Re:crossWORLD 異界探訪ユミルギガース

LA note (ら のおと)

文字の大きさ
40 / 48
3章 シュレーディンガーの猫編

41..LOST EDEN (失楽園) ソレは呪いか?それとも罰か?

しおりを挟む

        1
 金木猫商会マネーきねこしょうかいの一室。

「調査?」

 堂島が白いネコに向かって聞き返した。

 巨大蟻都市アントシアネン

 幾つもの蟻のコロニーが集まって一つの巨大都市を形成している。

 その中でサイド7と呼ばれる白いアルビノの女王1が治るこの地は比較的、他のサイドに比べ平穏だった。

 商業も盛んで他種族が日常に行き交う街並みは活気に満ち溢れている。

 相手の思考を読み取る蟻達にとって表面上友好的に見えても悪意、敵意などの類は文字通りお見通しであるため来るものは拒まずといったその精神が根強くこの地に浸透していた。

 元々交易商人だった金木猫商会マネーきねこしょうかい社長のこの白いネコもこの都市に腰を据えて随分と何月が過ぎ、今や夜の街やメインストリートの多くの店に関しては分社化して金木猫マネーきねこホールディングスが関与し独立採算制を取っていた。

 グループ会社の中には少々悪どい商売をする輩もいるにはいたが白い金木猫商会マネーきねこしょうかい社長。

 名前はアーサー。

 彼の基本理念はホワイト経営がモットーだった。

「夜の店で働いてもらう予定だったニャがさすがに1人意外未成年はマズイにゃ!ましてやお酒を提供するとなると完全アウトにゃ!」

 目の前に並んだ月斗達を見つめる。

「さっきからアホみたいにボーッと立ってるだけニャ、コレじゃいつまでたっても借金の回収が出来ないニャ……そこで3つほど仕事を頼みたいニャ」と前置きをしたあと

「コレは魔法使アニメーターいである君らにはうってつけの依頼だと思うニャよ!」

「もちろんタダでとは言わないニャ!借金返済のうえ報酬としてたちまち怪我や体力回復する万能薬も用意するニャ!」

「クリソソの事…クリソソの事かーーーーーッ!」陸が突然大声で叫ぶ。

「エッ、急に叫んで何ニャ?」

「それと携帯用食料としてスパイシーな3倍」
「クソソソの事かーーーーーツ!」月斗が大声で叫ぶ。

「また!急に叫んで何?何かお約束みたいな事でもあるニャ?コワいニャ!」

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


 アーサーの提案した一つ目の依頼が簡単な調査だという。

「詳しくは広場にいる情報屋キリギリスに聞いてくれニャ」

         2

 アリの女王1たちのいる操縦席コクピット内。

『一体どんな状況なのだ?』

 女王アリ1の質問に細身の身体に茶髪、心なしか人相も悪くなっている三原が応える。

「このノートに名前を書かれた人間は死ぬんです!ククッ」

『なぜそんなモノを⁈何の為に持って来た?それが今日のお届けものか?死のお届けとでもいうのか?』
 
 女王1の戸惑いの思念が三原に向けられる。

「フフ拾ったんですよ。ここに来る前に偶然に」

 三原がそう言うと慌てて梶が割って入った。

「三原さんノリノリのところすみませんが話しがややこしくなるので辞めてください!」

 高校生に50近いオッサンが嗜められた。

「違いますよ!コレって多分ただの日記ですよ!」

 自称魔王の姿をした梶が黒い表紙のノートをペラペラとめくり内容を確かめた。

「中読みますね!」



 2014年9月14日

 朝から参っちゃった。

 いつも通り子供たちを幼稚園バスで迎えに行ったらなに?なに?この展開?訳わかんない?

 ここって異世界なの?

 異世界転生しちゃたの?

 アラやだ!運転手のおじいさんたら、うっかり事故ってみんなで一斉に転生しちゃったのかしら?

 運転手コラ――ッ!運転手のジジィ!コラァーーーーーーーーーーーーーッ!

 って言ってもまぁ、しょうがないか!テヘ!

 いやむしろ転生よっしゃああああああーーーーツ。

 希望は悪役令嬢、もしくわ魔王の嫁候補来んかーーーーい!

 だけれど姿カタチもそのまんま!

 うーん、ガッカリ!



