32 / 100
32 プロ契約
しおりを挟む
困惑する蒼空先輩、一俊先輩、祥也先輩に、啓太は俺たちの前世について話し始めた。
「それじゃあ、春樹の前世がラルカンドで、悠希がガレイル王子で1つ年上、そして伯がエイブという同じ騎士学校の同級生……ってことでいいんだな啓太?」
「蒼空先輩、詳しいことは当人たちから聴いてください。俺は、春樹から聞いた範囲でしか知りませんから」
啓太はそう言いながら、視線を悠希先輩に向けた。
「俺は第3王子という立場で騎士学校に居た。そして、新入生のラルカンドを気に入り可愛がっていた。
ラルカンドは、男好きする容姿のせいで、自分より身分の高い上級生から無理矢理迫られていた。その様子を心配したガレイル王子は、できるだけ守ろうとしたが、結局、その男どもから守ったのはエイブだった。
エイブに守られ始めたラルカンドを、ガレイル王子は好きだと気付いて、ラルカンドに打ち明けたが、ラルカンドに断られた。それでも諦められず、ガレイル王子は愛して欲しいと願い、ラルカンドを想い続けた。
ガレイル王子は、・・・ラルカンドに必要とされたかったんだ。
だから現世の俺は、同じ失敗をしないように、春樹に必要とされる存在になろうと努力している」
悠希先輩は、自分の前世であるガレイル王子について、簡単に説明した。
「俺は、エイブは、始めからラルカンドを好きな訳ではなかったが、途中から好きになり付き合い始めた。
ラルカンドを傷付けようとする奴等を剣で捩じ伏せ、近付く者は王子であろうと許さなかった。ラルカンドの気持ちよりも、独占欲や嫉妬心に支配され、エイブはとことんラルカンドを束縛した。
そして、ラルカンドを孤立させ不幸にした。
だから現世の俺は、春樹を束縛してはいけない・・・俺だけでは守れないし、春樹を苦しめたくない。エイブは、いつもラルカンドを泣かせていた・・・
でも俺は、春樹が好きだという思いに抗えない。束縛できなくても、どうしても付き合いたいんだ」
伯は辛そうに顔を歪めると、泣きそうな顔をして下を向いた後、俺の瞳を真っ直ぐ見て、すがるように付き合いたいと懇願する。
「俺たちは、どうして生まれ変わって、いや、どうして前世の記憶に苦しまなくちゃいけないんだろうって、初めて夢を見た日から考えていた。
きっと何か意味があるんだろうと思いながらも、本当にガレイル王子やエイブに逢えるとは思っていなかった。でも、はっきりと覚醒した今なら分かる。
伯と会う度に涙が零れたのも、ラルカンドがエイブに会いたかったからだ。会いたくて会いたくて、やっと巡り会えて流した嬉し涙だったんだ。
その夜に見た夢で、ずっと分からなかった恋人の名前がエイブだと知った。
悠希先輩のスタジオに初めて行った時、先輩の発した言葉がガレイル王子の言葉に重なり、俺は眩暈を起こし倒れた。そして、やっぱりその夜、ガレイル王子が夢に出てきた。
前世の俺は、エイブが好きで、でも、ずっとガレイル王子のことを気にしていた。
何が心残りで、何を叶えたくて現世で出会ったのか、……どうすることが正しいのかは分からない。
でも、もう後悔したくない。だから、ずるいと分かっていて、俺は2人を好きだという想いを偽らないことにした」
言い終わった俺は、いつの間にか零れた涙を手で拭きながら、信じられないかも知れないけど、毎朝泣きながら寝覚める俺たちは、現世でも苦しんでいると付け加えた。
俺たち3人が話したのは客観的に見た前世の自分であって、本当の思いとか激しさとか時代背景などは語っていない。
夢を見始めた頃は、夢の中の主人公の、愚かさ、自分勝手さ、未熟さ、弱さなど、未完成な若さ故の過ちを、嫌というほど冷静に観てしまった。そして後から、それが己の前世であると気付き覚醒した時、タイムラグがある分、愕然とし、反省し、失望し、恐怖を覚えた。・・・そんなことは、第三者に語っても仕方ない。
