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第24章 幸せな食卓

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 純子は昼の会議室から戻り、植木とその日の夕食に行くことになってから大きく心が変わった。慶子が運転する車の中でスマホ・ヒトメボレを使用して心が変わった。純子は理由のない一目ぼれを植木と慶子にした。昼の人格・純子は慶子とも友だちになった。ヒトメボレは男女、性別、肉体的区別を根底から排除する愛を生じさせる天界始まって以来の究極の神器だった。天使見習い・8ピッド改名の佐々木慎之介が開発した旧弓矢に変わり、恋の成就を担うアイテムは世界を変える大発明だった。
 スマホ・ヒトメボレに搭載されたAI(愛)機能を備えたCPUが、さらなる進化を始めた。開発者であり、天使見習いながら天界側の慎之介すら、ヒトメボレの機能を使用したことで慶子という人間を愛した。
 このヒトメボレは、開発者である慎之介の崇高な理念「多情愛」が根幹にある。「多情愛」とは、多くの情が愛を生む、という考え。慎之介はこの理念をスマホのアプリで広げるプログラムを開発した。リア・ラブゲームである。
 恋の橋渡しをする相手は3人で1グループを構成する。以前にも説明したが、詳しく慎之介の理論を解説しよう。一人は一人を愛するのは古の弓矢という神器の特長だった。1対1対応だ。ところがヒトメボレはグループで愛する機能がある。1対1対応に、一人を加えて、1対2対応になる。3人で1グループという単位が構成された。この1グループが他のグループに好意を抱く。1グループ対2グループ対応となる。つまり、3グループが恋愛感情を共有する。3人X3グループ=9人が恋愛感情を共有する。9人が1リングとして無限に拡散していく。人間の性別をこえて恋愛感情を相互に共有していく。だれかとだれかとだれかが無限に連鎖してつながる。
 ヒトメボレは純子の脳内にある3つの人格にも作用した。純子の中で人格を分離していた垣根のようなシールドが分解を始めた。2つのシールドをうまく調整していた人格・順子がヒトメボレの発する力で、順子の人格に影響を与え始めていく。3人の人格の崩壊だ。

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