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3.本庄 陸
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走りだしたバスの車内は、ざわついていた。
当然だ。突然、見たことも無い光景が目の前にあらわれたのだから。
月斗の脳裏にさっきのLINEの文章がよぎる。
月斗は妙に落ち着いている後ろの席の親友に向かって尋ねる。
「陸、さっき言ってた前回と!ってどう言う意味だ?」
陸とは、小学3年の時に、月斗が転校して来てからの付き合いだ。
その頃はまだ、陸の方が月斗よりも背が低く身体つきも随分細かった。
転校初日、1番後ろの席の窓際に座っていた陸の隣に月斗が座る。
「よろしく!」
元気よく月斗が声を掛ける。
「………」
声をかけられた陸は、月斗の方を見ませず窓の外を眺めたまま返事をしなかった。
―――チェッ!暗い奴!
陸に対する第一印象だった。
隣の席だったので、月斗は陸に毎日の様に朝と、放課後に挨拶をしたが、全く返事をしない様なヤツだった。
何がきっかけで、いつから仲良くなったのかは、すっかり忘れてしまった。
今とは随分印象が違う。
今では陸の方が背も高く、身体つきもガッシリしているし、月斗よりも友人は多い方だと思う。
「俺はここに来るのは、2回目だ!」
月斗の後ろの席の陸が小声で言った。
「えっえっえっえっ⁉︎」
思いがけない言葉に驚く。
「前にここに来た!」
続けて陸がポツリ。
「いつ?」
「前回の今日!」
「???えっとどう言う事?」
「俺は前回もこのバスにお前と乗ってここに来ている!」
「俺も2回目って事?」
「そうだな、でも今のお前は1回目だ、そして俺は、今回、今の俺とすり替わったので2回目!」
陸は一体何を言ってるんだ?
「ちょっと頭がこんがらかってるんだけど。」
「月斗、お前は前回俺とここに来ているし俺はお前を助けるためにここにもう一度来ることにした。」
「お…おお…!」
「俺に何かあっ…た?」
「………」
「あったんだ…」
「それを阻止する!」
「そんな事出来るのか?」
食い気味に月斗
「本当は、お前をこのバスに乗せないようにしたかったんだけど、そうも行かないらしい。」
「どういうこと?」
「1か月前の事件は知ってるな?」
「国会議事堂の?」
今朝もニュースでやってたやつだ。
「あれがどうした?」
「このバスに乗ってるほぼ全員があの事件に関与している。」
「なっ⁉︎エッ…1か月前って!あり得ない!」
月斗が思わず声を上げる。
そして、少し間をとったあと思い出したかの様に
「いや、でも確かあの時、お前と一緒にヤフーニュースを見てたはずだ!」
月斗が―ひと月前の記憶をたどる。
「そうだ、間違い無い!国会議事堂えらい事なってるなぁーって言ってたよね?」
2人が会話をしていると、バスがゆっくりと速度を緩めて間も無くして停車した。
月斗が窓の外を見ると、幹の大きさが直径100mはありそうな大木の側にバスが停車し、バスの横に赤いクーペが停まっている。
「お前たちは、しばらく待っていろ!」
そう言って顧問の堂島がバスを降りる。
「停まったな。月斗、赤い魔女のお出ましだ。」
そう言った陸の赤いクーペを見つめる表情が険しくなった気がした。
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