失恋カフェ

Musk.

文字の大きさ
上 下
1 / 1

失恋カフェ

しおりを挟む
「…優子、別れよう…。」


1年付き合っていた彼に振られた。
理由は価値観の違い。
価値観の違い―何?価値観って。

私がラブストーリーが好きで彼がアクション映画が好きって事?
それとも私は塩ラーメンが好きだけど彼はトンコツが好きって事?

嘘。嘘よ。
価値観の違いなんて嘘。本当は違う理由があるくせに―。
私はそう思ったけれどもはや咎める気にもなれなかった。




「…はぁ…。」

晴れた日曜日、私は一人街をブラついていた。
本当は家に居ようと思ったけれど引き込もっているとどうも彼を思い出してしまう…。居たたまれなくなった私はこうして外に出たのだった。

…だが。私は今とても後悔していた。

なぜなら…


「ねー!次どこ行こっか?」

街はカップルで賑わっていたのだ。
…どこか…静かな所……あぁ、喫茶店でコーヒーでも飲んで落ち着こう。

そう思ったのだけれど。
喫茶店の窓からハイ、あ~ん。をしてるカップルを見て無表情で通りすぎたのだった。

「くそぅ。カップルなんて滅びてしまえ…!」

私は理不尽な怒りを呟くと宛もなく歩き続けた。


「…で、ここどこ?」

気付けば私は薄暗い路地裏に入っていた。
無意識に人を避けていたみたい。
人のいないところ、人のいないところ、と歩いてたらこんな所に来てしまったのだった。

「確かにカップルは居なさそうだけど…ちょっと恐いな…。」

私はなんだか薄気味悪くなり急いで路地に出ようとした。

―とその時。

ふ、とある看板が目についた。

少し黄ばんだ白い看板には黒猫が描かれており可愛らしくちょこんと首を傾げていた。
まるで「お姉ちゃん、寄って行ってくれないかにゃ?」と言われてるようで私はつい足を止めてしまった。


「え~と…喫茶店?ちょっと入ってみようかしら…。」

私は何かに導かれるように喫茶店への階段を降りて行ったのだった。


お洒落な黒いドアをゆっくり開けるとチリン、チリンとベルが鳴った。
そしてお店に入ると同時にふわっとコーヒーの香ばしい香りが漂ってきた。

「いらっしゃいませ。」

カウンターから黒渕メガネをかけた優しそうな男の人がそう微笑み、どうぞお好きな席に。と言った。
私は店内をグルリと見回した後カウンターの一番端の席につく事にした。


「ご注文はいかがいたしましょう。」

私はメニューをちらりと見てじゃぁアメリカンコーヒーを、と注文した。
男の人はかしこまりました。と一言言うとコーヒー豆を手に取りミルへと入れていた。


「ふぅ…。」

軽いため息をついた後私は店内を見回した。
黒を基調とした店内はとてもレトロな感じがした。
店内はちょうど良いボリュームでジャズが流れ、あの路地裏からは全く想像出来ない程のお洒落で洗練された空間を造りだしていた。


チラッと他のお客さんも見てみた。

…びっくりした。

品の良さそうな紳士がコーヒーを静かに飲み、その後ろでは上品なお婆さんがくつろいでいる…。

そこまで、そこまではわかる。

だけどその奥にはこの空間に不似合いな程の派手な格好をしたお姉さんが座っていたのだ。
お姉さんは派手にデコったスマホをチラリと見てはぁ…と色っぽいため息をつき静かにコーヒーを飲んでいた。

彼女だけではない。
ネオンカラーの派手なパーカーを着たピアスだらけの男の子や大人しそうなセーラー服の女の子…いろんな人がこの不思議な空間に集まっていたのだ。

ただひとつ、共通している事―それは皆静かにこの空間を味わっている事だった。
大声で話す人もいなければ楽しそうにメールをしている人もいない。
ましてや人目も憚らずイチャイチャするバカップルもいない。
…と言うかカップルなんていないんだけど。皆一人で静かに座ってるわ。

