌打ちをする
「あのさぁこれで十七回目だよ」
「数えんなよ」
「そんなに気になるなら告白しちゃえばいいじゃん」
「は、はぁ!?なんで俺様がそんなことしなくちゃならねーんだよ!意味わからねー」
腕を組んで顔を背ける
そうしても目で奴を探してしまう
断じて違う……好き、だなんて
そう、珍しいからだそうに違いない
珍妙な生き物がいたら気になるだろ?
「どうでもいいけどさー。噂になってるよ」
ズコーと飲み物をストローで吸う音が聞こえる
「噂ってなんだ?」
こいつは眠そうな猫が背伸びをするように動いた
そして寝た
「起きろアホ」
「いたた!乱暴者め!ファンに奇襲させんぞ!」
「ファンに何させてんだテメー。事務所に言うぞ」
「お好きにどうぞー。むしろ仕事減らして欲しいしー」
ズコーとまた空の容器を吸うので奪う
そしてゴミ袋に入れてやる
「また寝れてねぇのか?」
「まぁーね。撮影多すぎ。尊も今月多かったんじゃない?ほとんど俺と一緒だし」
確かにそうだ
こいつは芝浜深、同じモデル仲間でこいつの母親が社長の事務所で働いている
「日差しあっつー」
「俺を日傘がわりにするなよ」
深がもぞもぞと俺の学ランを広げ胸に収まるように入ってくる
カシャッ
ッ!
「まて!」
ダッ!
走り去ってしまった
あいつ足はえーなまた逃げられた
「あー、またいたの彼、えーと」
「御子柴だ」
「そうそう御子柴君。尊がお熱の相手」
「気持ち悪い言い方すんな。そんなんじゃねー」
「どんなんなのさ」
「あいつが、………俺を好きなんだよ」
「へぇー」
「お前、引かないのか?男同士だろ」
「はぁ今更じゃない?令和よ?脳みそアップデートした方がいいよ」
「そうなのか…」
「じゃあ困ってる感じ?」
「別に俺は」
「じゃあどうしたいの」
「どうって…あいつに」
「ん?」
「……告白させたい」
「なんで?」
「なんでって…そりゃそうだろ?いつまでも隠れてあの視線浴びせられる身にもなれよ」
「じゃあやめさせればいいだけじゃん。告白いらなくない?適当にストーカーされてるとか周りに言っとけば処理してくれるよ」
「はぁ?そんなことさせねぇぞ!」
「なんでキレるんだよ」
「うるせぇ。兎に角、余計なことはするなよ」
「俺は興味ありませーん」
バックから新たな紙パック飲料を取り出した
今度は本格いちごミルク味風らしい
噛み合ってなくないか?
「御子柴君がー尊に告白すれば満足なの?」
「まぁな」
「うわぁニヤつくとかマジかよ」
「あぁ?」
「何でもないですー。じゃあ返事は決まってるんだ?」
「返事?」
「当たり前でしょーが。付き合うなり断るなり、必要じゃない?」
それもそうだ
なぜ気づかなかったんだ
「今までなんか歩みすら止めずにやだしか言わなかったもんね告白の返事」
「そうだったか?覚えてねぇ」
「うわぁガチクズじゃんやばー」
「うるせぇ。お前はどうなんだよ」
「俺?俺はねぇ、『告白ありがとう。でもさ鏡見てから言ってる?』って言う」
「最低じゃねーか」
「はは!うそうそ」
ズココと空の容器を吸い始めた
揶揄いやがって
「……ちょっときょーみできちゃったなぁー」
「おい」
「大丈夫、ひどいことはしないってー」
グシャッと潰された容器は投げられて袋から外れて落ちた
ちゃんと捨てろ!
