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地図
しおりを挟む地図制作部とは地図を制作する部活だ。
地元の観光案内から構内図まで、ありとあらゆる地図を部員の興味の赴くまま制作する。
猫の通り道を追跡調査して地図にしてきた者もいた。架空都市の地図を持ってくるものもいる。部員たちはそれを鑑賞して品評を行い施設の追加を提案した。誰かが作ってきたインターネット上にある小説投稿サイトの地図ははたして地図と認めるべきか議論が巻き起こったが、今は部室の書庫に保管されている。
部活のモットーは『世界のすべては地図にできる』。
文化祭の翌日、地図制作部は皆で文化祭の地図を持ち寄った。共同してひとつの地図を制作するのではなく、各々が文化祭をめぐり自分が興味のある要素を地図にしたものを持ち寄ったのだ。
◆
「私の文化祭の地図はゴミの行き先です。焼却炉に集積されますが、回収業者に渡すため裏手門がゴールになりました」
「私の文化祭の地図は飲食店の地図です。届け出が受理されず出し物が変わったクラスもあったので苦労しました」
「私の文化祭の地図は図書室の本の地図です。文化祭の日は資料として借りる生徒が多かったので」
「私の文化祭の地図は春原周良の逃走ルートです」
「おお」
「これはこれは」
「鈴木小鳥は追わなかったのかね」
「女子を追いかけるのはまずいでしょう。倫理的に」
「男子ならいいんですかね」
「男子もまずいんじゃない」
「じゃあ、この地図お蔵入りですか」
「待て、そうなる前に見せてくれ」
「校庭を三周している」
「体力ありますね」
「体力しかないだろ。やみくもに逃げてるって感じだ」
「やっぱり鈴木小鳥のルートと比較したいな」
「……あの、私が作ってます。鈴木小鳥の逃走ルート」
「おっ」
「助かるなぁ、やっぱり地図は比較したいから」
「倫理的にまずいですよ。いや、見ないとは言ってませんけど」
「一度屋上に上がってるのはなにか意味があったのだろうか」
「追い詰められてでしょう」
「いや、この時は放送部員はマークされてない」
「何かを探していたんでしょうか」
「飛び降りようとした?」
「まさか」
「他人の秘密を暴いたくらいで?」
「罪の意識を感じるくらいならやらなきゃいいのに」
「自分の秘密を言えなかったから」
「………」
「……鈴木小鳥の秘密とはなんだ?」
「女子のそれを暴こうなんてまずいでしょう。倫理的に」
「男子ならいいんですかね」
「逃走ルートの地図はこのくらいにして、次の地図を」
「ですね」
「自分、塾の時間が迫ってるんです」
「早く早く」
「私の文化祭の地図は……」
◆
地図制作部とは地図を制作する部活だ。
部活のモットーは『世界のすべては地図にできる』。
彼ら彼女らは一つの真実に辿り着こうとしていたが、地図が完成したのでそれ以上は追及しなかった。
了
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