夏の星

変態 バク

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46. PM.夏、雨の夜。

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[先生、今日ちょっと時間ありますか?]

ためらいの末に送った夏のメッセージにすぐスンジェの返事が飛んできた。

[いくらでも]

夏はそれと違って簡単には答えられなかった。 一文字ずつ書いていくたびに指が重かった。

どこで見るのがいいかというヨルムの問いに、彼はどこでも構わないと言った。 こんな配慮が本当に良かったのに···. このように過ごすには惜しい男だった。

実際、こんなに早く彼を切り取る必要はなかった。 夏が今すぐハンビョルとうまくやってみようというわけでもなく、未来はどうなるか誰も分からないからだ。

それでも夏はスンジェを整理しようと準備中だった。

小さな希望を残しておけば、その希望が挫折した時、痛みがどれほど大きいかを知ることができるので、彼のためにもこの関係は決着をつけなければならなかった。

考えた末、夏は待ち合わせ場所を会社の近くに決めた。 彼と会った後、兄と約束があったからだ。

スンジェは、「快く承知した」と話した。 それを最後に短い対話は終わったが、夏は気が楽ではなかった。

どうやら今日は彼と笑って別れることができないような気がした。 ひょっとしたら彼との最後の出会いになるかも知れない。

苦笑いしながら家を出る夏の手には、彼がくれた紙袋があった。



*



会社の近くのカフェでスンジェと会うことにした。 透明なガラスのドアを開けて入ると、涼しい空気が先に夏を迎えた。 タクシーに降りてしばらく歩いただけなのに、汗が出るほど暑い天気だった。

