聖女として召喚されたものの、デブなので嫌われて処刑されそうになったので

千代乃

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9.出立前

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朝食後、カルドネは他の修道士たちと移転魔方陣の準備をすると言って退室した。私はその間にまたメイド達によって身を清められ、身なりを整えられた。

その後は呼ばれるまで特にすることもないようなので、大人しく部屋で待機していた。窓辺に立ち、そこから見える外の世界を眺めていた。城の外観も、庭も、城壁も、人々の服装も珍しく、関わらず眺めるだけならいつまでもそうしていられそうだった。

「王都へ行くのか…」

口にしても現実味がない。しかし、現実味があろうとなかろうと、ことはどんどん進んでゆくのだ。

「ケイト、散歩に出てもいいかしら?」


ケイトを振り向くと、少し困ったような顔をして、

「大変申し訳ありませんが、準備が整い次第すぐに移動することになりますので、もう少しこちらでお待ち頂けないでしょうか?」

「少しだけよ、昨日の湖を見ておきたいの。もう、ここへはそう簡単にはこれなさそうだから」

「…承知しました。確認してまいりますので、少しお待ちいただけますか?」

「分かったわ」

「それでは、何かありましたらそちらのベルを鳴らして下さい。近くの者が参ります」

頷くとケイトは退室した。

さてと。

私はケイトが部屋から出るのを見送り、ゆっくり三十秒数えてドアに向かった。

今朝の聖女講義で気持ちが固まったのだが、この土地のあの湖で、長い間召喚の儀式がされてきたということは、あの湖が異界へ繋がる鍵なのだろう。もしかしたら、時期も重要な可能性がある。一年のうちで、今の時期がもっとも異界へ接続しやすくなる…とか。

元の世界に戻りたい、という積極的な気持ちよりも、こんな知らない世界にはいたくないという消極的な気持ちの方が強いのかもしれない。ひょっとしたら、必要とされるこちらの世界での方が楽に暮らせるのかも。しかし、これまでに舐めた辛酸を、飲まされた煮え湯を無駄にしない為には元の世界に戻るほかない。復讐するには、私自身があの世界で幸せにならねばならないのだ…

ドアを開けると、騎士が二人ドアの前に立っている。二人とも顔が良く、ガタイもいい。ドアから出て来た私を見て、当然聞いてくる。

「どうされましたか?」

「散歩に行きます」

宣言して、すたすた私は二人の間を通り過ぎた。

「聖女様…ケイトがすぐに戻りますので、もう少しお待ちいただけませんか?」

「すぐに戻るから大丈夫よ」

二人の騎士の立場からすれば、この勝手な行動は全く大丈夫ではないとは分かっているが、こちらの都合が優先だ。僅かでも戻れる可能性があるならば、逃すわけにはいかない。

思った通り、二人とも実力行使で私を止めることはしなかった。

片方の騎士がついてきて、もう片方は私が外に出てから追いかけてきた。多分、部屋を開けることを近くの使用人に伝えたのだろう。

「私が現れた湖まではどう行けばいいのかしら?」
騎士に聞く。
湖から城までの経路は、気絶している状態で運ばれたので分からない。

「ここから馬で四十分ほどあります。散歩では難しいかと。ところでお庭の噴水はご覧になりましたか?3代目の聖女様が自らデザインされた素晴らしいものですよ」

私を外に出すまいと、必死に話題を逸らそうとしているが、それに乗る気はない。

「それじゃ、湖まで連れて行ってくれるかしら」

我ながら無茶言っているが、ここで我を通さなくて、いつ通すというのだ。
正直、いまだに現実味がない。大がかりなドッキリを仕掛けられているか、夢を見ていると思いたいのだ。しかしだんだん、ここを離れたら二度と元の世界にもどれないような気がしてきて気持ちが焦ってきていた。

そこへ、

「聖女様、どうなさいましたか?」

と声をかけられる。声の主を見ると、トートニス家の次男だった。歳は確か16歳で、背丈は私より低いが、鍛えているのか体つきはよい。こげ茶の肩までの髪を後ろでくくっている。名前は…

「アレン殿」

ホッとしたように騎士が名を呼ぶ。
アレンの後ろには、長女カレンがいた。


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