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09:取引。
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宿題も明日の準備も終わらせて寝る前にいつもよりも落ち着いた気分で『虹の王冠』の動画を見ていると黒宮さんからメッセージが届いた。
『明日スキルボールを買いたい』
『魔法全部ね』
「えぇ……?」
魔法全部って……どれくらいあるのか分かっているのか?
あまり多く買うって言われても生涯支払えない額まで膨れ上がったらそれはどうしようもなくなる。
そこは俺が止めないといけない気がする。
幸いメッセージでのやり取りだから言いたいことは言えそうだ。
『十個以上ありますよ。少しずつ増やしたのではダメなのですか?』
まあ一先ず三つを支払ってほしい感はある。
俺がメッセージを送ればすぐにメッセージが返ってきた。打つのはや。
『一気にほしい』
『何でも言うこと聞くから』
「な、なんでも!?」
家の中だというのに思わず大きな声が出てしまった。
家族に反応がないことをしばらく確かめてから何とメッセージを返そうか考える。
最初に思いついたのはセックスさせてほしいというものだが……それで三千万円以上済ませてきそう。高級すぎだろ。
でもなぁ……黒宮さんに求めることってお金かエロ以外何もないからな……。
「ん?」
黒宮さんから追加でメッセージが送られてきたのかと思ったが違った。次は月下さんからメッセージが来ていた。
『何かあたしに似合うスキルない?』
「えぇ……」
お前こそ何でスキルをまた買おうとしているんだよ! お前はもっと裕福になってから出直してこい! 家族が大切だろ!
黒宮さんと月下さんのメッセージをどう返せばいいのかマジで悩む。まず軽いのは月下さんだな。お金云々とかを抜きにして考えよう。
今月下さんは超打撃、硬化、超再生、アイテムボックスの四つを持っている。月下さんは魔力が低いから魔法系統のスキルはない。
……いや、なくね? これで十分でしょ。身体能力を強化するスキルもあるにはあるけど……これ以上に求める必要はない。
『月下さんにはそれで十分だと思います。変に追加しても無駄になると思います』
お金的にもこれで完璧な回答だと思う。
そして月下さんからもすぐにメッセージが返ってきた。打つのはや、
『分かった! これで頑張ってみる!』
軽い返信をした後、後回しにしたボスをどうするか頭を悩ませる。
何でも言うことを聞くというメッセージには何を返信するのが正しいんだ!? ド直球に性欲をぶつける相手になってほしいとか言うのも気持ち悪いしなぁ。
でもそれで何も言うことを聞かせずにスキルボールが渡るのは損している気分だ。やっぱりお金が欲しいんだ。
くそっ、チャンスなのにヘタレを出しているぞ!? いや待て。ド直球に言って月下さんや榊さんにバラされるかもしれないからな、うん。
『今のところ思いつかないので後日でもいいですか?』
とりあえずこう返信して何とかこの件が終わらないか祈っておく。
『無理。明日すぐにほしい』
『考えろ』
「え、えぇー……」
俺、売る側だよな? それなのに考えろって言われてる。えぇ……?
どうすれば正解なのか分からないままうーんうーんと悩んでいると黒宮さんから再びメッセージが送られてきた。
『何も思いつかないなら私が仕掛けていくから』
『それでスキルボールを売って』
「し、仕掛ける……!?」
な、なんだ!? ちょっと恐怖を感じるんだけど……! 俺は何をされるんだ……!?
でも黒宮さんと言えばエロが先に来るような感じだからもしかしたら……もしかしてかもしれない!