「いらっしゃいませ」

自然にカウンターに向かった夏は、そこの職員と向き合った視線に首をかしげた。 同じように相手も夏を見ながら首をかしげたが、すぐ目が大きくなった。

「そうでしょ?」

「そうだよ」

お互いに気づいた二人は同時に笑い出した。

「おい!あなた、いつ来たんだ? あらまあ、ここで見るわ」

「そうだね。ここで見るんだ。 真冬」

久しぶりにその名前を呼んでみる。 しばらく韓国で社会服務要員として勤務していた時、よく立ち寄ったゲイバーの職員だった。

同じ年頃だったし、夏のように変わった名前だったので、かなり親しく過ごした。 他は分からないが、二重まぶたのない大きな目で目を笑う時、少しときめいた記憶がある。

ここで彼を見ることになるとは。 予期せぬ出会いが嬉しかったのか、冬は興奮した。

「あなたは何も変わっていない」

「あなたはどうで、違う。 少し変わったかな? 頭からつま先までがらりと変わったか? 何だよ、ロトに当たったのか?」

「ロトは何だよ、これが何年ぶりだ」

「よさそうだ。 以前は死ぬ顔をしていたのに」

「私がいつ。あ、お帰りなさい。 夏よ忙しくないでしょ? ちょっと座っていてくれる?」

押し寄せる客を受け入れるために冬は忙しそうに見えた。 飲み屋で接待する姿だけを見たせいか、コーヒーを淹れてお客さんを迎える姿が見慣れないように感じられた。

「いや、仕事をしなさい。 私、ここで誰かに会うことにしたの」

「そうなの?何かあげようか? アイスアメリカーノ?」

「うん。あそこに座っているよ」

「うん, 座っていなさい」

外から見るのとは違って、売り場はかなり大きかった。 街が見える窓際に座った夏は、しばらく冬を見守った。

不思議だった。夏の記憶の中にある真冬はどこか暗くて余裕がなさそうに見えたが、今彼はとても幸せそうに見えた。

客が消え、一息ついた冬がアイスアメリカーノ一杯を持って夏の方に来る途中、彼の携帯電話が鳴った。 冬はいろいろと短い会話をして電話を切った。

そうするうちに、夏と出会った視線ににっこりと笑う。 笑う時の姿が記憶の中にあったそのままだった。 訳もなく前にいる人まで気持ちよくさせる悲しい微笑み。

「恋人?」

「まあ, そうだね」

冬は夏の問いに否定しなかった。 ただニヤリと笑って照れるだけだった。 しばらくここに来た目的を忘れた夏は笑いが爆発した。

「いいね。 よさそうだね。 ここはあなたの店なの? あなた 本当にロトに当たったようだ」

「ロトって。 いや、お店は恋人で、私は職員。 わぁ、あなたに会ったことを知ったら、チャ·イヨンの子をすごく喜ぶと思うよ」

「イ·ヨン?」

「あっ、チャ·イヨン。 覚えてる? あなた うちの店に来るたびにサービスをたくさんしてあげるって社長に怒られたじゃん」

過ぎた思い出に夏は子供のように笑い出した。 真冬の友人であり、一緒にゲイバーで働いていたチャ·イヨンというやつは夏がかなり好きだった。

「知ってる、元気?」

「そうだよ、元気だよ。 チャ·イヨンのやつは無人島に落としておいても豊かな暮らしをするやつじゃないか。 あいつ今大邱にいるよ」

「大邱に?」

「大邱でカフェをやっているんだ。 ちょっと待って。おい、一緒に写真を一枚だけ撮ろう。 「チャ·イヨンさんが年を取ってから、人の話に疑いが多いです。 私があなたに会ったと言ったら、絶対に信じないに違いないんだ。 証拠を見せなければならないんだから」

少し興奮した冬の様子につられて夏も気持ちよかった。 どうしても韓国で過ごした期間が短いため、ここに同年代の友人があまりいなかった夏は、まるで古い友人に会ったような気分だった。

「そうだね、撮ろう。 何がそんなに難しいんだよ」

話が終わるやいなや夏の席に移った冬と並んで写真を撮った。 男2人でVをして撮る姿が恥ずかしいが、写真の中の夏は明るく笑っていた。

「夏よ、番号教えて。 いつか会ってご飯でも食べよう」

「うん」

携帯電話番号を教えるやいなや、さっき撮った写真まで渡したギョウルは、その間にチャ·イヨンに連絡が来たと言って笑った。 「ここを見ろ」と言って、私の携帯電話を夏の顔に押し付けてくれた。

[真冬に頑張ってるな、頑張って。 グラちょっといい加減にしろ。 [僕は釣れない]

「見た?うちのイヨンがこうだ。 この子は純粋さがないんです」

「イ·ヨンは恋人いないの?」

冬の嘆きに笑いが絶えなかった夏がやっと息を吸い込み、コーヒーを一口飲んだ。

「金持ちでハンサムで能力のある男じゃないと付き合わないって? 正直、そんなボトムがどこにあるの? 有名な言葉があるじゃない。 金持ちでハンサムで能力のある男はみんな「既婚者」か「ゲイ」だった。 ところが、そのようなことにも全ての持ち主がいる。 これだよ。そうじゃない?」

「そうだね、あるよ、あるとも」

夏と冬は昔から相性がよかった。 席にもいないチャ·イヨンをテーマに対話の花を咲かせている時、ギョウルが自然に次の質問を投げかけた。

「あなたは? あなたは恋人いる?」

瞬間的に夏は表情管理ができなかった。 ぎこちなく笑って冬の視線を避けると、しばらく静寂が流れた。 気の利く真冬は意地悪に食い下がらなかった。

何気なく夏が対話を続けようとする時だった。 タイミングよくお客さんが入ってきた。

「いらっしゃいませ」

素早く席を立った冬が、挨拶をしながらさっさとカウンターに走って行った。

「アイスアメリカーノを2杯ください」

「お持ちですか?」

「いいえ、ここで飲んで…」

「先生」

聞き慣れた声に振り向いたらスンジェだった。 10分早く到着した彼は、夏のコーヒーまで注文していた。

「冬よ、一杯だけ頼むよ」

夏とスンジェを交互に見ていた冬は、すぐに小さくうなずいた。 スンジェは、「どうしてこんなに早く来たのか」という言葉を投げながら近づいてきた。

まだ心の準備もしないままスンジェと向き合うようになったヨルムは、どんな表情をすればいいのか分からず、バカのように瞬きばかりした。

コーヒーが出てくる間、長い沈黙が続いた。 その間、静かに夏を眺めていたスンジェも何かに気づいたようだった。 彼は努めて笑顔で夏を淡々と歌った。

「夏よ」

「先生」

二人の言葉が重なった。
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