血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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極道の世界

お父さん

「な、なんで…っ、」



宏斗はこの部屋に入ってきた人物を見るやいなやまるで獣に見つかった小動物のように怯えていた。玲二に至っては恐怖からか話すことすら出来なくなっている。そんな2人をみて庵は安心から涙を流した。それはきっと自分に有利になることが起きている…そうわかったから。



「なんでだと?それは龍之介から聞いたからだ。お前らが好き放題してるってな。それにお前らが1番分かってんじゃねぇのか?自分のした過ちをな。」




足も腕も拘束され寝転がされている庵には話している人物の顔が見えない。だがこれだけはわかった。庵はこの人物に会ったことがないということ。それは声を聞いたことがなかったから。



「そ、そんなの龍之介の出任せだよ。てかさ、親父は俺の言うこと信じてくれないわけ?実の息子は俺じゃないか…。あいつじゃなくて俺だろうが!」



この期に及んで宏斗は言い訳を始めた。だがそんな宏斗のおかげで庵はある情報が手に入った。それは宏斗が言った『親父』という言葉。それが意味することは1つ。ここに入ってきた人物は宏斗らの父親であるということ。そして龍之介の育ての父でもある人物だ。しかし庵には分からなかった。宏斗らがここまで怯える理由が…。だって彼は宏斗らのお父さんなのに。庵がそんなことを考えていると入ってきた人物がまた話しを始める。



「はは、実の息子か…。」



宏斗の言葉に対して男はそう呟いた。そして再び閉ざした口を開いた。



「そうだな。お前らは間違えなく俺の息子だ。でもそれは過去形だ。今は違う。いくら肉親でもここまでやられたら黙って見てられない。」

「なんだよそれ…ふざけるなよ!ふざけんじゃねぇクソ親父!親父は俺らを見捨てるってことかよ!!」



玲二は焦りからかそう叫んだ。だがそれは都合のいい事だ。好き勝手して幹部まで殺して命乞いをする方が間違っている。彼らは現に庵にもこんなに酷い事をしているのだから。



「玲二。どうやら俺はお前の教育方法を間違えたようだ。」

「…はぁ?どういう意味だよ。」



これまで玲二らはこの父親によって嫌ってほど甘やかされてきたのだろう。それが庵にはこの一瞬でわかった。舐め腐っているこの玲二の感じを見て…。



「どういう意味かって?それさえも分からないのかお前は。」

「何言ってんだよ親父。俺らを潰す気かよ。」

「その言葉…そっくりそのままお前に返させてもらう。でも玲二、俺はお前にはちゃんと期待していたんだぞ。」

「ならなんでだよ!!意味わかんねぇ!」

「宏斗、お前にはその理由がわかるだろ?」



声を荒らげ続ける玲二。きっと玲二は恐れている。このまま親父に潰される事を。そしてそう問いかけられた宏斗も玲二同様に焦っていた。



「な、何の話だよ。変なこと言わないでよ親父!ねぇ、それより俺の話を聞いてよ!」



どこまでも言い訳並べてくる宏斗に男はため息を着く。そして後ろにいる数人の男を見た。



「…もういい。時間の無駄だ。おいお前ら、さっさとこのグズ共を連れて行け。顔も見たくねぇからよ。」



男はそう言うと後ろにいる数人の男たちに指示を出し始める。それを見た宏斗と玲二は狂ったように叫び出した。だがそれにかわまず男たちは宏斗と玲二をこの部屋から出して連れ去って行った。それを庵は黙って見ていた。そしてそんな庵の所にある男が近づいてくる。



「君が庵くんかね?」



男はそう言いながら庵の拘束具を取り始めた。だが庵からしてみれば恐怖でしかない。だから身体をガタガタと震えさせてしまった。そんな庵をみて龍之介の育ての父は優しく庵に微笑んでくれた。



「そう怯えなくていい。何もしないからね。益田、毛布被せてあげて。このままじゃ寒いだろうからね。」

「はい。」



龍之介の育ての父親が後ろにいた男にそう指示した。するとその益田と呼ばれた男が庵に毛布をかけてきた。



「庵、寒くないかい?」

「……だ、れですか?」



龍之介の育ての父ということは何となくわかったが確信はできていなかった。だから庵はそう聞いたのだ。助けてくれたことには変わりないが知らない人物だしもしかしたらまた酷い目に遭うかもしれないから。そんな庵に男は優しく答える。



「んーなんて言えばいいのかな。まぁ簡単に言うと龍之介の父だ。だから俺の事はお父さんと呼ぶといい。」



やっぱりそうか。庵の予想通り彼は龍之介の父親だった。だけど庵はまだ恐怖が抜けていない。そのため上手く喋ることが出来ず挙動不審になってしまった。そんな庵をみて益田が口を開く。



「親父、庵が混乱してますよ。まずは自己紹介しましょう。」

「はは、確かにそうだな。庵、俺の名は和紀(かずのり)だ。さっきも言ったが龍之介の父だから安心していい。もうお前に酷い事するやつはいねぇからな。それとこいつは俺の右腕の益田だ。これから長い付き合いになるだろうからよろしく頼んぞ。」

「よろしくな庵。お前の事は坊ちゃんから聞いてる。」



そういい益田が庵の頭を撫でてきた。その2人には何となく龍之介の面影を感じることが出来た。そのおかげか庵は安心した。心から安心することが出来た。だから…。



「………あり、がと、ござい、ますっ、」



涙を流してしまった。怖かったから。殺されると思ったから。このままここから出られないと思ったから。龍之介にも会えないと思ったから。だから庵は泣いた。安心から涙を流し続けた。そんな庵の背中を和紀は優しく撫でた。



「俺がここに来たのは龍之介のおかげだからあいつに感謝するんだぞ庵。まぁ本当はあいつ自身で君を助けたかったようだがそれをしたら死人が出てしまう可能性があった。だから龍之介に頼まれて俺が来たんだ。」

「あの、すまんせん親父。ちょっといいですか?」

「ん?どうした?」



急に話を遮ってきた益田に和紀は何事かと彼の顔を見た。益田の行動全てにはちゃんとした理由があるから。



「話の途中にほんとすみません。立ち話もいいんですが早いとこ帰りましょう。坊ちゃんも待ってますから。庵は俺が抱きかかえて行くんで。庵的にもそっちの方が安心するでしょ。」

「そうだな。てことで帰ろう庵。龍之介が待ってる。」



庵はその和紀の言葉に小さく頷いた。その庵をみて益田が庵を抱きかかえる。そして庵はこの地獄の部屋から出ることが出来た。


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