わたしの愛した世界

伏織

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五章

5-14

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まあ、それで実際に彼は一人殺してしまったのだが。魔法という、無力な人には到底太刀打ちできない力で、一方的に殺戮を行うことができるのだ、彼は。生後から無意識に魔法を使うほどの申し子だ。いわゆる魔力というやつも、平均のそれより高いのだろう。

きっと、クロスはその気になれば何十人も、何百人も、何万人でも魔法で殺すことが可能なのだ。ありがたいことに、彼の性格上それを積極的に行うことはほとんど無い、というのが救いだ。


「初めて人を殺した」

「それは私もだよ」

「まあ、君は別にアイツのことを人として認識してなかったでしょ」


少し悔しいが、クロスの言葉が妙に腑に落ちた。確かに、私が殺したルークは愚か、前歯のことも逃げたやせっぽっちのことも、人間として見ていなかったかもしれない。感覚としては、自分と同類のタイプではないという感じだが。

ルークのような人間は嫌いだ。上辺で上手く綺麗な自分を演出して、周りの人間を都合よく手のひらで転がそうとする。似たような、しかもルーク以上に狡猾で恐ろしい女を知っている。
未だに彼女に対する怒り以上に、嘘であってくれという希望もなくはない。私を生んでくれた、血のつながった母親なのに、自分の娘にひどい仕打ちを平気で行えるような、心から悪党だなんて、認めるのが辛い。日本ではすでに死亡しているため確認はできないが、できることなら、母に直接聞きたかった。正直に話してくれるかは怪しいけれど。


「ちょっと手をつないでくれませんかね」

「なんだよ、素直過ぎて気持ち悪いよ」


クロスが伸ばしてきた手を握り、力を入れた。彼の手は冷たくて、氷のようだった。晩秋の風に吹かれている。手が冷えているのはそれだけのせいではなさそうだが、私は尻を持ち上げると、彼の肩に自分の方が触れる程に近付いた。それを拒まず、クロスは私の手を強く握りしめてきた。


「おい、痛いぞ」

「折れても治せるから、安心して」

「それ、安心できない」

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