 梶は大きな声で日記を読み上げた。

「人の日記を声を出してみんなの前で読んだ………?梶くん!君は悪魔か?」

「エッと一応魔王っていう設定でお願いします!」

 梶はそう言うと更にページをめくる。

「コレってあの幼稚園の先生の日記ですよきっと!あの先生もぼくと同じ異世界転生願望者そっちけいだったのか!ハハ」

 梶はそう言って耳まで裂けたその口でニヤリと笑う。

異世界転生願望者そっちけい?』

 女王アリ1が不思議そうに自称魔王の梶を見つめた。

「とにかく用事は済んだしコレを持ち主に返してあげないと」

         3

 いずみ穂波ほなみはかなり焦っていた。

「無い!無い!無い!無い!」

 会場アリーナから一目散にさっき転んだ路地の曲がり角へと向かった。

 落としたとすればあそこ以外には無いはず。

 そう思って全速力でその場所に戻ってみたものの、大事な日記帳は見つからなかった。

「無い!無い!無い!無い!」

(アレを誰かに読まれたら……生きて行けない。)

(でも日本語で書いてるしこの世界の住人が読める訳無いか!)

(いなーーーーッ!)

(いっぱいるやないか!来とるやないか!異世界転移した連中が!)

(堂島先生に会った時ここってどこなんですか?とか言ってみたけど知ってるよ!わかってたよ!思ってた異世界と全く違うけど!異世界に来たーーーってなったよ!マズイマズイマズイマズイーーーってアレを読まれたら!私がラノベ大好きなのがみんなに知られてしまうわ!そうなったら読んだソイツを殺して自分も死のう!てかこっちの世界で死んだらどうなるんだろう?異世界からの転生で元の世界に逆に戻れたりして!って言うてる場合か?)

 ブツブツ独り言を言ってしまう。

 そして穂波は我にかえり辺りを見渡した。

 誰か目撃者は?

 さっきのティッシュ配りの様なリンゴ配りの赤い頭巾の魔女がいる。

(何か知ってるかも知れない)

(でもリンゴを配ってる魔女って明らかに怪しく無い?てゆうか私にリンゴを食べさせて殺そうとした?)

(絶対毒リンゴだし!あんなの貰って食べる人なんていんのかしら?)

 そう思っていささか躊躇しながらも穂波は赤い頭巾の魔女に声を掛けてみる事にした。

        3

 梶と三原は用事があると言って操縦席コクピットから出て行く。

「助かったニャ、後でお礼をするニャ」

 青いネコが2人に礼をいう。

 2人が出て行くと

『それが今日のお取り寄せグルメか?』

 アリの女王1が青いネコの届けた品物に目をやると

「左様でございますニャ!」

 青いネコはそう応え手に持った袋の中から赤い果実を取り出した。

「この果実は皮ごとそのままかじってお召し上がりくださいニャ」

『フム、皮ごと食べるのか?』

「エエ、この果実にはポリフェノールと呼ばれる強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去して血流を改善したり、美白効果があると言われてますニャ!」

『これ以上美白になる必要は無いがな!フフ』

 アルビノの女王アリ1は冗談めいて笑ってみせる。

 彼女は初めて見るその赤い果実を手に取りジッと眺めた。

「表面を服の袖でこすってもらうとツルツルになりますニャ」

 言われるままにアリの女王1が擦ってみる。

 アリの硬い外殻に擦れて果実の表面がグチャグチャになり中から汁が滴った。

『……………』

「失礼しましたニャ……なんならすりおろしても美味しいですニャ……」

 慌てて青いネコは自分の柔らかい肉球のついた手で優しく果実の表面を擦る。

 すると果実の表面に光沢があらわれた。

『おお!』

 女王アリ1は表面が真っ赤に輝いた果実をしばらく見つめたあとゆっくりとかじりついた。

『美味い!酸味があり、それでいて瑞々みずみずしい!コレは何という名前の果実なのだ?』

 女王アリ1の質問に青いネコは

「リンゴにございますニャ」と答えた。

 気をよくして青いネコは

「ささっ!お嬢様もおひとつどうぞニャ」

 袋からリンゴを取り出して娘の女王アリ2に手渡した。

「アリガトウ…デスノ」

 女王アリ2も手にしたリンゴを眺め、優しく服の袖で擦ってみた。

 リンゴは見事に真っ赤に輝く。

 そして女王アリ2はゆっくりと果実にかじりついた。

 と突然、女王アリ2は口を抑えその場にうずくまった。

 隣にいた駿が彼女に駆け寄り背中をさする。

『一体娘に何をした⁈ランスロット!』

 女王アリ1の怒りを露わにした強い思念がランスロットと呼ばれた青いネコの脳に突き刺さる。

「しっ、知らないニャ!」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...