勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

くノ一

文字の大きさ
16 / 358
さらなる成長を求めて

15.この世界のゴブリンは非常に頭を使う

しおりを挟む
 その場で休憩を取りながら、彼女を見る。
 今の彼女は何もかもが、無関心だ。サンドイッチも食べるのに、時間が掛かっている。

「・・・」

 彼女は無言のまま、サンドイッチを口へと運んでいく。
 出発に時間は掛かるが、あとどれくらい距離があるかだ。出来れば、今夜中には到着した所だ。
 自身が食べ終わり、コップに注いだ水を飲んでいる時、遠くから草が揺れる音が聞こえてきた。

「・・・何か来る」

 その音は徐々に近付いていた。それは後ろからもだ。
 俺はすぐにツインソードを両手に生成し、辺りを見渡した。
 チェーンブレードを使用したいが、ここは森だ。木々が邪魔で攻撃が届かない。
 俺が警戒していると、突如とくさむらから緑色の顔を出てくる。

「まさか、ゴブリンとかないだろうな」

 敵は二、三体、それ以上の顔が出現する。広報も同じくだ。他にも木々の上に隠れている可能性もある。

「数はざっと20・・・、さすがにこの数は・・・」

 集団で動いているらしく、数も数だった。獲物を逃さず、確実に仕留める戦法を取ってきている。
 ゲームのゴブリンなら、単独やらチームで組んでいる場合が多い。だが、今回は違う。ここの奴らゴブリンは集団で動いてきている。
 油断していると、すぐに仕留められるなこれ。

「ケケケ……いい獲物じゃケケ」
「陣形崩すな。近づいて、確実に仕留めるんじゃケケ」

 人語を喋れるゴブリンか・・・。さっきめいれいしてたのが、多分この集団のリーダーだな。頭のスカーフをしているのもそいつだけだ。
 リーダーは他よりも強いはず。なら、そのリーダーを倒せば、他のゴブリンは恐れて逃げ出すはずだ。

「今だ。襲え!」
「ヒャッハー」

 ゴブリンが一斉に走り出した。木々の上からも降りかかるように落ちてくる。
 上にもやはり潜んでいたか。数はざっと15体、数でごり押しするつもりだ。
 その時だった。空中にいた1体が何かに当たったかのように、血を出した。落ちてきていた他のゴブリンは何かに気付くようにそちらへと向いた。
 だが、次の瞬間に次々と何かが空中のゴブリンへと飛んで来ていた。
 地面へと落ちたゴブリンを見てみると、頭には針状の物が刺さっていた。

「全て頭を狙って・・・」

 空中にいたゴブリン全て、飛んで来た針状の物によって倒された。全て頭へと刺さっていた。
 それを地上から攻めていたゴブリン達は唖然していた。そしてその時、奥から声が聞こえてくる。

「なんとか間に合ったぞ。なんか騒がしいと思って来てみれば・・・、そなた達が例の子じゃな」

 聞き慣れない少女の声が聞こえてくる。そして何かが急速にこちらへと向かって来る気配を感じた。
 更に声のした所から針が飛んで来ては、ゴブリンへと当たっていく。
 それを見たのか、ゴブリンは四方八方に逃げ出した。
 そして辺りからゴブリンがいなくなった所で、その声の主が木々から降りてきた。

「お主達がリーネ殿の言っていた二人組じゃな。思ってたよりは若いのは想定外じゃが」

 その姿は少女だ。年齢的に言うと10代前半のような幼稚な姿をしていた。
 そして、その少女が着ていそうな動きやすい着物を着用していた。

「ひ、ひぃ!」

 足を引きずりながら、その場を離れようとしているゴブリンがいた。
 少女は右袖を勢いよくゴブリンの方角へと伸ばした。その時、何かを一緒に飛ばした。それがゴブリンの頭に当たり、その場でゴブリンは倒れ込んだ。
 その後、少女はこちらへと視線を向けた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...