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プロローグ

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さっきまで命だった物が辺り一面に転がっている。
そこは惨劇の舞台だった。

ハサミで切られた様に体を切断された死体。
腹を貫かれ臓物が飛び出ている死体。
まるで人形の様に手足が引きちぎられた死体。
他にも凄惨な死を遂げたであろう死体が幾つも打ち捨てられている。

壁は返り血で汚れ、床は流れた血が海を作り、窓に付いた血によって部屋は赤く照らされていた。

ここはどこかの学校の教室。
物言わぬ死体達はこの教室にいた生徒だろう。
遠くからパトカーのサイレンが近付いて来るのが聞こえてくる。

そんな文字通り赤い部屋に異形の化物がいた。

蜥蜴が人の姿をしたような見た目の化物は返り血に染まっている,,,それがこの惨劇を作り出した事を雄弁に語っていた。

化物は虚ろな目で死体の1つを切り刻んでいる。
それもかなり執拗に,,,,金髪の生徒の体を鋭い爪で剥き出しになった臓物を刻んでいた。

「,,,,,ハハハ,,,,,,これ俺がやったのかよ,,,,,,」
もはや原型が解らないな程死体を刻み込んでいた化物が突然我に返ったようにそう言う。

腹から鋭い爪の付いた手を抜き出す。
血と体液を手を振り回して落とす。
辺りを見渡してぶつぶつと何かを言っている様だ。

「,,,,ハハハ,,,,俺,,,俺が,,,,化物,,,,クソ,,,幻覚だ,,,薬,,,クスリが足りないんだ,,,,,,」
化物はそう言いながら覚束ない足取りで散らかった教室を歩く。

端にある机の前まで歩き、横に掛けられているスクールバッグに手を伸ばす。
強引にバッグを開けて中を無造作に漁る。

「あった!!あったあったあった!!」
化物は目当ての物を見つけたようだ。
興奮した様子でそれを取り出す。

それは錠剤の入った瓶と何かの液体が入った瓶,,,そして注射器だった。

化物は瓶の中に入った液体を注射器に移す。
そして右手首に注射する。

「,,,,,,はぁ,,,,,,はぁ,,,,,,何だよ!!いつものやつはどこに行ったんだよ!!」
だが満足した結果を獲られずに苛ついたらのか、注射器を投げ捨てる。
そして少し落ち着いたのか化物は辺りを見渡す。

「何だよ,,,,俺,,,,,,本当に化物に,,,,,,」
その時化物は初めて、自分が得たいの知れない何かになっているという事を自覚したようだ。


「俺が,,,,ジャンキーモンスター,,,?,,,ハハハ,,,,嘘だろ,,,,あり得ない,,,,」
自嘲的な笑いを溢しながら化物は頭を抱える。
化物の顔は歪んだ笑みを浮かべている。
だが目は恐怖で潤んでいる。

この化物の名前は横山 真人,,,,惨劇の舞台になった教室に通っていた高校生だ。

何故彼が化物になったのか?
何故こんな悲劇を巻き起こしたのか?
それを語る為には少し時間を戻す事と、この世界を取り巻く問題について話さねばならない。

,,,,,,恐ろしい悪魔の薬と人の業の深さを,,,,,,

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