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守銭奴、勇者に巻き込まれる

第32話:村へ到着してみると

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「はぁ。ジョセフのせいで、クソ面倒くせぇ依頼受けることになっちまったじゃねえか」

結局特別依頼を受けることになった俺達は、襲われた村へと向かう馬車に乗せられている。

村までの道中があまりにも暇だったので、俺はジョーイをいびることにした。

「・・・・・・・」

なんだよ。無視かよ。
さっきまで『村を救うんだ!』とかはっちゃけてたくせに、俺の言葉も耳に届かない程に何やら1人考え込むように黙りやがって。

「キンジ、ミーシア。すまない」

俺が黙ったままのジョーイを睨んでいると、突然ジョーイは小さく、そう呟いた。

「ジョセフ様、何を謝ることがあるのですか。勇者様ならば人助けは当たり前―――」
「ほんどだよ。どんなバケモンが出てくるかもわかんねぇ、しかもそれほどおいしくもない稼げない依頼を、ただ勇者のパーティだからって受けることになるなんてな」

「キンジ!そこまで言うことはないじゃないか!?」
ジョーイへと嫌味を言う俺に、ミーシアが食って掛かってきた。

顔が近い。
あ、いい匂いする。

「違うんだ・・・」
しかしミーシアの勢いは、ジョーイの消え入りそうな声によって止められた。

「なんだよ。何が違うってんだよ?」
「それは・・・」

俺の言葉に、ジョーイは暗い顔で言い淀んでいた。

「・・・・すまない、なんでもない。それより、。2人とも、油断はしないでくれ」
「いやジョーイ、お前何言ってんだよ。そもそもまだ村にも着いてねぇのに、終わりじゃないなんて当たり前――――うぉっ」

俺がジョーイに言い返していると馬車が止まり、俺は思わず声を上げた。

「着いたぞ!」

外からそう声が聞こえてくる。
何やら騒がしそうだが、どうやら襲われた村に到着したようだ。

「はぁ。とにかく、俺は危険なことをするつもりはないからな。
村を救いたきゃ、ジョーイだけで―――」
そう言いながら馬車を降りた俺は、言葉わ止めた。

どうやら、この村にもう救いの手は必要無さそうだ。


名もなき村

50人程度しか住んでいない、小さな集落と言った方が適切なほどのこの小さな村には、名前などないらしい。

どうやらこういう村はこの国にたくさんあるらしく、村の判別には村長の名を使うらしい。

『ラウソンの村』と呼ばれるこの村は、現村長がラウソンと言う名で、村長が代われば呼び名も変わる。

しかしどうやら、この村が次の名で呼ばれることは無さそうだ。

俺は目の前で無惨に焦土と化した村だった焼け野原を見つめながら、そんなことを考えていた。

しかしすげぇな。一体何をしたら、村一つがこんなことになるんだよ。
村を襲った奴は本物のバケモンらしい。

こりゃぁ、なおさら犯人探しなんてやるわけにはいかないな。
こんなことする奴となんて、会いたくもねぇ。

「な、なんてことだ・・・・」
「・・・・酷い」

俺に遅れて馬車を降りたジョーイとミーシアは、所々まだ煙の上がる荒れ果てた村を見つめて呆然としていた。

よしよし。
これで襲撃犯の怖さは分かっただろう。

周りの冒険者共も、この惨状にビビり始めている。
よし。このまま帰る方向で行きましょう。

「こんな酷いことをするなんて!犯人め、許せないぞっ!!この僕が必ず、犯人を捕まえてみせるっ!!」

俺の願いも虚しく、ジョーイが高らかに叫んでいた。

「そ、そうだな。こんな事をする奴を野放しには出来ない」
「だ、だな」
「こんな事する奴、生かしちゃおけねぇ!」
「そうだっ!俺達で、この村をこんなにした奴をぶっ殺してやるぞ!」

「「「うぉーーーーっ!!」」」

ジョーイ勇者の言葉に湧き立った冒険者共は、段々とそれまで抱いていた恐怖心を克服し、口々に言い合って叫び声を上げていた。

いや。こいつら馬鹿なの?
1つの村を焼き払うような奴だぞ?
いや、1人かは分かんねぇけど。

でも複数いた方が厄介だけども。

いずれにせよ、こんな事を平然とやるような奴、危ないに決まっている。
それなのにどうしてこうもやる気になれる?

いくら人が殺されてるからって、他人じゃねぇか。

お前らがそれほど怒る必要があるか?

俺は黒焦げに焼けた死体を見つめながら、鼻につく肉の焼けた臭いに不快感を感じつつ、そんなことを考えていた。

「っ!?」

その時、突然俺の頭が割れるほどに痛んだ。
それと同時に、俺の心から不思議な感覚が襲ってきた。

(ニクイ。ハンニンガニクイ)

何故俺がそんなことを思う?
別に殺された奴なんて知らない。
憎む必要すらない。いや、興味がない。
俺に危害が及ばないなら、そんなやつ関係ない。

(ニクイ。ハンニンガニクイ)

「クソっ!なんなんだよこれっ!!」

「キンジ、どうかしたのか?」
突然叫んだ俺に心配そうにそう声をかけてくるミーシア。

その手が俺の肩に触れた瞬間、俺の中から湧き上がっていた感情が爆発した。

「触んな!魔族がっ!!」
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