『分かりました』
必死なような気がするなぁ。ユニークスキルとか人気配信者とかそういう込める想いが黒宮さんにあるのかもしれない。
俺も虹の王冠みたいなグループに入って無双したーい。ハァ、ビジュがダメそうだから無理か。
☆
放課後は違うが登校のタイミングはいつも通りの時間に登校して自分の席に着く。
今日は虹の王冠の動画を見る気分ではなかったから肘をついて窓の外をボーっと見つめる。
「おはよ、天星くん」
俺に挨拶する人がいるわけがないと思ったがこのクラスで天星は俺しかいない。しかもこの声は聞き覚えがあると思い、おもむろに顔を向ける。
「……おはようございます、月下さん」
俺の隣には月下さんが立っていた。
「今日もダンジョンに行ける?」
「行けますよ。いつもの四人でですか?」
「あたしはそうしたいなーって思ってる!」
「分かりました」
「それよりさ、あたしってどんなユニークスキルが出ると思う?」
出ること前提ですか。まあ俺が出たんだから出るだろ。
「一撃必殺の拳とかですかね」
「それもいい! 天星くんは何か思い描いていたの?」
「いや……あー……思い描いていたのもあります。でもたぶんですけど、最終的に才能で変化すると思います」
「才能がなかったらユニークスキルが出ないってこと?」
「俺が出たんだから出ますよ」
「いやいや、天星くんは才能がある! だからそんなことは言わない」
「あ、はい。ありがとうございます」
何で月下さんに才能があるって言われてるんだろ……まあいいけど。
「おはー、みーこ、天星」
「おはよ! ユーくん」
「……おはようございます」
月下さんがいれば今度は榊さんまで俺の席に来た。
えっ、俺このままトップカーストグループに加入しちゃう感じですか? それはちょっとぉ……周りの視線が気になるのでぇ……。
「才能って何の話?」
「ユニークスキルの話をしてた」
「あー、そういう。考えるだけでワクワクするねー」
「ね!」
ユニークスキルについては知らずに手に入れたからそういうワクワクは分からないままだな。
でも俺が出せないスキルを覚えたらまた別のユニークスキルをゲットすることができるのだろうか。まあ今のスキルだけでもかなり多いから宝の持ち腐れになりそうだけど。
ユニークスキルについて月下さんと榊さんの話を聞きつつ言葉を投げかけられたら答えるみたいなことをしていると、最後に黒宮さんが登校してきた。
登校してきた黒宮さんは一直線に俺に向かってきたから少しびびった。
「おはよう、陽守~」
黒宮さんが甘ったるい声で俺の下の名前を言うものだから鳥肌が立った。
「お、おはようございます」
「ございますって、他人行儀じゃん。おはようって言いなよ」
黒宮さんは俺の机に座り女子高生のナマ足を存分に見せてくる。
「な、何してんの……?」
困惑しているのは俺だけではなく月下さんも同じだった。
「なにって。なにもしてないけど?」
「いやいやいや! そんなことないから! 絶対に普通じゃないから」
「これが普通だって。ねー、陽守~。今日もカッコいいね~」
ナマ足を見てドキドキとしていたがカッコいいという言葉でスッと現実に戻される。
俺は自分がカッコいいとは思っていないからそれが嘘だとすぐに分かるし現実に引き戻されるとてもいい言葉だ。
……もしかして、これが昨日メッセージで来ていたあれなのか?
「こ、これが仕掛けると言ってたやつですか?」
「そ。モテない陰キャにはお金よりも色仕掛けの方が好きっしょ?」
まあそれは初日に気づかれてしまっているから反論できない。
「何の話かな?」
俺と黒宮さんだけしか分からない会話なため榊さんが聞いてくる。
「私が昨日買ったものを全種買うためにお金の代わりにこうしてるわけ」
「全種って、本気?」
「可能性があるのなら私は何だってやるし」
黒宮さんは本当に必死のようだな……。
「陰キャには体験できないようなことを体験させたげる」
そんな言葉を貞操観念が緩そうなギャルから言われると……思わず唾を飲み込んでしまう。
「納得してくれるのなら月三百万円を支払ったことにして」
「さ、さんびゃくぅ!?」
黒宮さんの申し出に月下さんは驚いているが……いや、別に高くはないか。一ヶ月一個スキルボールを渡して黒宮さんからえ……ッチなことも体験できるんだろ? 安いくらいか。
「まあ、分かりました」
「分かった!? すごく目先のことしか考えてないじゃん大丈夫!?」
そう言われてもなぁ……スキルボールは余っていて損しなければどうでもいい感じがある。
「たぶん……大丈夫です」
「まー、みーゆは悪い子ではないから心配ないと思うよ」
「それはそうだけど……お金の方がいいでしょ」
「陰キャが納得したんだから外野のガヤはなし。これからよろしく、陽守」
「よ、よろしくお願いします……」
本当に大丈夫だよな……?
