わたしの愛した世界

伏織

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四章

4-6

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登りだした山は、見た目ほどきついものではなかった。日本では都内に住んでいたが、その頃に家族で何度か郊外の山に遊びに行った。休日に気軽に登れるあの山と比べても傾斜は緩いし、標高もさほど高くはない。ただなだらかで、横幅が広いというのが少々面倒な点だ。のんびり歩いていたら時間がかかりそうだ。


「ちょっと待って」


山に入って一時間ほどで、クロスに言われて足を止めた。クロスは鞄をゴソゴソと探りだした。だいぶ息も上がっており、私はそれを見て少し申し訳なくなった。最初は彼に合わせていたが、いつの間にか私が先を行くようになっていた。無理をさせてしまった。


「うーん、どこかな」

「何を探してるの?」

「靴だよ。底が厚くて丈夫なやつ。今、君が履いてるものは走りやすそうだけど、山のボコボコした道には向いてないよ。あまりにもスイスイ行っちゃうから大丈夫かなって思ってたけど、やっぱ心配だからね」

「ありがとう。ところで、今その鞄の中からガラスが割れるような音がしたけど?」

「あー、水かな」


水をガラス瓶に入れて鞄に入れるな。いくら魔法で鞄の容量を広くしているとはいえ、ガラスは危険だろう。だがクロスはそんなことは気にしていないようだ。むしろ魔法で元に戻せるからね、とでも思ってそうだ。……なら、いいか。

「ほれ」鞄からゴツゴツとした重そうな靴を取り出して、私に押し付けてきた。これは、たしかに丈夫そうだし山歩きには向いてそうだが、個人的にはもっと軽くて走りやすい靴のほうが好きだ。しかし山を歩く上では丈夫な方が怪我や足を滑らせる心配も少ないだろう。仕方ない。
私は靴を履き替えるために、近くの切り株に腰掛けた。


「あれ?この山って結構人が来るのかな」


よく考えてみれば、足元の道はしっかりと踏み固められて歩きやすい。切り株や板で道を補強していたりと、人の手が入っている。


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