私がそう考えていると「お待たせいたしました。」とアメリカンコーヒーが運ばれてきた。


シンプルな真っ白いカップに入ったアメリカンコーヒー。一口飲んでみるとびっくりするぐらい美味しかった。
苦味も酸味もちょうど良く、結構カフェマニアだった私は今まで飲んできたコーヒーはなんだったのだろう…とちょっとショックだった。

「…お味、合いませんでしたか?」

私が怪訝な顔をしたからだろう。
メガネの彼は不安そうな顔で聞いてきた。

「!いいえ…。逆です!こんなに美味しいコーヒー飲んだ事なくって!…恥ずかしながら…。」

私がうつむきながら答えると彼は嬉しそうに笑い

「それは良かった…。うちは豆から水、温度…全てにこだわって納得のいくコーヒーしかお客さまに出さないのです。」と言った。

「だからこんなに美味しいんですね…。あれ?もしかして…あなたがここのマスター…?」

「ええ。私はここを一人で切り盛りしています。」

へぇ、私と同じくらいの年齢……随分若いマスターね。
彼は私の考えを知ってか知らずかニコリと微笑むと「ではごゆっくり。」と席から離れて行った。



それから私は美味しいコーヒーを飲みながらただひたすら彼の事を考えていた。
なんで振られたんだろう。どうして彼は私から離れて行ってしまったんだろう。
怒りはなかった。ただ冷静に、客観的に考える事が出来た。

そういえば夕食のお店やテレビのチャンネルとか結構意見が分かれてたよね…ケンカにならなかったのはいっつも明人が折れてくれてた為。

私は明人の笑顔を思い出していた。
人の良さそうな、だけどいつも遠慮がちな困ったような笑顔を私に向ける明人…。
…そうか…私は明人に甘えすぎてたのかも知れない…。

「価値観の違い…か…。」

私はそう呟くとコーヒーを一口飲んだ。



「いけない!」

気付くとお空に星の輝く時間だった。

「マスター、美味しかったです。…どうもありがとう。」

私はそう言うと静かに席を立った。

「ありがとうございました。…よろしければまたいらしてくださいね。」

マスターは笑顔でそう言った。

「はい…!あ、マスター、このマッチもらって行っていいですか?」

レジ横に白いマッチが置かれていたのに気付いた私は急いで聞いた。

「どうぞ。」

私はマッチをカバンに入れた。

わーい♪マッチにはあの看板の猫ちゃんが描かれていたのだ。猫好きの私はどうしても欲しかったの。
私はもう一度マスターにお礼を言うとお店を後にした。



「はぁ…。」

私は電車でまたため息をついていた。

だけど嫌なため息ではなかった。なんだろう…ホッとしたような…まるで邪気が無くなっていくようなため息だった。
こんなに穏やかな気持ちになれるなんて。
明人に振られてからこんなに穏やかな気持ちになったのは初めてだった。

