ストーカーと彼女

ココナッツ?

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彼女の自覚と彼の勇気

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(彼女視点)

 自分で彼を好きになり始めている自覚がある。
 知らず知らずの内にスキンシップをしている自覚がある。

 まだ、大丈夫。
 まだ、私は自分を保てる。

 昔の記憶を思い出す。
 朝起きて、目が覚めて、周りを見ると、突然、家の中に誰も居なくなっている感覚。

 あれは、私の所為だっただろうに…

 誰かを好きになる、という事は、誰かに期待するという事だ。
 自分を好きになって貰える事を、自分の期待に答えて貰える事を。
 ガラスの割れた窓、テレビは割れてグッシャグシャになり、甲高悲鳴がする。
 あの過去を想像してしまう。
 ふーっと長いため息を吐く。
 ズルズルとドアにもたれかかったまま座り込む。
 頭を抱えて、少ししてからふらふらと歩き始める。

 ごはんの仕度をしよう…

 そう思った時、後ろのドアが開く。

「あの…」

 私が選んだシャツとズボンをきた彼が立っていた。


(彼視点)

 部屋を出ると彼女が立っていた。
 何と無く覚束ない足取りにちょっとした違和感を覚える。

 疲れたのだろうか?

 彼女がこっちに歩いてくる。
 私の頰に手を当てる。

「よく…、似合ってる」

 立つと彼女の方が頭一つ分背が低い。
 後ろに手を回し、彼女が私を抱きしめる。
 なぜかはわからない、でも彼女が少し寂しそうな、辛そうな顔をした様に見えた。
 少し、ビクビクしながら、ゆっくり彼女を抱きしめ返す。
 彼女が、驚いた様な物を見る目でこっちを見るが、私は気にせずギュッと彼女を抱きしめる。

「ありがとう…ございます」

 彼女の頭に頰を寄せる。
 そっと手を離すと、彼女が赤い顔をしてこっちを見ていた。
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