『明日スキルボールを買いたい』
『魔法全部ね』
「えぇ……?」
魔法全部って……どれくらいあるのか分かっているのか?
あまり多く買うって言われても生涯支払えない額まで膨れ上がったらそれはどうしようもなくなる。
そこは俺が止めないといけない気がする。
幸いメッセージでのやり取りだから言いたいことは言えそうだ。
『十個以上ありますよ。少しずつ増やしたのではダメなのですか?』
まあ一先ず三つを支払ってほしい感はある。
俺がメッセージを送ればすぐにメッセージが返ってきた。打つのはや。
『一気にほしい』
『何でも言うこと聞くから』
「な、なんでも!?」
家の中だというのに思わず大きな声が出てしまった。
家族に反応がないことをしばらく確かめてから何とメッセージを返そうか考える。
最初に思いついたのはセックスさせてほしいというものだが……それで三千万円以上済ませてきそう。高級すぎだろ。
でもなぁ……黒宮さんに求めることってお金かエロ以外何もないからな……。
「ん?」
黒宮さんから追加でメッセージが送られてきたのかと思ったが違った。次は月下さんからメッセージが来ていた。
『何かあたしに似合うスキルない?』
「えぇ……」
お前こそ何でスキルをまた買おうとしているんだよ! お前はもっと裕福になってから出直してこい! 家族が大切だろ!
黒宮さんと月下さんのメッセージをどう返せばいいのかマジで悩む。まず軽いのは月下さんだな。お金云々とかを抜きにして考えよう。
今月下さんは超打撃、硬化、超再生、アイテムボックスの四つを持っている。月下さんは魔力が低いから魔法系統のスキルはない。
……いや、なくね? これで十分でしょ。身体能力を強化するスキルもあるにはあるけど……これ以上に求める必要はない。
『月下さんにはそれで十分だと思います。変に追加しても無駄になると思います』
お金的にもこれで完璧な回答だと思う。
そして月下さんからもすぐにメッセージが返ってきた。打つのはや、
『分かった! これで頑張ってみる!』
軽い返信をした後、後回しにしたボスをどうするか頭を悩ませる。
何でも言うことを聞くというメッセージには何を返信するのが正しいんだ!? ド直球に性欲をぶつける相手になってほしいとか言うのも気持ち悪いしなぁ。
でもそれで何も言うことを聞かせずにスキルボールが渡るのは損している気分だ。やっぱりお金が欲しいんだ。
くそっ、チャンスなのにヘタレを出しているぞ!? いや待て。ド直球に言って月下さんや榊さんにバラされるかもしれないからな、うん。
『今のところ思いつかないので後日でもいいですか?』
とりあえずこう返信して何とかこの件が終わらないか祈っておく。
『無理。明日すぐにほしい』
『考えろ』
「え、えぇー……」
俺、売る側だよな? それなのに考えろって言われてる。えぇ……?
どうすれば正解なのか分からないままうーんうーんと悩んでいると黒宮さんから再びメッセージが送られてきた。
『何も思いつかないなら私が仕掛けていくから』
『それでスキルボールを売って』
「し、仕掛ける……!?」
な、なんだ!? ちょっと恐怖を感じるんだけど……! 俺は何をされるんだ……!?
でも黒宮さんと言えばエロが先に来るような感じだからもしかしたら……もしかしてかもしれない!
