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安堵
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「星秀さん…っ。」
部屋の中にいた星秀さんはどこも怪我をしてなかった。あの時は一瞬でちゃんと見ることが出来なかった。けどこうしてちゃんと星秀さんを見ても怪我はない。服の中まではわかんねぇけど…でもよかった。星秀さんはちゃんと立ってる。歩けてる…っ。
「ごめんな誠也。俺は無力だったからお前を救い出せなかった。それどころか俺のせいでお前に嫌な思いを沢山させた。すまない。本当にすまない。」
「な、なんで謝るんだよ。星秀さんは悪くない!」
そんな風に思って欲しくない。だって悪いのはあいつだ…。近藤治…。すべてはあいつが悪いんだ。星秀さんが謝ることなんて何も無い。それに星秀さんも被害者じゃないか…。
「いいや、俺のせいだ。ごめんな誠也。でも…慎都さんや游さんは凄い人だ。そのおかげでお前もいい顔をしてる。」
「…お、俺が?」
いい顔…?どんな顔だろう。自分の顔は自分で見れねぇからよく分かんねぇ…。けど星秀さんがそう言うなら間違いないな。
「ああ。すげぇいい顔になってる。まるで別人だ。慎都さんに良くしてもらってるようで安心した。」
「星秀さんは…?」
「安心しろ。俺も良くしてもらってる。慎都さんの下につかせてもらえることになったんだ。有難いことだろ?ただ暫くはここでの仕事のみだ。俺の事を気遣ってくれて游さんがそうしてくれたんだ。外に出ると組長と出会うかもしれねぇからって。」
星秀さんはあんな目に遭わされてもあいつのことをまだ組長って呼んでる。これまでの縛りがそうさせてるのか。まだ星秀さんは完全に解放されてない。あいつの支配から逃れても身体が覚えてるんだ。でも星秀さん。もう何も考えなくていいんだ。自由なんだよ。
「星秀さん。あいつはもう星秀さんの組長じゃない。」
「…そうだな。」
星秀さんは微笑んでくれてるけど…心から笑えてない。渚さんたちは星秀さんにとっていい仲間って言ってたもんな…。そうだよな。長年星秀さんはあそこにいちんだ。一瞬で忘れろって言う方が無理な話だ…。
「だから星秀さん。ここで一緒に暮らそう。図々しいけど慎都さんはそれを許してくれた。」
俺がそう言うと星秀さんはなぜか驚いた顔をした。その後…笑ったんだ。この笑顔は本当に笑ってる。作り笑いじゃない。苦笑いでもない。星秀さんが心から笑ってる。
「誠也。少し見ないうちに逞しくなったな。」
「そ、そうか?」
「ああ。」
俺的には何も変わってない。変わったのは俺以外だ。星秀さんがここに来た。治のあの支配から逃れられた。その安心。そんで俺自身も安心した。ここに来て怖いことは無いから。
「…けどそうかもしれない。星秀さんの言う通りだ。慎都さんが色んなことを教えてくれたんだ。会ってまだあんま時間経ってないのに俺の知らないことばかり教えてくれるんだ。」
「そりゃよかった。ほんと…安心した。」
星秀さん。それは俺もだよ。星秀さんの事が一番心配だった。けどもうその心配もする必要なくなっちゃったんだな…。こんなに幸せなことは無い。
「お前が幸せならそれでいい。俺はそう思ってた。だけど…。」
「星秀さん…?」
「けどやっぱ俺の手でお前を幸せにしたかった。叶うことならやり直してぇな。俺がお前をその顔にしてやりたかった。」
そう言われて俺は嬉しいはずなんだ。喜ぶべきなのに…。なのに…なんで俺今…慎都さんの顔が頭にチラついたんだ?き、気のせいだ…。気のせい気のせい…っ。それに星秀さんがここにいるためには俺は慎都さんのそばにいないと…だから。
「…俺は星秀さんがいなかったらこんな顔になってない。星秀さんがいたから今がある。」
「ありがとうな誠也。また会ってくれるか?」
「当たり前だ…!毎日逢いに行く!」
なんでそんなことを言うんだよ星秀さん。会うに決まってんじゃねぇか。星秀さんがいなかったら今の俺はいないんだから。
「はは、そりゃ嬉しいけど俺が慎都さんに嫌われちまう。」
「そんな事ない!」
「いい子だな誠也。お前は優しい子だ。」
「それは…星秀さんもだ。」
「そう思ってくれてんなら嬉しい。俺は違う形でお前を幸せにする。だからそのお前に頼み事がある。いいか?誠也。」
「もちろんだ。」
星秀さんの頼み事なら何なりと受ける。何でもだ…!