「にわかには信じ難いが、春樹が伯を見て涙を流していたのは覚えてる。伯が前世がどうこうと言っていた記憶もあるし、ラルカンドに執着していたのも事実だ」
蒼空先輩がこれまでのことを思い出しながら、少し納得したような感じで頷く。
「まあ、悠希の春樹に対する過保護振りは、金銭的にも物質的にも、常識の範囲を越えていると思っていたが、前世が王子で、現世も金に困ってないところを考えると、妙に納得するものはあるな」
一俊先輩が、やっぱりあのスタジオは春樹のためか……と言いながら、伯に同情めいた視線を向ける。
「まあ、伯の不安は理解できる。悠希は学校も同じだし、部活も同じだ。でも、実際にどうなんだ春樹? お前は同時に2人と付き合うのか?」
「いいえ祥也先輩。付き合うのは伯だけです。悠希先輩を苦しめると分かっていますが、伯が束縛しなければ、悠希先輩にはこれからも俺のサポートをお願いします。結局、伯も苦しむことになると思います。俺も、いろんな感情に押し潰されそうになると思うけど、俺たちは……もう止まることができない運命です」
俺の話を真剣な顔で聞いている悠希先輩と伯は、俺に同意するように何度か頷く。
「そんなに難しく考えなくていいよ。前世の俺は、ラルカンドと一緒に居ることさえできず、何もしてやれなかった。それを思えば、今は幸せなんだ」
「悠希って、もしかしてM気質?」
「言うなあ蒼空、そうかもな。春樹と伯が仲良くしてても、春樹が元気で笑っていればいいと心から思う。でも、伯と別れたら、俺はその日に春樹を抱くけど」
どこか挑むような視線を伯に向け、悠希先輩はニヤリと笑う。
……悠希先輩、皆の前で、抱くとか言うのは止めてください。俺たち男同士なんですよ! 皆が引きますから。
「そんな日はこないと思いますが……悠希先輩、本当にいいんですね?」
「ああ、春樹の気持ちは、きっと変わらない」
互いに火花を散らしながら微笑んでいる2人に、俺はどういうリアクションをとっていいのか分からない。
確かに、悠希先輩を想う気持ちは変わらないという自信はある。
問題は、俺を睨んでいる啓太だ。怖すぎる!
「春樹……本当にいいんだな? 伯、春樹を泣かしたら、悠希先輩より先に俺が殴る。それから、お前ら芸能活動する自覚が足りないぞ! 特に伯! ラルカンドのスキャンダルになるような行動は慎め! 春樹も流されるな。付き合っていると、絶対に悟られるな」
啓太が俺と伯を……いや、特に伯を睨みながら、脅しをかけてくる。
「そうだな、プロデビューが決まったんだから、くれぐれも自重しろよ、伯」
蒼空先輩が伯の肩をパシンと叩いて、自重しろと注意するけど、俺と付き合うことになった伯を、応援するように笑いながらの注意だった。
「あっ! やばい。早く帰って親に説明しなきゃ。11日って直ぐじゃん!」
急に我に返った感じで祥也先輩が叫んだ。確かにのんびりしている時間はない。
いろいろあったプロデビュー祝賀会?だったけど、急遽解散してこれからの準備をすることになった。
2月11日、蒼空先輩は薬局経営者であり音楽家の父親と、伯は専業主婦の母親と、一俊先輩は公務員の父親と、祥也先輩は両親共に仕事だったので1人で契約に向かった。
今後の活動の説明を受け、忙しくなる時期、収入に関する取り決め等を確認し、契約書や同意書にサインした。
ちなみに、蒼空先輩には編曲者として印税が入ることになった。
バンドの名前は、伯の前世の名前から【リゼットン】か【リゼットル】と付けられる予定である。
契約の時には九竜副社長は同席しておらず、社長が対応したらしい。
九竜副社長がバンドの名前を知ったら、どんな顔をするのだろうかと想像し、次に会うのがちょっと楽しみになった。