『分かりました』
必死なような気がするなぁ。ユニークスキルとか人気配信者とかそういう込める想いが黒宮さんにあるのかもしれない。
俺も虹の王冠みたいなグループに入って無双したーい。ハァ、ビジュがダメそうだから無理か。
☆
放課後は違うが登校のタイミングはいつも通りの時間に登校して自分の席に着く。
今日は虹の王冠の動画を見る気分ではなかったから肘をついて窓の外をボーっと見つめる。
「おはよ、天星くん」
俺に挨拶する人がいるわけがないと思ったがこのクラスで天星は俺しかいない。しかもこの声は聞き覚えがあると思い、おもむろに顔を向ける。
「……おはようございます、月下さん」
俺の隣には月下さんが立っていた。
「今日もダンジョンに行ける?」
「行けますよ。いつもの四人でですか?」
「あたしはそうしたいなーって思ってる!」
「分かりました」
「それよりさ、あたしってどんなユニークスキルが出ると思う?」
出ること前提ですか。まあ俺が出たんだから出るだろ。
「一撃必殺の拳とかですかね」
「それもいい! 天星くんは何か思い描いていたの?」
「いや……あー……思い描いていたのもあります。でもたぶんですけど、最終的に才能で変化すると思います」
「才能がなかったらユニークスキルが出ないってこと?」
「俺が出たんだから出ますよ」
「いやいや、天星くんは才能がある! だからそんなことは言わない」
「あ、はい。ありがとうございます」
何で月下さんに才能があるって言われてるんだろ……まあいいけど。
「おはー、みーこ、天星」
「おはよ! ユーくん」
「……おはようございます」
月下さんがいれば今度は榊さんまで俺の席に来た。
えっ、俺このままトップカーストグループに加入しちゃう感じですか? それはちょっとぉ……周りの視線が気になるのでぇ……。
「才能って何の話?」
「ユニークスキルの話をしてた」
「あー、そういう。考えるだけでワクワクするねー」
「ね!」
ユニークスキルについては知らずに手に入れたからそういうワクワクは分からないままだな。
でも俺が出せないスキルを覚えたらまた別のユニークスキルをゲットすることができるのだろうか。まあ今のスキルだけでもかなり多いから宝の持ち腐れになりそうだけど。
ユニークスキルについて月下さんと榊さんの話を聞きつつ言葉を投げかけられたら答えるみたいなことをしていると、最後に黒宮さんが登校してきた。
登校してきた黒宮さんは一直線に俺に向かってきたから少しびびった。
「おはよう、陽守~」
黒宮さんが甘ったるい声で俺の下の名前を言うものだから鳥肌が立った。
「お、おはようございます」
「ございますって、他人行儀じゃん。おはようって言いなよ」
黒宮さんは俺の机に座り女子高生のナマ足を存分に見せてくる。
「な、何してんの……?」
困惑しているのは俺だけではなく月下さんも同じだった。
「なにって。なにもしてないけど?」
「いやいやいや! そんなことないから! 絶対に普通じゃないから」
「これが普通だって。ねー、陽守~。今日もカッコいいね~」
ナマ足を見てドキドキとしていたがカッコいいという言葉でスッと現実に戻される。
俺は自分がカッコいいとは思っていないからそれが嘘だとすぐに分かるし現実に引き戻されるとてもいい言葉だ。
……もしかして、これが昨日メッセージで来ていたあれなのか?
「こ、これが仕掛けると言ってたやつですか?」
「そ。モテない陰キャにはお金よりも色仕掛けの方が好きっしょ?」
まあそれは初日に気づかれてしまっているから反論できない。
「何の話かな?」
俺と黒宮さんだけしか分からない会話なため榊さんが聞いてくる。
「私が昨日買ったものを全種買うためにお金の代わりにこうしてるわけ」
「全種って、本気?」
「可能性があるのなら私は何だってやるし」
黒宮さんは本当に必死のようだな……。
「陰キャには体験できないようなことを体験させたげる」
そんな言葉を貞操観念が緩そうなギャルから言われると……思わず唾を飲み込んでしまう。
「納得してくれるのなら月三百万円を支払ったことにして」
「さ、さんびゃくぅ!?」
黒宮さんの申し出に月下さんは驚いているが……いや、別に高くはないか。一ヶ月一個スキルボールを渡して黒宮さんからえ……ッチなことも体験できるんだろ? 安いくらいか。
「まあ、分かりました」
「分かった!? すごく目先のことしか考えてないじゃん大丈夫!?」
そう言われてもなぁ……スキルボールは余っていて損しなければどうでもいい感じがある。
「たぶん……大丈夫です」
「まー、みーゆは悪い子ではないから心配ないと思うよ」
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