それに明人の事も冷静に考えられた…。
これも全部あの喫茶店のお陰かもしれない…。
静かに…そして優しく包み込んでくれるような暖かい空間…。

「…そういえばあそこ何て名前だったっけ…。」

私はガサゴソとカバンを漁りマッチを取り出した。
マッチには擦れた印刷で【喫茶店 スロータイム】と書かれていた。

「スロータイム…確かにね。」

私はクスッと笑うと無くさないように大事にポーチにしまった。





「おはよう。」

次の日私はいつものように出社していた。
ただ周りはいつもと違って…

「おはよう…優子…大丈夫…?」

私に凄く気を使っていたけれど。


「大丈夫だよ。さすがに全快…とは言えないけど…あれから冷静に考えてみたの。私も悪かったなぁって。」

私のその言葉に同僚の笑子えみこは目を丸くした。

「うっそ!どうしたの、優子!悟りでも開いたの?」

「ちょっと何それ。なんか凄い失礼なんだけど。」

「だって優子めっちゃ電話で落ち込んでたじゃん!私心配で心配で…。」

「…ありがとう、笑子。」

私が笑子に微笑むと、笑子も優しく微笑み返してくれた。


月、火、水、木、金。

週5の仕事を終え待ちに待った休日がやって来た。
さすがにまだ遊びに行く気持ちが出ない私は女友達の誘いを断りあの路地裏を歩いていた。

目的はもちろん…

「いらっしゃいませ。」

「…また来ちゃいました…。」

あの喫茶店だった。


「今日は何にいたしましょうか。」

「じゃぁ今日はブレンドコーヒーで。」

前と同じカウンター席に座るとまた店内を見回した。今日は派手なお姉さんとパーカーくんはいなかった。いたのは紳士とお婆さん、そしてあのセーラー服の女の子だった。

女の子はじっと下を向いていた。膝に握りこぶしを置いて。心なしか震えているようだった。

…泣いているのかな…。


「お待たせいたしました。」

スッと私の前にブレンドコーヒーが置かれた。コーヒーの香ばしい香りが私をふわりと包んだ。

「…ねぇ、マスター、あの女の子…。」

「はい?」

言いかけて私は止めた。

「いゃ、あの子何飲んでるのかなって。コーヒーを飲むような年でもないし…。」

するとマスターはニコリと微笑み

「紅茶ですよ。うちは茶葉にもこだわっておりまして…。」と答えた。

「へぇ…今度いただいてみようかな。」

私がそう言うと是非、と嬉しそうにマスターは笑った。


…本当はあの子泣いてるの?って聞こうと思った。
でもそんな事聞いちゃいけないよね。だってそんなのプライバシーの侵害。私だってそんな事されたら嫌だもん。


「コーヒー、いただきます。」

私が飲もうとカップを持ち上げると

「…あの子はもう少し、時間がかかるかな…。」とマスターが呟いた。

「え…?」と聞き返すとマスターはごゆっくり、と笑ってカウンターの奥に入ってしまった。

なんだったんだろう…。
私は不思議に思いながらも美味しいコーヒーを味わった。


チリン、チリン。

ベルの音と共にマスターがカウンターに戻ってきた。

「いらっしゃいませ。」

「マスター、アイスコーヒーお願い。」

入ってきたのはあの派手な女の人だった。

綺麗に巻いた髪をくしゃ、とかきあげ前と同じボックス席に座った。
相変わらず派手な格好をしていたが前とは明らかに違っていた。

それは…幸せそうだったのだ。
この間はあんなに不機嫌そうだったのに。
と、その時バチっと彼女と目が合った。

あ!ヤバい。じっと見てたのがバレる!
私が慌て目を反らそうとすると彼女はニコリと微笑んだ。

!!彼女ってこんな綺麗に笑うんだ…。
私がその笑顔に見惚れていると、

「ねえ、良かったらこっちで話さない?」

彼女からお誘いの声がかかった。

「あっ…はい!」

私は突然の誘いに驚きながらもゆっくりと彼女の席へと向かった。


「タバコ、吸って平気?」

「あっ大丈夫です!どうぞ!」

彼女は鞄からライターとタバコを取り出すと吸い始めた。
何だかその仕草が綺麗でじっと彼女を見ていると、視線に気付いた彼女が不思議そうに聞いた。


「タバコ吸ってるの珍しい?周りにいないの?吸う人。」

「あっいや、そんな事ないです!明人も吸ってたし!」

「…明人?」

「あっ……元彼です……。」

つい癖で……私がそう苦笑いしながら答えると彼女は

「別れたばっかなの?あっ言いたくないならいいけど。」

綺麗な爪でアイスコーヒーにガムシロップを入れながら聞いた。


「はい…。まだ忘れられなくて。彼の事恨んだりとかはしてないけど……。」

私がそう答えると

「なかなか忘れられないよね。しょうがないよ。」

と彼女が笑いながら答えた。

「あなたも…?」

「うん、そう。別れたばっか…ではないけど。突然捨てられたんだよねー。」

こんな綺麗な人を捨てるなんて。
私が驚いて目を見開くと彼女は ふふっ と笑って話し始めた。


「彼ね、あっ健斗って言うんだけど。年下で可愛くてさぁ。いっつも甘えてきて…つい私も甘やかしちゃうんだよねぇ。」

彼女はよほど彼が好きだったのか、彼を思い出しながら幸せそうな顔で微笑んでいた。

「でもさ、やっぱり甘やかしすぎって良くないよね…同棲始めて生活費とか諸々私が払うようになったら働くなってさぁ。毎日パチスロ行ってはお金ちょうだいとか言ってきて。」

「始めはめっちゃ好きだったから良くないなと思いつつお金渡してたわけ。でも周りも結婚し始めて…私も結婚したいと考えた時に今のままじゃダメって思ったの。だから働け、遊ぶお金はもう渡さないって言ったの。」


