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「星秀さん。ありがとう。じゃあ…」
「おう。なんでも言ってみろ。」
「…ここには誰が住んでるか知りたい。」
どのくらいの人がいて誰がいるのか。それを把握出来たら逃げる時に多分助けになる。あまりにも人が多かったら俺はかなり逃げる方法を考えなきゃいけない。ただいつもどんな時も人が多いってわけじゃないと思う。だから人が多い時間やそもそも人はどのくらいいるのかを俺は確かめるためにそう聞いた。
「ここには数え切れねぇほどの人がいる。」
「…そんなにいるのか?」
やっぱりそうか…。そうだよな。廊下だけでもあんなに広かった。だからなんとなくはそれを察していた。
「ああ。けど俺ら幹部がいるこの階はあんまりいねぇよ。ここは4階なんだがここに来れるのは幹部以上の奴らだけだからな。」
「幹部以上…?」
「そうだ。組長と健二さん、俺と蓮に凛翔、渚、勝だけだ。」
てことはこの階すら突破出来れば俺は逃げられるんじゃ…?俺も喧嘩が弱いわけじゃない。だから幹部以下の奴らにはもしかしたら勝てるかもしれない。
「…そうなんだな。」
「おう。けど3階にいるやつらが別に弱いわけじゃねぇよ。」
な、なんだと…。
「3階にいる奴らもかなりの腕っぷしのやつだ。俺らの直々の部下だからな。死ぬことも許されねぇしましてや怪我なんてもっての外だ。使えねぇからな怪我なんてしたら。」
「そ、そうなのか…。」
「そうだ。下っ端のやつらはそんなもんだ。会いに行ってみるか?」
「行かない…!」
「はは、冗談だ。ほら誠也、風呂場に着いたぞ。」
悪すぎる冗談だろ…!そんな必死こいて生きてるやつになんか会いたくねぇ…!そんなことしたら逃げられない現実を受け入れなきゃいけねぇから。
「星秀さん。ここが風呂場か…?」
「そうだ。」
いや…これ…一部屋分ぐらいあるじゃねぇか。やばいだろ。広すぎだろ。こいつらはいつもこんな広い風呂に入ってんのかよ…。
「広すぎやしねぇか…?」
「こんなもんだろ。つか誠也ってそんな感じの話し方なんだな。可愛い顔して。更に気に入った。」
「や、やめろよ…。」
それが嫌で俺はこの話し方を始めたんだ…って言いたいけど父親の影響でもある。そんな話し方ばっかりを聞いて育ったから今更ちゃんとした話し方なんて出来ねぇんだ…。
「悪かった。思い出したくねぇこと思い出させちまったようだな。ごめんな誠也。」
いや…なんで星秀さんが謝るんだ…?この人ってほんとに俺に惚れてんのか…?冗談とかじゃなくて…。
「…いや。星秀さんが謝ることじゃ…。」
「違う。俺が悪かった。誰しも思い出したくない過去はある。俺にだってそれはある。だからごめんな。」
と、言って星秀さんは俺を抱きしめてきた。けど親にすらその行為をされたことがない俺はそれをされるとどうしたらいいのか分からなくなるんだ。
「……………。」
「誠也。お前は強い子だよ。」
「…俺?」
「ああ。お前は強い子だ。」
「どうしてそう思うのか…?」
星秀さんは俺を温めてくれる。その上こんな言葉もかけてくれるんだ。今も俺を抱きしめて頭を撫でてくれる。けど俺はこれに慣れたら駄目だ。ここを出たあとで地獄に戻れなくなるから。
「あんな目に遭ってもこうやって堂々としてる。中々出来ることじゃない。こんな刺青だらけの俺とも普通に話してるしな。」
「…入れ墨は別に怖くない。」
「なんでだ?」
何故って…そんなの入れ墨を入れているか入れていないかのそれだけだから。
「入れ墨を入れてないけど怖いやつはいる。だから関係ない。入れ墨を入れてようが入れていまいが怖いやつは怖いし怖くないやつは怖くない。」
俺がそう言うと星秀さんは固まった。表情も固まった。もしかして言っちゃいけねぇこと言っちまったか…?と俺は星秀さんのことを見ていた。そしたら星秀さんが微笑んだんだ。
「そうだな。誠也の言う通りだ。そうだよな。」
…星秀さんは入れ墨を入れたことで嫌な思いをしたことがあるのかもしれない。この反応はそんな感じだった。てことは星秀さんも望んでこの世界に入ったわけじゃないのかもしれない。これはあくまで憶測だから分からないけどここを出る前にそれは知りたいと思った。
「…実際、入れ墨をいれてるけど星秀さんは優しいから。」
「お前がそう思ってくれてるなら俺は嬉しいな。よし誠也、じゃあそろそろ風呂に入ろう。服脱ぐからちょっと待っててくれ。」
「分かった。」
「いい子だ。」
待つだけなのに褒められるこの環境。こんな環境で育てたらと思うと…いやそんなことはやめよう。いくら置かれた環境を恨んだところで何も変わらないんだから。つかそれよりも俺は星秀さんの背中に入ってる入れ墨に驚いた。
「…星秀さん。」
「ん?どうした?」
「背中に入ってるのって龍ですか…?」
「ああ、これのことか。そうだ。この入れ墨はこの組の幹部と組長が入れてんだ。」
「…何か意味があるんですか?」
「それは今は言えねぇな。ただ大まかに言えば俺らのケジメみたいなもんだ。」
「…ケジメ?」
