勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

くノ一

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近い遺跡へと続く西の都

117.動き出す影

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 朝ご飯を食べ終わってから2時間程度は千夜が持っていた魔道書を読んでいた。朝からだと人が少なく、出している屋台もほぼないだろう。時間が少し過ぎてからでも遅くはないと結論を出した。
 待っている時、千夜が散歩から戻ってきた。彼女にも2人の面倒を頼んではいるが、こうもなんか心配だ。

「そんなに心配顔しなくても大丈夫だと思いますよ」
「だといいんだけど」

 今日は珍しくトルゥと2人だけでの観光だ。買い物もついでにして行く予定にしている。近いうちに遺跡攻略を開始する為のポーション類の補充をするのが今回の目的だ。
 出る前になんか観光地的な所もいくつか千夜が喋っていたが、そこを回ってもいいだろうか。

(落ち着いて私、これは恩人への感謝なのですから)
「ん?」

 どこ回るか考えてた時、聞き取れなかったが何かトルゥがちいさく呟いていた。
 まあ、こんなのに反応してたら日が暮れるだろうし、屋台で買って散策してもいいだろう。

(何緊張してるの私は!ここで勇気出さないといけないでしょ!)
「なんか呟いた?」
「い、いえ、それよりこちらに向かいましょう」

 振り向いて聞いてみたが、首を振りながらなんでもないですと言っていた。そして手を引っ張るように屋台へと向かう。

「おじさん。この焼き串2本ください」
「はいよー」

 焼き鳥と変わらない焼き串を2本買う。一口食べてみては味は焼き鳥と変わらない。
 とりあえずどこ行こうかな。


「魔王軍の1人が動いたわ。どうやら狙いは本部みたいね」

 千夜が鈴を取り出し鳴らしてから喋り出した。そしてどこからもなく、コンビ勇者の相方の蒼の声が聞こえてくる。

『そいつは幹部か?』
「分からないけど、狙いは本部しょうね」
『そいつを撤退するまでやっちゃっていいんだな』
「ええ、かなりやっちゃってくだはい」

 魔王軍が動く。千夜はそれを予測して街全体を監視していた。それに1人引っかかり動き出したのだ。千里眼の効果によって見つかった魔王軍は即座に蒼へと連絡がいく。
 彼らの行動を止める為に青が動き出した。

『なぜあたいらを狙うかは知らないが、返り討ちに合わしてやるよ』

 気合を入れた蒼は動いている魔王軍の元へと向かうのだった。
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