H･I･M･E ーactressー

第20章 日常８：パーティー……とは？

８

　桜木くんの誤解が解けたと思ったら、急に元気になり始めた僕のお腹が、キュルっと鳴る。

　けっこうな音量で音楽が流れてるから、てっきり桜木くんには聞かれてないと思って安心してたのにさ……

　「もしかしてお腹空いてる？　あ、バイトだったから晩ご飯まだだっけ？」

　相原さんが余計なこと言うから、僕は耳まで赤くなってしまう。

　だって相原さんに聞こえたってことは、当然桜木くんにも聞こえたってことじゃん？
　別にさ、前にも聞かれたことあるし、今更恥ずかしがることもないんだろうけどさ、やっぱり好きな人には聞かれたくないってゆー僕の乙男心を、相原さんったら全然分かってないんだもん。
　僕困っちゃうよ。

でもさ、優しいから嫌いになれないんだよね。

　「リクエストあれば作るけど、何が良い？」
　「僕チャーハン食べたいです♪」

　この間相原さんが作ってくれたチャーハン、超美味しかったんだもん。
　だから桜木くんにも是非食べて貰いたいんだ♪

　あ、でもちょっと待って？

　「ねぇ、そう言えばお花がどうとか言ってなかった？」

　お誕生日プレゼントに花束を注文してあるって、確かバイト前に言ってたような気が……

　「やっべ、忘れてた！」

　やっぱり……

　「それどこのお花屋さん？　今から戻れば間に合いそう？」
　「いや、無理かも……。閉店時間とっくに過ぎてるし……」

　マジか……

　「どうするの？」
　「元々お袋の友達の店だから、ドタキャンしても謝れば済むけど、肝心なプレゼントがないとなると……」

　お花なんて興味なさそうな和人だから、プレゼントがお花じゃなくなるなら、それはそれで和人的にはラッキーなのかもだけど、さすがに手ぶらでは……って思う桜木くんの気持ちも分からないでもない。

　「あの、和人から欲しい物とか聞いたことありますか？」

　一緒に暮らしてるんだから、当然何か聞いてる筈！

　「さあな……。アイツ、あんまり言わないから。あ、でもくれるなら現金で……とは良く言ってるけどね」

　なーんてさ、思った僕が馬鹿だったよ……