月末には学年末試験があり、付き合い始めたとはいえ、俺と伯は相変わらずラインのやり取りしかできていなかったが、俺から送信するラインの写真は、川や山などの景色の写真が増えた。
声を聞くと会いたくなって辛いから、2人で会うのは春休みまで我慢しようと決めた。
でも、毎週のように悠希先輩のスタジオに集合し、伯たちのバンドは練習する。俺は新しい曲を作っていく。
何故か監視役のように啓太もやって来て、休日は一緒に電車で帰った。完全にバス通にしたので、休日に乗る電車はなんだか新鮮だった。
3月に入って、俺は家族にこれ迄の決定事項を夕飯の時に伝えることにした。
【離れたくない】の楽曲提供のシンガーが、新堂ミカさんであることは言っていたが、映画の主題歌になることは言ってなかった。
折角だから、姉貴の合格祝いの席で発表しようと、ずっと待っていたのだ。
「それでは、光希の大学合格を祝して乾杯!」と、父さんが嬉しそうにシャンパングラスを掲げた。
母さんも姉貴も兄貴も、もちろん俺も笑顔で、みんなとグラスを合わせる。うちの家族、全員酒には弱いのでノンアルコールだ。泡が出てるから雰囲気でOKである。
両親から御守りとして誕生石のネックレス、兄貴は旅行券5万円をお祝いとして姉貴にプレゼントしていく。
「姉ちゃん、俺からはこれね。プレミアものだから大事にしてよ。換金禁止だから」
「えぇ?……プレゼントはマンガ本なの?……しかも新品じゃないよね?どういうこと?」
みんなで回し読みし、ちょっとくたびれた感じの【あの日の夕焼けを忘れない】7巻を見て、姉貴は不服そうな視線を俺に向けて文句を言う。
「そのマンガ、7月からアニメになるって知ってた?」
「当たり前じゃん! 私を誰だと思っているの? 創英テレビでしょう?」
「そうそう。まあ、背表紙の裏を見てよ。3巻までサインが入ってるから」
俺の言葉を受けて、姉貴は1巻の背表紙を捲る。そこには俺のサインがしてある。
作詞・作曲 ラルカンド・フォース と。サインを考えるのが大変だった。
そして、2巻の背表紙を捲ると、【リゼットル】のバンド名のサインが、3巻目には、俺と伯たちのバンド全員のサインと、【絡んだ糸】と曲名が書いてあった。
「はあ? どういうこと? この【リゼットル】て何?」
「分かんない? 主題歌である【絡んだ糸】を歌うバンドの名前だけど」
「えっ?・・・ええぇ~っ! そ、それじゃあ、春樹の曲が主題歌になるの? ア、アニソン? うっそ~! 信じらんない。でかした弟よ! なんて素敵なプレゼントなの! それで、この【リゼットル】ってバンドの皆さんは、し、知り合いなの?」
ガバッと抱きついてきた姉貴は、既にテンションMAXである。ちょっと怖いくらいに、ギラギラした瞳で俺に質問してくる。
先日スタジオで練習していた時の動画を、特別に姉貴に見せてやる。
俺が撮ったので、どうしても伯の登場回数が多いのは不可抗力である。
全員私服で、お洒落に決めている。それなりに格好いいと思う。九竜副社長も、バンドの実力よりもルックスが気に入っていた雰囲気だったし、蒼空先輩は中性的な魅力があり、一俊先輩は知的でクールビューティな雰囲気、祥也先輩は一見チャラそうだけどカッコいい。伯は真面目な優等生風である。それぞれ個性的でイケメンだ。
俺のスマホを覗き込んでキャーキャー騒いでいる姉貴が、動画を自分のスマホに転送してくれと頼んできたが、このバンドも受験が終わるまでシークレット活動だからと説明し、なんとか許してもらった。
この日俺は、姉貴の超自慢の弟という地位を獲得した。
感動冷めやらぬところで、俺の作った【離れたくない】が、野上監督の映画【色と糸】の主題歌になることも発表し、父さんと母さんがビックリして固まった。
「それじゃあ、春樹の前世がラルカンドで、悠希がガレイル王子で1つ年上、そして伯がエイブという同じ騎士学校の同級生……ってことでいいんだな啓太?」
