守銭奴転生者は【貯蓄】スキルで無双でもスローライフでもできるはずなのに、巻き込まれ勇者に巻き込まれる

メバ

文字の大きさ
8 / 39
守銭奴、転生する

第7話:この世界について

しおりを挟む
「へぇ。キンジは記憶喪失なのか」
ジョセフがそう言って、俺を憐れむような目で見ていた。

俺達は、レッドベアのいた洞窟を抜け出し、ジョセフの言う王都に向けて森の中を進んでいた。

ジョセフの野郎、なんとなくで王都の場所が分かるんだとさ。
勇者になった途端、行きたい場所の方向が分かるようになったって言ってたから、恐らくこれも勇者の力なんだろうな。

ちなみに俺は、記憶喪失ってことにした。

流石に転生してきたとは言えなかった。
こいつをそこまで信用する必要もないからな。

森の中を進む道すがら、俺はこの世界の事を色々とジョセフに聞いた。

大体のことをまとめると、こんな感じらしい。

1つ、職業は一生変わることはない。
これは、絶対なんだとさ。だから俺の職業が【勇者の奴隷】になった事自体、ジョセフにとってはかなりの驚きだったらしい。

あぁ、あと何故か、勇者だけは後天的に変わるんだとさ。
ジョセフの前の職業が何だったかだけは、絶対に教えてくれなかった。
まぁ多分、【役立たず】とかそんなんだったんだろうな。


1つ、スキルは1人につき1つってのが原則らしい。
まぁ、俺みたいに派生スキルが生まれることも、時々あるらしいがな。
ちなみに、俺のスキルは【攻撃力増加】ってことになった。
ジョセフがそう勘違いしたから、否定していないだけなんだけどな。


1つ、この世界に名前はないらしい。
まぁよく考えたら、俺がいた所だって、地球って星の名前しか無かったもんな。


とまぁ、ジョセフから聞き出せたのはこれくらいだった。

はぁ、役に立たねえ。

どうやらジョセフは、小さな村に住んでいたらしい。

そこで突然勇者になっちまったから、こうやって魔王を倒す旅に出されたんだとさ。

なんつーか、この世界も最難だな。よりにもよって、こんな奴が勇者だとさ。
もしこの世界に神ってやつがいるんなら、頭がおかしいとしか思えないな。

「ちょっとキンジ!それは失礼じゃないか!?」
ジョセフが非難がましい目を俺に向けていた。

「何がだよ」
「いや、キンジさっきからブツブツと、僕の悪口言っているじゃないか!」

あぁ、声に出ちまってたらしい。

「それより、王都ってのはまだなのか?」
「キンジ、僕の言っていること、聞こえてるのかい!?」

そういきりたつジョセフを無視して俺が見つめ返していると、何かを諦めたようにため息をつきながら足元の小石を蹴ったジョセフは、先の方を見つめた。

「フゴッ!?」
ジョセフの蹴った小石の飛んだ先でそんな声が聞えた気がしたが、それに気付かないジョセフは口を開いた。

「多分、もうすぐ森を抜けるはずだよ。そうしたら、そこまで時間はかからないはずさ」

その言葉の通り、少し進むと森が終わり、整備された街道が姿を現した。

「おー、ジョセフの言った通りだったな。流石は勇者―――」

俺が伸びをしながらそう言っていると、

「うわぁーーっ!!」

街道の先から、そんな声が聞こえてきた。

「あっ!人がボアに襲われてる!」
ジョセフが大声をあげた。

俺が踵を返してその場を立ち去ろうとすると、ジョセフが俺の腕を掴んだ。

「助けなきゃ!」
「いや、なんで俺が・・・」

「いいから!行こう!」
「行きたきゃお前だけで行けよ!俺は自分の命のほうが大事なんだよ!他人がどうなろうと、知ったこっちゃない!」

「・・・・あぁ、もう!わかったよ!僕だけで行くよ!!」
ジョセフはそう叫んで、走り去っていった。

バカバカしい。
なんで自分の危険を顧みず、他人を助けなきゃならない?

俺は、その場に腰掛けて、ジョセフの背中を見つめていた。

あいつも物好きなやつだ。
流石は勇者に選ばれるだけはあるってか?

でもまぁ、あのイノシシの1体くらいならあいつでもどうにか・・・

って、3体いるじゃねーか。
っていうか1体、頭にタンコブできてんな。
もしかして、ジョセフの蹴った石が、あのボアに当ったのか?
それでボア達が暴走を?

なんだよ。完全にジョセフのせいじゃねーか。

ここは、あいつに自分のケツを拭かせよう。
うん。そうしよう。
まぁ、あいつのスキルなら死ぬことは・・・

「ぎゃぁーーーっ!!助けてくれーーっ!!」

って早速ピンチじゃねーかよ!!
あいつ、弱いくせに出しゃばってんじゃねーよっ!!

(主人が寿命以外で死んだ場合、奴隷は自動的に死を迎えます)

あー、はいはい!わざわざありがとうございますねっ!!

俺は脳内に響く声に悪態をつきながら、立ち上がった。

もし助けられたら、あいつ絶対にぶっ飛ばす。

俺は走りながらジョセフの爽やかな笑顔が歪むのを想像しながら、ジョセフへとつに進むボアの前に立ちはだかった。

「キ、キンジ!!」

歓喜の色が籠もったジョセフの声を無視して、俺はボアの突進を受け止めた。

ボアは渾身の一撃を軽々と止められたことに動揺し、その場にただ突っ立っていた。

「うわぁっーー!」

直後に背後から聞こえるジョセフの叫びに振り向くと、残りの2体がジョセフへと襲いかかっていた。

俺はすぐにその場を離れ、ジョセフに襲いかかっているボアの背を殴りつけながら、スキルを発動させた。

【返済】っ!!

ちっ、やっぱり使えない。

やはりそういうことか。この【返済】、攻撃してきた相手にしか返せないのかよ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

処理中です...