ギフテッド

路地裏乃猫

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2章

27話 三方六もおすすめです

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「……えっ?」

 思いがけずきつい瑠香の口調に漣は面食らう。以前、キュレーターになりたいと言う漣を引き留めた時も強い態度を取られたが、今回のそれは毛色が違う。一切の体温を感じさせない冷淡な怒り――もはや相手について考えることすらうんざりだと言いたげな。

 嶋野との会話にかまけて二人を放置したから?

 いや、多分、この怒り方は違う。そういえば以前、キュレーターになることを勧めたのは嶋野だと漣が打ち明けたときも、やはり瑠香は今と同じ冷たい怒りを漣に示した。単純に、漣と嶋野が仲良くするのが気に入らないのか、あるいは……何か深い事情があるのか。

 相変わらず瑠香は口をつぐんだまま開こうとしない。

 とりあえず事情を伺いたくて、駄目元で三原を伺う。すると以外にも、どこか同情めいた目を向けられた。あの三原に。

「悪いな」

 そして謝られる。明日は槍でも降るのかもしれない。

「あの一件以来、できるだけ協会側の人間とは関わらないようにしてんだ。まあ協会には食わせてもらってるし、その意味では、所詮はガキの反抗でしかねぇんだけどさ。ただ……ろくなことにならねぇんだよ。あいつらと付き合うと。現に麻美さんだって、あいつと変に関わっていたから瑠香の食器に気付かれたんだ。ていうか、麻美さんも麻美さんだよ。何であんな奴に惚れるかね。そりゃま、ツラはの造型はいいけどよ」

「ああ……なるほど」

 どうやら死んだ麻美という女性は嶋野に惚れていたらしい。ただ、三原の口ぶりからして一方的な好意だったようだ。

 何にせよ、これではっきりした。瑠香たちは嶋野を敵視している。あるいは協会そのものを。だがそれは、彼女らにしてみれば当然の感情だった。漣も、同じ立場に置かれていたらやはり協会を憎んでいただろう。

 少なくとも……一枚岩ではない、ということか、ここは。

「ごめんね、漣くん。こういう話、ほんとは嫌だよね。だって漣くん、嶋野さんのことすごく尊敬してるから……」

 ぎこちなく微笑む瑠香の目には、しかし、隠しきれない敵意がくっきりと浮かんでいる。いっそ嶋野への罵詈雑言を思う存分吐き出してくれればいいのに。ただ、それをせずあくまでも静かに怒りを伝えるところが、かえって怒りの深さをうかがわせた。

 そんな瑠香の隣で、うんざりげに三原が吐き捨てる。

「つーかお前も、あんまり協会の人間に懐くのはお勧めしねぇぜ。特に……嶋野はな。そもそもあいつ、元は渡良瀬の腰巾着だったのによ。何だって協会に居座ってんだか」

「……わたらせ?」

 すると三原は、一瞬、しまったという顔をすると、「いや何でもない」とあからさまに目を逸らした。
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