怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達

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部屋の外の世界

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「ほら誠也。立てるか?無理そうだったら抱っこしてやるぞ。俺とお前は顔一個分ぐらい身長違うからお前なら余裕でおんぶ出来る。」



いちいち腹立つこと言ってくるなこいつ…!けど自分で歩けるほどの余裕は無い…。くそ…。仕方ねぇこいつを頼るしかねぇか…。



「…お願いします。」

「おんぶと抱っこどっちがいい?」



くそ…ニヤニヤしてなんてこと言ってくるんだよこいつ。俺は子供じゃねぇんだぞ!けど逆らったらまずいもんな…。



「…おんぶでお願いします。」



抱っこだったら健二の顔が見える。こいつの顔が目の前に来るよりおんぶの方がマシだ。



「そっか。誠也はおんぶがいいんだな。なら抱っこしてやる。」

「ありが………はい?」

「俺は抱っこしたい気分だからよ。」



じゃあなんでいちいち俺に聞いたんだよ…!元から俺には選択肢ねぇのかよ…!



「…そうですか。」

「お前本当に随分いい子になったんもんだ。まぁ別にそれで困ることは無いがあまりにもいい子になるのが早いと疑っちまうよなぁ。演技してんのかなってよ。」



まぁそりゃ演技ってバレるよな…。けどそれぐらい許して欲しい。逆らわなくなっただけ許して欲しい…。



「まぁいいけど。お前さえ逃げなきゃ俺は別にいいけどな。」



こいつまじで優しいのか怖いのか分かんねぇ…。まぁ怒られなかったから別にいっか…。



「んー組長遅いな。先に外行くか。ほら誠也。抱っこしてやる。」

「…お願いします。」

「任せとけって。ほらまた俺と密着出来るな。嬉しいだろ?」



何が嬉しいんだよ…。嬉しくなんかねぇよ…って俺が黙り込んでいると健二が…。



「誠也?無視か?」

「い、いえ…嬉しいです。」



怒らせるとこいつほんとに怖いんだよ…。俺は怒られるのが怖くて平気で嘘をつくようになっちまった…。嬉しいなんて思ってもねぇのに。



「そうだよな。安心したぞ誠也。じゃあ外に行こうな。」



こいつも俺が嘘ついてるって分かってるだろうになんでこんなに嬉しそうな顔すんだよ。俺なんかに嬉しいとか言われても何が嬉しいんだよ…。分かんねぇほんと…。



「…鍵、かかってるんですか?」

「あ?」



こいつに抱っこされて部屋のドアの前に来たのはいいものの何やら操作していた。それを見るに多分暗証番号的なものだと思う…。



「これのことか?」

「はい…。」



俺はあまりにもこいつらを舐めていた。普通に考えたら分かるのに。そうだよな…。普通のドアなわけが無い。



「そうだ。でも鍵じゃねぇ。俺らの指紋だ。」

「…指紋?」



指紋って…。俺ここからどうやって出ればいいんだ…?こいつらの指紋…セロハンテープとかで採取すればいけるか…?いやそんな簡単な問題じゃねぇだろ…。



「ああ。指紋だ。そしたらお前はここから出られねぇだろ?俺らは徹底的にやんだよ。」

「………………っ。」



…だからこいつらあんなに自信を持ってたのか。俺がここから逃げられるはずかないって。そういうことだったのか…。



「まぁそもそも逃げるなんて馬鹿な真似お前はしねぇもんな、誠也。」



有無を言わせないこいつのオーラ。怖いんだ…。笑ってるのに目は笑っちゃいない。俺に選択肢を与えるつもりなんてないこいつの問い…。全部が怖い。



「…はい。」

「よし。いい子だ…ん?なんか足音聞こえるな。ドア開けてみるか。」



やっと…。やっと部屋の外が見れる…。俺は思わず前のめりになったが今は健二に抱っこされてる。だからその少しの動きすらも制御されてしまった。健二は力強いから。



「あ、組長だな。つーか誠也、お前暴れんなよ。抱っこしてんだから。危ねぇぞ。」

「ご、ごめんなさい…。」

「まぁ別にいいけど。俺がお前を落とすなんて失態はしねぇから。」



だろうな…。部屋の外に出てからというもの心無しかこいつの力が強くなった。俺を抱きしめる力がよ…。つーか部屋の外に出たのはいいものの…廊下…広すぎんだろ。これどっちが出口なんだよ…。



「組長!お疲れ様です!」

「おい健二。なんで誠也を外に出してんだ。」

「見ての通りですよ。いい子になったから外に出したんです。」

「いい子に?それは本当か?」

「俺が組長に嘘をついたことがありますか?」

「ないな。」

「でしょ?」



こいつらまた呑気に会話してやがる…。その間にちょっとでもこの部屋の外を見ておきたい。けどどこもかしこも廊下。他にも部屋があるのは見えるがそもそもここは何階なんだ?それすらもわかんねぇ…。



「まぁそれならいい。お前がそう判断したってことなら俺は別に何にも言わねぇ。」

「ありがとうございます組長。」

「それで誠也。お前健二にちゃんと躾けて貰えたのか?まぁだからここにるってわけだよな。」



腹立つ…。躾けて貰えたってなんだよ…。けど悔しいけど顔だけはいいよな…。顔だけは…。この顔なら女にも男にも困らねぇはずなのになんで俺なんかを…。



「ん?誠也?無視か?」

「…ち、違います。」

「お前、声ガラガラじゃねぇか。健二に相当虐められたみたいだな。」



くそ…触んじゃねぇよ。治も手癖が悪い。ベタベタ体を触ってくる…。けどそれを拒否できない。拒否したらどうなるか知ってるから。



「ちょっと組長。人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。俺は躾をしただけです。」

「まぁそうか。んで、お前が誠也を部屋の外に出した理由はなんだ?」



相変わらず治は俺の頭とか顔を触ってくる。気持ちわりぃんだよまじで。一々触んなよ。健二も俺の事下ろしてくんねぇし…。



「あ、それは普通に誠也に部屋の案内をしようと思いまして。」

「あ?案内?」

「はい。誠也は一生ここで暮らすのですから部屋の案内ぐらいしといてあげようと思いましてね。いい子にもなったことですし。組長もご一緒しません?」

「そういう事なら一緒に行く。」

「そう仰ってくれると思いました。お話もしながら行きましょ。あ、組長。あと一応報告があります。」

「なんだ。」

「渚と星秀も誠也に会ってます。」

「あいつらもか…。」
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