勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

ドラゴン討伐

38.気づいた後

　俺は気付いた時、美しい庭みたいな所に立っていた。先程まで違う所に感じるような所だ。少し歩いた道の先に噴水があった。
　ひとまずそこまで歩いて確認はしてみるのも悪くは無いだろう。

『お主は力を求めてるのかー』

　どこからもなく声が聞こえてくる。誰だ…俺を呼ぶ声は、

『力を求めたって所詮は人間ー』

　彼女の言葉で頭が痛くなり、歩んでた足を止める。この声は誰だ……、

『お主に答える義理はないー。お主は我の質問に答えればいいー』

　心を読んでいる…。俺は強さを求めても所詮は人間だ。人の限界はある。今の俺はその限界を超えたいと思っている。

『ほう……、お主は変わり者だなー。いいだろう。噴水に入るといい。お主の世界へと戻れるだろうー』

　頭が痛くても歩き始める。ここは意識だけの世界だったら噴水に入れば元の世界に戻れるのだろう。

『我が名は女神ー、あの世界へと送る女神の補佐であり、力を与える者ー』

　その声を聞いた直後、声は聞こえなくなった。聞こえなくなっても頭が痛い。

「さっきの声は何だったんだ……」

　分かったのはここが魂の世界か、もしくは天界の一部の場所ぐらいだ。
　彼女は俺みたいな勇者へと助言する役割なんだろう。

「さっさと戻らないとな……」

　ここに長時間はいられなさそうだし、元の世界へと戻らないと。
　噴水の水へと触れた時、吸い込まれるように光り出した視界を奪っていった。

　気が付いた時にはベットの上にいた。最後の記憶を思い出しながら起き上がる。確か記憶の最後は木に当たったのが最後だった気がする。

「おや、起きたみたいだね」
「あなたがいるって事は街へと戻ったんですね」

　扉の奥からリーネが顔を覗かせていた。ここは街なのだろう。トルゥが運んでくれたのだろう。

「さて今回の報酬だけど、そこのテーブルに置いてある額だけだから」

　テーブルには金貨二枚が置かれていた。あれだけ派手に暴れてこれだけとか少ないようにも少々感じるが、

「回復次第次のオーダーを頼むつもりだから覚悟はしておいてね」

　それだけを言い残し、その場を去っていった。今の俺は回復を専念しないといけないだろう。まだ背中とかが痛みが走っている。
　あれから何日経ったのかも分からないし、この先が少し心配かもしれない。