◆
「な!?ななななな何事でござるか!?敵襲でござるか!?」
「あははは!ウケるー」
「……」
放課後、珍しく連絡が来ていて裏庭に来いと指示され面倒だったけど仕方なく来たら
悲惨な光景が広がっていた
「お、お情けを!決してやましいことはありませぬ!!」
「じゃあスマホ、中身見せろよ」
「マジで勘弁してください」
頭を虫取り網に確保されながら胴体は縄で縛られていた
「うん許す」
「わぁーい優しいひとだぁ!じゃあこの縄も「それはダメ」うーん腹黒鬼畜の予感ビンビンー!」
喧しく騒いでいる御子柴は今日も元気なようだった
あの日、本屋でたまたま、たまたま見つけた際本のついでに喋ったが
あれから学校では俺を避けていた
気配や視線を感じていたが野生動物の如く素早くて今まで逃げられ続けていた
「うぇーん、鼻は液体を飲むところじゃないよー」
「いけるってほら、大丈夫。痛いのは最初だけだからさ、ね、いいよね」
「うーん何もよくないよー!リアル腹黒鬼畜はお断りー!こわいよー」
「チッ」
俺は仕方なく、仕方なく御子柴を助けた
深がやろうとしていたのは紙パックの京風おぜんざいドリンクを鼻から飲ませようとしていた
それは拷問だろうだからやめろと忠告したのに
こいつは好意でとんでもないことをするから牽制していた
だがそのおかげで御子柴を確保できた
「ひぃーいじめっこだぁー乱暴されるーエロ同人のようにーエロ同人のようにー」
「お、おい騒ぐなよ!よくわからねーが嫌なこと言ってんだろ!」
「あははー!よいではないかーくっころくっころー」
「ああもううぜー!お前ら黙れ!」
二人をチョップして黙らせる
「暴力はんたーい」
「はんたーい!我々はたとえ一人になろうとも!断固抵抗する!」
「誰なんだよそのキャラ!ふざけんな!」
叱りつける
「で、何でこうなったんだよ」
二人をアスファルトの上に座らせる
深は既にスマホをいじっている
御子柴はプルプルとして俯いている
怖かったのか?
怒りすぎたかもしれない
勢い余って強く当たってしまったかも…
つい、うれ……気が立ってしまったんだ
「おい」
ビクッ
「わ、悪かった。そんなにビビらせるつもりなんてなくてだな」
「はー推しが尊い」
「はっ?」
「あなんでもないです。続けてください」
光を反射していてその目は見ることができなかった
御子柴はまだ縄でグルグル巻きにされている
解放した瞬間脱兎の如く去るのが目に見えているからだ
「ねぇ」
「あ?」
「これ、外してよぉ」
「ダメだ。逃げるだろ」
「逃げないよぉ。苦しくてこれ、ねぇ、お願い」
「ッ……」
どこか甘えるような声音に俺は動揺した
「ねぇそれ、このシーンのセリフ?」
「あ、うんそうそう。受けがオメガで発情状態でさ首のセーフティを外して欲しいと懇願するけど、攻めはフェロモンにやられながらも我慢するシーンなんだよね!最高!後で受けが後悔したり理性ながない時より普段の時番いたい攻めの健気さが尊い!受けもそんな攻めにキュンとし次はいいよって照れながらも受けいたりなんかしちゃってもうね!たまんないですよ!前の巻ではライバルの会社のボンボンに拉致されるけどそこで救出したものの、薬を飲まされたせいでえっちな展開になるけど我慢して耐える姿が健気なんだよ!わかる!?ねぇ!?」
「お、おう!おう?」
あまりの勢いに俺は困惑しながらも頷く
御子柴は普段と違い笑顔だった
かわ、いくない!
あぶねぇ
「でもさぁこの男の子も悪くない?その気もないのについて行ってさいざとなったら別の男に助けを求めるなんて」
「それがちゃんとわけがあって、自分ではαの番としては不十分だと思って身を引くの。しかもタイミング悪く親の勝手に決めた許嫁が邪魔したりしてさ。それでもすれ違いながらも障害を乗り越えくっつくんだよ!」
「へぇー、しっかりしてるんだね」
パラパラとページをめくる深
なぜか周囲の熱が下がった
「………」
「?」
「ね、ねぇねぇ?」
「うん?」
「あの、記憶とか消えちゃわない?」
「そんなマック寄らない?的に言われてもねー」
「そ、そこをなんとか」
「ねぇなんでうなじ噛むの?」
「それはね!!じゃなくて!」
深のペースに持って行かれたようだ
読み進める深の隣で御子柴が騒いでいる
………
「おい!俺を無視するな」
「それどころじゃないの!俺の平和な学生生活が!あこれ王道学園ものっぽい」
「俺は非王道の方が好みかな。てかみんな個性豊かすぎるウケる」
「わかるー。でもそれぞれいいところがあるんだよ!ってちがうー!」
大騒ぎだ
「おい!俺にもわかるように言えよ!」
「はぁ!?舐めんなよゴラァ!?」
「男の嫉妬かぁ複雑ぅ」
その後見回りの先生が来るまで俺たちは騒いでいた
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