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窓野枠

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第11章 慶子と慎之助

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 慎之助はさきほどの慶子の行動を見て思い当たった。きっと、お金持ちの財閥の環境で育ち、性格はかわいらしい顔と真逆でひねくれていて嫉妬深くて、ネクタイを締め上げるような粗暴な性格で、手に余るどうしょうもない子なんだ、と確信した。だいたい、今は神の使い見習い崩れに落ちぶれてしまったが、なんたるハレンチな行為をする娘だ。許さんぞ、と慎之助は、慶子がネクタイをつかんで締め上げ詰め寄ったこと、を心から嫌悪し根に思った。慎之助も負けずに、器の小さな神の使いの見習い崩れである。だから、落ちこぼれたのは当然の結果とも言える。そんな小さな了見の見習い崩れなものだから、生意気な慶子をなんとかこらしめてやろう、と方向違いな展開を考えている始末だ。本当に、器が小さい神の使い見習いの落ちこぼれである。
 彼は隣に座る慶子をちらりと見た。彼女は紅茶を美味しそうに飲んでいる。だいぶ、落ち着いたようだ。エロMエッサイ無さまから、慶子のフォローをするように言われたが、何をどうフォローしたらいいのか、全く見当もつかない慎之助だ。エロMエッサイ無さまから言われたクリスマスデート難民ゼロはこの慶子がいるから絶対、無理だと確信した。
 よくよく見ると、笑顔がステキだと思っていたが、今、笑顔ではないが、とても気になっている。この子が気になるのは、なぜなのか、と自問する。いや、かわいい子ならいっぱいいるよな。彼は時々隣の慶子を盗み見る。彼は慶子のすべてがすごく気になって見るたびに心臓がトックトックしてきた。彼は人間のように病気にはなったことはかつてない。なぜなら、一応、神の使い見習い崩れではあるが、天上界の底辺にいた彼だ。この胸の苦しさは、もしかすると、人間が言う恋とか言うものなのか、と思うが、そんなあり得ない、とも思う。もしかすると、自分は天上界から外れ、限りなく人間に近づいているのではないか、このまま、人間になってしまうのではないか、と思ってきた。
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