窓野枠 短編傑作集 11

窓野枠

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心躍る日

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 私は雪が降るとはしゃいでしまい、犬のように庭を駆け回る口なのである。

 ♪雪やこんこん、あられやこんこん♪

 鼻歌を歌いながら、長靴を履いて、手袋をして、マフラーを首に巻いて、野球帽を目深にかぶり、サングラスを付け、準備万端整えて、玄関を飛び出す。冷気が顔に当たり、一瞬、ぶるぶると体が震える。
「オッシャー」
 気合いを入れると、家の物置に向かい、隅に追いやられていたスコップを引っ張り出す。
「我が愛しの小鉄よ、いざ、出陣であるぞ」
 小鉄と呼ぶ只のホームズで買い求めたスコップを自由自在に操り、そこかしこから雪をかき集める。ひたすら、一カ所にかき集める。1時間も雪集めをすると、小高い塊ができあがる。形を整えると、大急ぎで家の中に飛び込み、そっと、窓を細く開けてひたすら獲物を待つのである。ここは裏通り、 わなに掛かる獲物は少ない。
 やがて、車のクラクションがけたたましく鳴る。
「やったー」
 窓のすき間から目をこらす。今度は、白いセダンが止まっている。大抵の運転手は、車から出ると大きな声で、申し合わせたように怒鳴る。
「誰だー、道路の真ん中に雪だるまを作ったヤツはー?」
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