テーマ創作集

さふぁいあ

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影に咲く花

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 君の隣に立つ女の子を何人見送ってきただろう。「君は優しすぎる」「私以外に良い人いるよ」なんて言葉を贈られるたびに君は私の元で寂しそうに笑った。でも確かに、彼は良い人と巡り合っているんだろうと私は思う。隣に立つ影は繰り返すごとに、華やかに柔らかに彩られていく。それでも彼女たちはいつか、彼の元を別れの言葉と共に去ってしまう。
 私なら、そんな言葉をかけないのに。私なら、君が優しいだけじゃないことを知ってる。私なら、君が愛をもらったときの笑顔も大切にできる。私なら、私なら……。幾度となく感じたこの恋心は、それでも彼が私を見ない現実に繰り返し棄却される。彼を絡め取ってしまいたいこの情が、しかしそれでも彼の良い人になれない事実に直面する。結局、私は彼のことを知っていても、彼の幸せを手繰り寄せられはしないのだろうと思う。
 ならばせめて、せめてと私は彼の横の影に祈る。いつか彼につながる赤い糸が、彼を暖かく照らしてくれることを。その暁には私も、君のそばから散ろうと。そんなことを願って今日も私は彼に笑顔を向ける。



“諦める恋、諦められない愛”
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