彼女はマスターにお代わりのアイスコーヒーを頼むと身を乗り出して話し始めた。

「そしたらさぁ、健斗のやつ。好きな女が出来たからってそそくさと家から出てったんだよね!信じられる!?今まで支えてきた私を簡単に捨ててさ!!」

「何それ最低!!」

「…まぁ……ただの金づるだったんだよね…。」

薄々気付いてたけど。彼女がそう呟くと同時にマスターがお代わりのアイスコーヒーを持ってきた。

「ありがと。」

彼女はアイスコーヒーにガムシロップを入れ始めた。


「…まだ忘れられないんですか?あなたも。」

私がそう聞くと彼女は笑いながら言った。

「ううん、もう吹っ切れた!あんな奴と付き合ってても私のプラスには何もならないし!」

「吹っ切れたんですね…良かったです。」

「長かったけどねぇ吹っ切れるまで。仕事も手につかないし。お金渡すから戻ってきてって言いに行こうかと思ったほど。」

「そんなに……。」

「でもさ、そんな荒ぶってる時にここのカフェに救われたのよ。」

彼女はカフェを見渡しながら言った。


「カフェに救われた?」

「そう。初めは何となく入っただけなんだけどね。この空間で1人コーヒー飲んでるとさ、不思議と気持ちが落ち着いてきて…いろいろ考えられるようになったのよ。」

「私も!私もなんです!!」

つい興奮して大きな声を出してしまい、店中の注目を浴びてしまった。恥ずかしい……。

「あはは、あなたもか!別にヒーリングサロンでも無いのにね?ここ。不思議よね…今は別れてよかったと思ってる。」

そう言う彼女の瞳は凛としていて、今まで見てきた中で1番美しい表情をしていた。


「あっごめんもうそろそろ仕事だわ。」

彼女はスマホを見ると帰り支度を始めた。

「あなたはまだいる?」

「あっはい!まだコーヒー残ってるし…。」

「そう。あなたの分払っとくから。ゆっくりしていきなね。」

そう言うと彼女は自分の伝票と私の伝票両方を持って立ち上がった。

「えっ!?いやいやいいですよ!!」

私が立とうとすると彼女は微笑んで

「いいのよ、話聞いてくれて…心が軽くなったから。これはお礼よ。受け取ってよ。」と言った。

「ありがとうございます…ご馳走様です!!」

私がそう言うと彼女は手を振ってレジへと歩いて行った。


「かっこ……いいなぁ。」

“別れてよかったと思ってる“そう言った彼女は本当に美しく、かっこ良かった。
私はそこまで思えない。でも……。

「新しい恋…してみようかな…。」

いつまでも引きずってても明人は戻ってこない。だから…
だから私は……。

「前を向いて歩こう!!暗い私なんて私らしくない!!」

私はそう言うと残っていたコーヒーを全て飲み干した。


「吹っ切れた顔してますね。」

マスターが私の顔を見てそう微笑んだ。

「はい、彼女と話していて…なんか吹っ切れました。」

「そうですか良かったです……!あなたも彼女も卒業ですね。」

「卒業?」

「あっいいえ何でもないですよ。それよりお代わりはいかがです?」

「あっそろそろ帰らなきゃいけないので!マスターご馳走様でした!」

私はマスターにお礼を言うとお店を後にした。

外はすっかり暗くなっていた。