「じゃあ誠也、俺の横に座ってくれ。」
「…これでいいか?」
「ああ。」
俺は星秀さんに言われた通り場所を移動して星秀さんの横の椅子に座った。椅子ってかソファだな。だから今俺は星秀さんの真横にいる。こんな近くで話すなんて真剣な話なのかもしれない。だから俺は真面目な顔をして星秀さんの横に座ってたけど…。
「誠也。嫌だったら殴っていいから。」
「…ぇ?せいしゅ…っ、ん!」
部屋の中にいた星秀さんはどこも怪我をしてなかった。あの時は一瞬でちゃんと見ることが出来なかった。けどこうしてちゃんと星秀さんを見ても怪我はない。服の中まではわかんねぇけど…でもよかった。星秀さんはちゃんと立ってる。歩けてる…っ。
「ごめんな誠也。俺は無力だったからお前を救い出せなかった。それどころか俺のせいでお前に嫌な思いを沢山させた。すまない。本当にすまない。」
「な、なんで謝るんだよ。星秀さんは悪くない!」
そんな風に思って欲しくない。だって悪いのはあいつだ…。近藤治…。すべてはあいつが悪いんだ。星秀さんが謝ることなんて何も無い。それに星秀さんも被害者じゃないか…。
「いいや、俺のせいだ。ごめんな誠也。でも…慎都さんや游さんは凄い人だ。そのおかげでお前もいい顔をしてる。」
「…お、俺が?」
いい顔…?どんな顔だろう。自分の顔は自分で見れねぇからよく分かんねぇ…。けど星秀さんがそう言うなら間違いないな。
「ああ。すげぇいい顔になってる。まるで別人だ。慎都さんに良くしてもらってるようで安心した。」
「星秀さんは…?」
「安心しろ。俺も良くしてもらってる。慎都さんの下につかせてもらえることになったんだ。有難いことだろ?ただ暫くはここでの仕事のみだ。俺の事を気遣ってくれて游さんがそうしてくれたんだ。外に出ると組長と出会うかもしれねぇからって。」
星秀さんはあんな目に遭わされてもあいつのことをまだ組長って呼んでる。これまでの縛りがそうさせてるのか。まだ星秀さんは完全に解放されてない。あいつの支配から逃れても身体が覚えてるんだ。でも星秀さん。もう何も考えなくていいんだ。自由なんだよ。
「星秀さん。あいつはもう星秀さんの組長じゃない。」
「…そうだな。」
星秀さんは微笑んでくれてるけど…心から笑えてない。渚さんたちは星秀さんにとっていい仲間って言ってたもんな…。そうだよな。長年星秀さんはあそこにいちんだ。一瞬で忘れろって言う方が無理な話だ…。
「だから星秀さん。ここで一緒に暮らそう。図々しいけど慎都さんはそれを許してくれた。」
俺がそう言うと星秀さんはなぜか驚いた顔をした。その後…笑ったんだ。この笑顔は本当に笑ってる。作り笑いじゃない。苦笑いでもない。星秀さんが心から笑ってる。
「誠也。少し見ないうちに逞しくなったな。」
「そ、そうか?」
「ああ。」
俺的には何も変わってない。変わったのは俺以外だ。星秀さんがここに来た。治のあの支配から逃れられた。その安心。そんで俺自身も安心した。ここに来て怖いことは無いから。
「…けどそうかもしれない。星秀さんの言う通りだ。慎都さんが色んなことを教えてくれたんだ。会ってまだあんま時間経ってないのに俺の知らないことばかり教えてくれるんだ。」
「そりゃよかった。ほんと…安心した。」
星秀さん。それは俺もだよ。星秀さんの事が一番心配だった。けどもうその心配もする必要なくなっちゃったんだな…。こんなに幸せなことは無い。
「お前が幸せならそれでいい。俺はそう思ってた。だけど…。」
「星秀さん…?」
「けどやっぱ俺の手でお前を幸せにしたかった。叶うことならやり直してぇな。俺がお前をその顔にしてやりたかった。」
そう言われて俺は嬉しいはずなんだ。喜ぶべきなのに…。なのに…なんで俺今…慎都さんの顔が頭にチラついたんだ?き、気のせいだ…。気のせい気のせい…っ。それに星秀さんがここにいるためには俺は慎都さんのそばにいないと…だから。
「…俺は星秀さんがいなかったらこんな顔になってない。星秀さんがいたから今がある。」
「ありがとうな誠也。また会ってくれるか?」
「当たり前だ…!毎日逢いに行く!」
なんでそんなことを言うんだよ星秀さん。会うに決まってんじゃねぇか。星秀さんがいなかったら今の俺はいないんだから。
「はは、そりゃ嬉しいけど俺が慎都さんに嫌われちまう。」
「そんな事ない!」
「いい子だな誠也。お前は優しい子だ。」
「それは…星秀さんもだ。」
「そう思ってくれてんなら嬉しい。俺は違う形でお前を幸せにする。だからそのお前に頼み事がある。いいか?誠也。」
「もちろんだ。」
星秀さんの頼み事なら何なりと受ける。何でもだ…!
「じゃあ誠也、俺の横に座ってくれ。」
「…これでいいか?」
「ああ。」
俺は星秀さんに言われた通り場所を移動して星秀さんの横の椅子に座った。椅子ってかソファだな。だから今俺は星秀さんの真横にいる。こんな近くで話すなんて真剣な話なのかもしれない。だから俺は真面目な顔をして星秀さんの横に座ってたけど…。
「誠也。嫌だったら殴っていいから。」
「…ぇ?せいしゅ…っ、ん!」
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