沈まずの艦~殺し合いに飽きた海賊大名、艦船制御AIになって天下統一を目指す~

月這山中

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第15話 陰謀渦巻く

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 輝元から映像ファイルが届いた。
 俺は再生する。

 暗闇に輝元が現れる。その後ろには、額に『石』を埋め込んだ者たちが立っている。
 シュウたちが置いていった石と同じものだと、直感した。

「今の地球でもっとも尊ばれる宇宙資源とは何か、わかるか」

 輝元が口を開いた。

「鉱石? 天然ガス? 否。土地よ」
 
 右掌を天に向けて、奴は言う。

「この宇宙に数多浮かぶ星こそ我らが欲する資源。星を開拓し、宇宙を地球人類で埋め尽くす」

 俺の後ろでセブンスが「それは侵略じゃないのか」と呟く。先住民のいる星を見つけた時、その思考はどのような害をなすのか。

「ところで、お前はこの『石』がわかるか。これは意志の統合を実現させる」

 右腕を背後に広げて、控えている者たちを指す。

「こうして人体に埋め込むことで人々の意識は統合される。争いのない世界。殺めぬ生。それこそ、お前が望んでいたものだったと、記憶しているがな」

 それから、輝元は意外なことを言った。

「手を組まぬか、九鬼」

 俺は輝元の言葉を聴く。

「今までは目障りな蠅だった。しかし今のお前は、力を持っている。わしにはない力をな。色よい返事を待っているぞ」

 映像はそこで途切れた。


 俺は録画を開始した。

「お断りだ」

 第一声は、これでいい。

「お前のことはよくよくわかっている。いずれ手を切るつもりの奴とは組めない」

 そこまで言って、俺は録画を停止した。

「待て、我、変な顔してなかったか」

 リ・チョウが自分の頬をこねている。

「変な顔はいつものことだろ」
「撮り直せ!」
「送るぞ」

 俺は無視した。

「毛利とは、戦争になるんでしょうか」

 セブンスが呟く。
 俺は頭を振った。

「そうはさせない。俺たちは己の道を行く」

 その宣言をしても、セブンスの顔は晴れなかった。




 九鬼の映像ファイルを観て、輝元は笑っていた。

「そうでなくてはな。そうでなくては面白くない」

 それから、背後に控える石を埋め込んだ男たちを見る。

「能島《のしま》」

 顔に火傷跡のある男が頷いた。

「因島《いんのしま》」

 冷たい目の男が頷いた。

「来島《くるしま》」

 額に深い縦皺のある男が頷いた。

「お前達には九鬼を煽ってもらう。いいな」
「煽るだけか」

 能島が低い声で唸った。

「どうせ殺してしまうのだろ」
「仕事は言われた通りにこなせ」

 横から因島が窘めた。

「チッ」

 能島が舌打ちする。
 輝元は気にすることなく、指を組む。

「来島」

 輝元が声をかけた。

「息子のようにはならんことを祈っておるぞ」
「………」

 来島は頭を下げる。



 亜光速転送で映像ファイルが毛利の船に届いた頃、ウルフ・ムーンの前に脱出ポッドが流れ着いた。
 回収すると、中にいた詰襟の似合わない貧相な男は自己紹介をした。

「宇喜多和泉守直家です」

 かつて毛利から離反し織田に寝返った男は、微妙な笑顔を浮かべて我らを見ていた。

「また寝返ったのか」
「妙な石を埋め込まれそうになったので。亡命させて貰えますか」

 俺はセブンスの表情を見る。頭巾を傾けて、それから右手を宇喜多に差し出した。

「ようこそ、ウルフ・ムーンへ」

 固い握手を交わす。



 リ・チョウが艦を案内した。

「ここが畑《プラント》である。整備は持ち回りであるが、亡命者は休んでいてよい」

 すっかりウルフ・ムーンの住人となった虎人間はいばった態度で宇喜多に接していた。

「わかりました。ありがとうございます」

 宇喜多はへこへこと頭を下げていた。

「ここが亡命者用の住居である。ゆっくり休むとよい」
「ありがとうございます。ありがとうございます」

 布団に座って宇喜多は深く頭を下げた。
 リ・チョウが去る。

 宇喜多は、周囲に人の気配がないのを確認して、詰襟を持ち上げた。

「……侵入、完了しました」

 小さな部屋に、呟きは響いた。
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