それからの私は忙しかった。新しい恋を探すために合コン三昧…ではなく、まずは私自身と向き合った。

外見ばかり磨いていたから明人にそっぽ向かれた。だから今度は中身を磨く。本当の意味のいい女になって素敵な恋をするんだ。


「優子、今日仕事帰り飲み行かない??」

「ごめん!今日は習い事あるんだ。明日なら行ける!」

「じゃぁ明日にしよう。花嫁修業頑張ってね!」

「何それ花嫁修業じゃないし。」

私はそう笑いながら答えると笑子と別れた。


「ふー疲れたぁ。」

習い事を終え帰り支度をしていると鞄からあの喫茶店のマッチが出てきた。

「そう言えば最近行ってないなぁ…ここから近いしちょっとお茶してこう。」

夜の冷たい空気を頬に感じながら。私はワクワクした気持ちで喫茶店に向かっていた。のだが。

「あれ…?無い……。」

喫茶店が、無い。

閉まっているのでは無く。
喫茶店があった場所には無機質な壁が広がってるだけだった。


「あれ?私…曲がるとこ間違えた?」

引き返してみたけどやっぱりあっていて。
私が呆然と立ち尽くしていると。

「あら?あなた……。」

後ろから声がかかった。

私がゆっくり振り返ると喫茶店で出会ったお姉さんが立っていた。

「やっぱり!後ろ姿が似てるなぁと思ってついてきちゃった。久しぶり。」

「あっあの!喫茶店が無いんですが!!」

あまりの動転ぶりに挨拶もしないまま彼女に聞いた。

「喫茶店ねぇ……不思議よね…消えちゃったのよあそこ。」

「消えた?そんな魔法みたいな事…。」

「私も信じられなかったわよ最初は。でもさ、無いでしょ。跡形も無いじゃない…取り壊すにも1日で出来るわけないし。私あなたと話してたから次の日行ったのよ?そしたらもう無かったの。」

「そんな事が……。」

信じられなくて混乱してる私に彼女は笑いながら言った。

「あそこはたぶん……失恋した人しか入れないのよ。」

「失恋した人…?」

「そう。失恋して立ち直れなくて前を向けない人達の店…失恋カフェ。傷を癒すまで寄り添ってくれるのね。だから傷が癒えたら…入れない。」

「そんな…。」

「だってそうでしょ?傷ついてる時に幸せそうな人なんて見たくないわ。」


確かに…。そう頷く私はこの間のマスターの言葉を思い出した。

“あなたも彼女も卒業ですね。“

そうか…私達は傷が癒えたから…卒業したからもうあの喫茶店には入れないんだ…。

「なんだか寂しいな…。」

「そうね、でもあのお店のおかげで立ち直れたんだから感謝しないと!まだ立ち直れてない子だって居たしね…。」

私はふとあの泣いていたセーラー服の子を思い出した。

「ねえ、良かったら違うお店でお茶しない?今度は失恋の話じゃなくて。」

「あっはい!是非!」

「良かった。失恋カフェ程では無いけどいいお店があるの。そこのパフェがね……」


私達は仲良く歩き始めた。

"ありがとう、そしてあの女の子の傷が早く癒えますように。"

私はそう心の中で呟いた。

「にゃー」私の呟きに答えるかのように路地裏の隅にいた黒猫がひと鳴きすると、深い闇へと消えていった。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...