「ああ。まぁそれはおいおい話してやる。よし、風呂に入るぞ。風邪ひく前に。誠也、おいで。」
「おう。なんでも言ってみろ。」
「…ここには誰が住んでるか知りたい。」
どのくらいの人がいて誰がいるのか。それを把握出来たら逃げる時に多分助けになる。あまりにも人が多かったら俺はかなり逃げる方法を考えなきゃいけない。ただいつもどんな時も人が多いってわけじゃないと思う。だから人が多い時間やそもそも人はどのくらいいるのかを俺は確かめるためにそう聞いた。
「ここには数え切れねぇほどの人がいる。」
「…そんなにいるのか?」
やっぱりそうか…。そうだよな。廊下だけでもあんなに広かった。だからなんとなくはそれを察していた。
「ああ。けど俺ら幹部がいるこの階はあんまりいねぇよ。ここは4階なんだがここに来れるのは幹部以上の奴らだけだからな。」
「幹部以上…?」
「そうだ。組長と健二さん、俺と蓮に凛翔、渚、勝だけだ。」
てことはこの階すら突破出来れば俺は逃げられるんじゃ…?俺も喧嘩が弱いわけじゃない。だから幹部以下の奴らにはもしかしたら勝てるかもしれない。
「…そうなんだな。」
「おう。けど3階にいるやつらが別に弱いわけじゃねぇよ。」
な、なんだと…。
「3階にいる奴らもかなりの腕っぷしのやつだ。俺らの直々の部下だからな。死ぬことも許されねぇしましてや怪我なんてもっての外だ。使えねぇからな怪我なんてしたら。」
「そ、そうなのか…。」
「そうだ。下っ端のやつらはそんなもんだ。会いに行ってみるか?」
「行かない…!」
「はは、冗談だ。ほら誠也、風呂場に着いたぞ。」
悪すぎる冗談だろ…!そんな必死こいて生きてるやつになんか会いたくねぇ…!そんなことしたら逃げられない現実を受け入れなきゃいけねぇから。
「星秀さん。ここが風呂場か…?」
「そうだ。」
いや…これ…一部屋分ぐらいあるじゃねぇか。やばいだろ。広すぎだろ。こいつらはいつもこんな広い風呂に入ってんのかよ…。
「広すぎやしねぇか…?」
「こんなもんだろ。つか誠也ってそんな感じの話し方なんだな。可愛い顔して。更に気に入った。」
「や、やめろよ…。」
それが嫌で俺はこの話し方を始めたんだ…って言いたいけど父親の影響でもある。そんな話し方ばっかりを聞いて育ったから今更ちゃんとした話し方なんて出来ねぇんだ…。
「悪かった。思い出したくねぇこと思い出させちまったようだな。ごめんな誠也。」
いや…なんで星秀さんが謝るんだ…?この人ってほんとに俺に惚れてんのか…?冗談とかじゃなくて…。
「…いや。星秀さんが謝ることじゃ…。」
「違う。俺が悪かった。誰しも思い出したくない過去はある。俺にだってそれはある。だからごめんな。」
と、言って星秀さんは俺を抱きしめてきた。けど親にすらその行為をされたことがない俺はそれをされるとどうしたらいいのか分からなくなるんだ。
「……………。」
「誠也。お前は強い子だよ。」
「…俺?」
「ああ。お前は強い子だ。」
「どうしてそう思うのか…?」
星秀さんは俺を温めてくれる。その上こんな言葉もかけてくれるんだ。今も俺を抱きしめて頭を撫でてくれる。けど俺はこれに慣れたら駄目だ。ここを出たあとで地獄に戻れなくなるから。
「あんな目に遭ってもこうやって堂々としてる。中々出来ることじゃない。こんな刺青だらけの俺とも普通に話してるしな。」
「…入れ墨は別に怖くない。」
「なんでだ?」
何故って…そんなの入れ墨を入れているか入れていないかのそれだけだから。
「入れ墨を入れてないけど怖いやつはいる。だから関係ない。入れ墨を入れてようが入れていまいが怖いやつは怖いし怖くないやつは怖くない。」
俺がそう言うと星秀さんは固まった。表情も固まった。もしかして言っちゃいけねぇこと言っちまったか…?と俺は星秀さんのことを見ていた。そしたら星秀さんが微笑んだんだ。
「そうだな。誠也の言う通りだ。そうだよな。」
…星秀さんは入れ墨を入れたことで嫌な思いをしたことがあるのかもしれない。この反応はそんな感じだった。てことは星秀さんも望んでこの世界に入ったわけじゃないのかもしれない。これはあくまで憶測だから分からないけどここを出る前にそれは知りたいと思った。
「…実際、入れ墨をいれてるけど星秀さんは優しいから。」
「お前がそう思ってくれてるなら俺は嬉しいな。よし誠也、じゃあそろそろ風呂に入ろう。服脱ぐからちょっと待っててくれ。」
「分かった。」
「いい子だ。」
待つだけなのに褒められるこの環境。こんな環境で育てたらと思うと…いやそんなことはやめよう。いくら置かれた環境を恨んだところで何も変わらないんだから。つかそれよりも俺は星秀さんの背中に入ってる入れ墨に驚いた。
「…星秀さん。」
「ん?どうした?」
「背中に入ってるのって龍ですか…?」
「ああ、これのことか。そうだ。この入れ墨はこの組の幹部と組長が入れてんだ。」
「…何か意味があるんですか?」
「それは今は言えねぇな。ただ大まかに言えば俺らのケジメみたいなもんだ。」
「…ケジメ?」
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