窓野枠 短編傑作集 3

窓野枠

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うちの犬

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 うちに犬がいる。雑種だ。柴犬に似ていて、栗色の被毛をしている。名前はワンコ。ワンコは子犬のとき、知り合いから譲り受けた。ちょうど、きょうで一年になる。そのお祝いをリビングルームでしている。ワンコには特製のドッグフードと特製の水道水を器に入れて出してあげた。
「ワンコ、乾杯」
「ワンワン」
 ワンコもドッグフードを食べながら「乾杯」と、僕に言った。そう、うちのワンコはしゃべれるのだ。ある時、突然しゃべり出した。雪の降る日だった。生後9ヶ月になろうとしていた頃、散歩の道すがら、足下にいるワンコに向いて「ワンコは毛皮のコートを着ていていいね」と、僕が言った。ワンコはちょっと考える顔つきをして僕の方を向いて言った。
「ワンワン」
 確かに、寒いと言った。僕はびっくりした。気のせいだと思ったが、妻にこのことを話した。すると、妻は、「知っていたわよ」と、平然と言った。そして、妻は笑いながらワンコに話しかけた。
「しゃべれたわよね、ワンコ」
「ワン」とだけ、ワンコは言った。妻は「ほらね」と言った。やっぱり、うちのワンコはしゃべれたのだ。
 翌日、僕はワンコに朝ご飯をあげていた。とは言っても、ドッグフードだが。「ワンコ、美味しいか? 」と話しかけたら、「ワン」と言った。とっても美味しいと言った。
 そのうち、ワンコが大きくなると、もっとしゃべれるようになるのかな、と思うと、僕はとてもうれしかった。


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