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七章
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しおりを挟むその言葉にエリザは傷付いた。無理もない。魔法使いにもなり切れず、だからといって魔法使い以外の人間とも違う、中途半端な自分を全否定されたのだ。男性はエリザの母国で数年暮らしても、未だに心の中には魔法使いへの強い嫌悪感が残っていた。
しかし彼女は彼のプロポーズを受けた。自分の中途半端な魔力を、これから先一切使わずに封印すると決めたのだ。彼のために、彼との未来のために、自分が幸せになる為に。
そうして、彼女は母国を離れ、この国で男性と結婚し、一人娘を産んだ。目が大きくて、可愛らしい女の子。子供はすくすくと成長し、12年経ったある日、娘と夫が2人で旅に出ることになった。
この国の北にある、観光地へと遊びに行くという話だった。雪山ではスキーが出来る所があり、娘がやってみたいと言い出したのだ。夫が同行し、エリザは家に残った。ちょうど、夫の妹が妊娠中期で、義父母も亡くなっていたので、彼女が身の回りの世話をしていたのだ。
「お母さん、お土産期待しててね!」
出発のとき、娘はエリザに満面の笑みでそう言って、馬車に乗り込んだ。夫と共に手を振るその姿が、最後に見た姿だった。
「どうやら、馬車が途中で行方不明になったらしいの」
テーブルの上で組んだエリザの両手に力が入り、関節が白くなるのが見えた。
馬車は目的地には到着できず、何処にあるのかもう分からない。彼女の夫も、娘も、何処にいるのかもうわからない。生きているのか、死んでいるのかすらも。
「私も歳をとって、最近よく娘のことを思い出すの。あの時行くのを止めていたら、あの子の成長をもっと見守れたかもしれない。あの子の結婚式の晴れ姿を、見れたかもしれない。夫と一緒に、死ぬまでのんびりと暮らせたかもしれない」
悔しい気持ちで、この身が張り裂けそう。今にも叫び出しそうな顔で、彼女はワナワナと震えた。その姿を見て、私も胃の底が燃え滾った。悲しむ人を、苦しむ人を、怒りに震える人を見るのが、こんなに苦しいなんて。生まれて初めてかもしれない。
私にはそこまで想うことができる家族は居ない。だが、エリザの苦しみや深い愛情は痛い程に共感できた。どうして、私まで泣きそうになるんだろう。
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