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第一章
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高等部二年生の平凡な男子である僕――飛島春刻――は、学園中の誰もが認める清純系の美少女、日口美鈴に恋い焦がれていた。僕にとって彼女は初恋の女の子であり、高等部に入ってからもその気持ちは変わらなかった。
僕と美鈴はこの世界に生を受けて以来、同じ住宅街に住んでいる。偶然にも両親同士に親交があったこともあり、僕と彼女は物心がついた頃から互いを知る幼馴染だったのだ。
幼少期にはよく一緒に遊んでいたけれど、成長とともに疎遠になり、中等部に上がる頃には互いの家を行き来することもなくなっていた。今では道でばったりあっても、ぎこちなく挨拶するだけ。
会うたびににこやかな笑顔で挨拶をしてくれる彼女に、本心を悟られないようにポーカーフェイスで応対する僕。
傍から見れば滑稽な姿に見えるだろうが、このときの僕は同じ私立の一貫校に通う彼女のまぶしさに視界を奪われ、何も見えてなかったのだ。
才色兼備の美鈴は高等部に進学して早々、頭角を現していた。進学して約一ヶ月が過ぎたある日、当時の副生徒会長から直々に請われ、生徒会の書紀に抜擢されたのだ。
今年二年生になった美鈴は副生徒会長の要職に就き、来年は会長に就任するのではないかと噂されている。
そんな学園一魅力的な彼女は言わずもがな男子に人気があった。生徒会には成績優秀なイケメン男子が何人も在籍しており、日常的に彼女に秋波を送っているし、学園生が集うSNSでは密かにファンクラブが出来ているほどだ。
対する僕は、オタクのたまり場となっている文芸部で、誰に見せるわけでもないライトノベルを執筆するという、わびしい日々を送っている。
執筆中の小説は平凡な少年が異世界に転生してヒロインの美少女とイチャイチャする物語。要するに架空の世界で日々の鬱憤を発散しているというわけだ。
そんなわけで僕は才色兼備の幼馴染の少女に密かに恋情を抱きながらもその気持を伝えることなく、だだのオタク学生という虚しいポジションを甘受している。
もちろん、僕もこのままでいいとは思っていない。
しかし、もう美鈴と僕では学園内におけるポジションに雲泥の差があった。
ヒエラルキーの山頂に登頂しつつある彼女と、麓のあたりを徘徊しているだけの僕とでは絶対に釣り合わない。
僕なんかが馴れ馴れしく会話をしていたら、周囲からのブーイングは不可避だろう。
名門校の学園生たちにとって僕はモブキャラの一人に過ぎないのだから。
僕は自分の分をわきまえている。過去の栄光に甘えて馴れ馴れしく接することはない。
大勢の平凡な男と同じように、燦然と輝く彼女を遠くから鑑賞するだけ。そんな謙虚な態度を学園を卒業するまで続けるしかないのだ。
ところが、諦観していた僕に転機が訪れた。それは高等部二年生の晩秋、冷たい風が頬を撫で、街路樹の葉が落ち始める季節のことだった。
早朝の下駄箱に入っていた便箋。情報通信端末が普及したこの時代に手書きで書かれた古風な手紙は、大事な話があるから放課後に生徒会議室に来てほしいとの内容だけが短く記されていた。
意中の女の子からの唐突な呼び出しに僕はすぐさま飛びついた
これは神様が僕に与えてくれた好機。そう安直に信じた僕は、なんの警戒心も抱かずに、放課後に約束の場所に赴くことになる。
このときの僕は何も知らなかった。この誘いが美鈴との恋を成就させるきっかけではなく、平凡な人生を踏み外すきっかけであることを。
そして、平凡な人生を踏み外した先には、多くの女の子たちと出会いと、苦しくも充実した日々が待ち受けていた。
僕と美鈴はこの世界に生を受けて以来、同じ住宅街に住んでいる。偶然にも両親同士に親交があったこともあり、僕と彼女は物心がついた頃から互いを知る幼馴染だったのだ。
幼少期にはよく一緒に遊んでいたけれど、成長とともに疎遠になり、中等部に上がる頃には互いの家を行き来することもなくなっていた。今では道でばったりあっても、ぎこちなく挨拶するだけ。
会うたびににこやかな笑顔で挨拶をしてくれる彼女に、本心を悟られないようにポーカーフェイスで応対する僕。
傍から見れば滑稽な姿に見えるだろうが、このときの僕は同じ私立の一貫校に通う彼女のまぶしさに視界を奪われ、何も見えてなかったのだ。
才色兼備の美鈴は高等部に進学して早々、頭角を現していた。進学して約一ヶ月が過ぎたある日、当時の副生徒会長から直々に請われ、生徒会の書紀に抜擢されたのだ。
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対する僕は、オタクのたまり場となっている文芸部で、誰に見せるわけでもないライトノベルを執筆するという、わびしい日々を送っている。
執筆中の小説は平凡な少年が異世界に転生してヒロインの美少女とイチャイチャする物語。要するに架空の世界で日々の鬱憤を発散しているというわけだ。
そんなわけで僕は才色兼備の幼馴染の少女に密かに恋情を抱きながらもその気持を伝えることなく、だだのオタク学生という虚しいポジションを甘受している。
もちろん、僕もこのままでいいとは思っていない。
しかし、もう美鈴と僕では学園内におけるポジションに雲泥の差があった。
ヒエラルキーの山頂に登頂しつつある彼女と、麓のあたりを徘徊しているだけの僕とでは絶対に釣り合わない。
僕なんかが馴れ馴れしく会話をしていたら、周囲からのブーイングは不可避だろう。
名門校の学園生たちにとって僕はモブキャラの一人に過ぎないのだから。
僕は自分の分をわきまえている。過去の栄光に甘えて馴れ馴れしく接することはない。
大勢の平凡な男と同じように、燦然と輝く彼女を遠くから鑑賞するだけ。そんな謙虚な態度を学園を卒業するまで続けるしかないのだ。
ところが、諦観していた僕に転機が訪れた。それは高等部二年生の晩秋、冷たい風が頬を撫で、街路樹の葉が落ち始める季節のことだった。
早朝の下駄箱に入っていた便箋。情報通信端末が普及したこの時代に手書きで書かれた古風な手紙は、大事な話があるから放課後に生徒会議室に来てほしいとの内容だけが短く記されていた。
意中の女の子からの唐突な呼び出しに僕はすぐさま飛びついた
これは神様が僕に与えてくれた好機。そう安直に信じた僕は、なんの警戒心も抱かずに、放課後に約束の場所に赴くことになる。
このときの僕は何も知らなかった。この誘いが美鈴との恋を成就させるきっかけではなく、平凡な人生を踏み外すきっかけであることを。
そして、平凡な人生を踏み外した先には、多くの女の子たちと出会いと、苦しくも充実した日々が待ち受けていた。
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