デイバイン・ランサー

海上

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プロローグ

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ブーーー
辺りにブザーの音が鳴り響いた。
「皆様、お越しいただいて誠にありがとうございます。役者の準備が終えるまで少々幕間をお楽しみ下さい」
女のアナウンサーがそう言うと目の前にBARのようなものとスーツ姿の男が二人出てきた。 一人は20歳位の若い男だがもう一人は50近くの老けた男だった。
「富は海水のようなものだ。多く飲めば飲むほど渇きをおぼえる」
「ほぉアルトゥル・ショーペンハウアーか...」
「彼は『苦』から解放されたかった。そのためにまずは芸術を考えた。そこではプラントがいうイデアつまり完全な世界を垣間見ようとした。」
「だが結果はダメだった。そうだろ?彼は気づいたんだ、芸術は所詮一時の解放でしかないと」
「そうだ、そして次は同情を考えた。同情とは他者の中に自分とおなじ『苦』を見いだし、他者を理解しようとすることで『愛』が生まれると思ったのだ。」
「しかし同情や『愛』だけでは、解放にはまだ不十分だと悟った彼は最後に『禁欲』を考えた、あってるよな?『世界意思』は人間に対しても、生きようと盲目的に作用する、その意志の構造を否定する事こそが『禁欲』だな。」
「そうだ、世界で生きようとする執着がなくなれば『苦』もなくなると考えたんだ。仏教とおなじさ」
「『諦念』を取り入れたのか...」
「そうだ、そして厭世主義となり『実存主義』の先駆けと鳴ったんだが...まぁこんな話しなんてどうでもいいんだ。俺が言いたいのはその『苦』を解放す「幕間の途中ですが、準備ができたのでそちらをどうぞ」
ブーーー
またしてもブザーの音が鳴り響いた、うるさいのに瞼が堕ちてきてしまう、意識が遠退いて来た。幕が開けかけた時既に彼は眠ってしまっていた。そして目が覚める。
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