艶女ぃLIFEは眠れない

メバ

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第19話:芦田幸太は日々を頑張る

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僕が騎士ヶ丘大学に就職して、1ヶ月が経った。

先輩達に教えてもらいながら必死に仕事に取り組んで入るけど、なかなか上手くはいかないみたい。

今のところ大きなミスをして怒られるような事はないけど、かと言ってなにか大きな成果を上げるようなことがあったわけでもない。

「まぁ新人なんてそんなものだし、そもそも大学で大きな成果を出す方が少ないんだ」
とは、小林課長の弁。

この1ヶ月で分かったことがある。

初めは雰囲気が悪いかもしれないと思っていた教務課だけど、全然そんなことはなかった。

松本さんは時々嫌味のようなことを言うし、高橋係長と2人で面と向かって小林課長に文句を言うこともある。
だけど、だからといって仲が悪いってわけでもなさそうだった。

この地方創生学部をもっと良いものにしたいってみんなが思っているからこそ、言いたいことを言い合っているように僕には思えたんだ。

「一番立場が下のアッシーでなく、一番偉い私に文句が集中する方が、組織としては正常だ」
と、小林課長は笑いながら言っていた。

ちなみに最近では、小林課長だけでなく高橋係長や松本さんまでもが、谷山学部長の名付けたあだ名で僕を呼ぶようになっている。

まぁ、別にいいんだけど・・・

「ねぇアッシー、この授業って受けないといけいないの?」
「あっ、はい!えっと・・・そ、それは必修科目なので、受けないといけないですね」

「マジかよぉ。この担当の先生、厳しいって噂なのに・・・」
「そ、それは頑張ってくださいとしか言えないです・・・」

「はぁ。まっ、仕方ねぇか。アッシー、ありがとね~」
突然やって来た男子学生が、来たときと同じく颯爽と立ち去ろうとしていた。

課のみんなが僕をアッシーって呼んでいるのを聞いた何人かの学生までもが、僕をアッシーって呼ぶようになっていた。

「ちょっとあなた、敬語くらい使いなさいよ」
「はぁ~い。松本さん、可愛いのに厳しいなぁ」

「年上に敬語使うのは当たり前。それに可愛いのは分かってるから。それより次の授業に遅れるわよ」
「はいはぁ~い。アッシー、ありがとうございました~」

松本さんから注意を受けたその男子学生は、改めて僕に先程よりは丁寧にお礼を言って、部屋を出ていった。

松本さん、アッシーって呼び方は注意しないんですね。
っていうか、自分で可愛いって言うのも凄いな。

「あ、授業頑張ってください」
僕は既に部屋から居なくなった男子学生に、小声で返して席へと戻った。

そんな感じで、学生にアッシー呼ばわりされながら、僕は日々、なんとか仕事をこなしている。

こなせてる、と思いたい。

初めての仕事で慣れない事ばかりだから、まだ高橋係長や松本さんには迷惑かけてばかりなんだ。

だから帰ったら、疲れてグッスリ。
と、言いたいところだけど・・・

そんなことがあるはずもなく。

艶女ぃLIFEアパート』に帰ると、確実と言っていい程誰かから雑用を頼まれるんだ。

津屋さんからは『あで~じょ』の買い出しを頼まれる。僕が『艶女ぃLIFEアパート』に帰る頃には津屋さんは『あで~じょ』に出ているから、僕はお店まで買い出しした物を運ぶんだ。
そうするとだいたい、そのままそこでご飯をご馳走になるからありがたいんだけどね。
それに、そのお陰で家賃もだいぶお安いから、文句を言えるはずもないんだけど。

静海さんは相変わらず、新しく買ったAV機器の取り付けや操作で僕を呼びつけた。
もういい加減自分でやって欲しいとも思うけど、そこで静海さんから聞く仕事の話がためになるのも事実なわけで。

僕と話すことに抵抗が無くなった吉良さんも、最近ではよく片付けや荷物持ちに僕を駆り出すようになった。なかなか癖の強い『艶女ぃLIFEアパート』の住人のなかで、比較的常識人な吉良さんとの時間は、意外と癒やしのひと時だったりする。
まぁ、どちらかというとお母さんと一緒にいる感覚なんだけど。

酒谷さんは相変わらず、僕を煙草に誘ってくる。
そこでのタバコミュニケーションが、谷山学部長との会話にも役立っているから、酒谷さんには感謝している。
時々、お金貸してくれってうるさいけど。

愛島さんは・・・・
もう。あの人何者なの?
特に僕に雑用を頼むことはないけど、いつも『添い寝して~』って迫ってくる。
しかも時々、凄く綺麗な格好でそんなことするもんだから、こっちも色々と眠れなくなっちゃう。

そんなこんなで、昼は大学で仕事、夜は『艶女ぃLIFEアパート』で雑用をやっている僕は、なかなかグッスリと眠れない日々を過ごしている。
ほとんどは、愛島さんのせいなんだけどね。

そんな僕だけど、最近どうにも気になることがある。

寺垣さんのことなんだ。

初めの頃は、朝のバスで会ったら近くに来て挨拶をしてきてくれてたんだ。
もちろん、僕に、っていうよりも静海さんにだけどね。

だけど最近は、それも無くなった。
ある日から僕達の方をおどおどした目で見るようになっていたし、少し前からはバスの時間も変えているみたいだった。

僕達の乗ったバスの後だと仕事に遅れるはずだから、寺垣さんはきっとそれよりも早いバスに乗っているんだと思う。
まるで、僕らを避けているみたいだった。

そんな寺垣さんが気になりはするけど、第一印象が最悪だった彼に、僕が何かをしてもきっと意味がないような気がしてたんだ。
寺垣さん、僕のこと嫌っているみたいだし。

それでもなんとなく寺垣さんが気になっていた僕に、ある日の昼休み、寺垣さんと同じく同期の美作さんから職場のメールにメッセージが届いた。

『最近寺垣君の元気がないみたい。よかったら、同期3人で飲みませんか?』
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