「蒼空先輩、詳しいことは当人たちから聴いてください。俺は、春樹から聞いた範囲でしか知りませんから」
啓太はそう言いながら、視線を悠希先輩に向けた。
「俺は第3王子という立場で騎士学校に居た。そして、新入生のラルカンドを気に入り可愛がっていた。
ラルカンドは、男好きする容姿のせいで、自分より身分の高い上級生から無理矢理迫られていた。その様子を心配したガレイル王子は、できるだけ守ろうとしたが、結局、その男どもから守ったのはエイブだった。
エイブに守られ始めたラルカンドを、ガレイル王子は好きだと気付いて、ラルカンドに打ち明けたが、ラルカンドに断られた。それでも諦められず、ガレイル王子は愛して欲しいと願い、ラルカンドを想い続けた。
ガレイル王子は、・・・ラルカンドに必要とされたかったんだ。
だから現世の俺は、同じ失敗をしないように、春樹に必要とされる存在になろうと努力している」
悠希先輩は、自分の前世であるガレイル王子について、簡単に説明した。
「俺は、エイブは、始めからラルカンドを好きな訳ではなかったが、途中から好きになり付き合い始めた。
ラルカンドを傷付けようとする奴等を剣で捩じ伏せ、近付く者は王子であろうと許さなかった。ラルカンドの気持ちよりも、独占欲や嫉妬心に支配され、エイブはとことんラルカンドを束縛した。
そして、ラルカンドを孤立させ不幸にした。
だから現世の俺は、春樹を束縛してはいけない・・・俺だけでは守れないし、春樹を苦しめたくない。エイブは、いつもラルカンドを泣かせていた・・・
でも俺は、春樹が好きだという思いに抗えない。束縛できなくても、どうしても付き合いたいんだ」
伯は辛そうに顔を歪めると、泣きそうな顔をして下を向いた後、俺の瞳を真っ直ぐ見て、すがるように付き合いたいと懇願する。
「俺たちは、どうして生まれ変わって、いや、どうして前世の記憶に苦しまなくちゃいけないんだろうって、初めて夢を見た日から考えていた。
きっと何か意味があるんだろうと思いながらも、本当にガレイル王子やエイブに逢えるとは思っていなかった。でも、はっきりと覚醒した今なら分かる。
伯と会う度に涙が零れたのも、ラルカンドがエイブに会いたかったからだ。会いたくて会いたくて、やっと巡り会えて流した嬉し涙だったんだ。
その夜に見た夢で、ずっと分からなかった恋人の名前がエイブだと知った。
悠希先輩のスタジオに初めて行った時、先輩の発した言葉がガレイル王子の言葉に重なり、俺は眩暈を起こし倒れた。そして、やっぱりその夜、ガレイル王子が夢に出てきた。
前世の俺は、エイブが好きで、でも、ずっとガレイル王子のことを気にしていた。
何が心残りで、何を叶えたくて現世で出会ったのか、……どうすることが正しいのかは分からない。
でも、もう後悔したくない。だから、ずるいと分かっていて、俺は2人を好きだという想いを偽らないことにした」
言い終わった俺は、いつの間にか零れた涙を手で拭きながら、信じられないかも知れないけど、毎朝泣きながら寝覚める俺たちは、現世でも苦しんでいると付け加えた。
俺たち3人が話したのは客観的に見た前世の自分であって、本当の思いとか激しさとか時代背景などは語っていない。
夢を見始めた頃は、夢の中の主人公の、愚かさ、自分勝手さ、未熟さ、弱さなど、未完成な若さ故の過ちを、嫌というほど冷静に観てしまった。そして後から、それが己の前世であると気付き覚醒した時、タイムラグがある分、愕然とし、反省し、失望し、恐怖を覚えた。・・・そんなことは、第三者に語っても仕方ない。
「にわかには信じ難いが、春樹が伯を見て涙を流していたのは覚えてる。伯が前世がどうこうと言っていた記憶もあるし、ラルカンドに執着していたのも事実だ」
蒼空先輩がこれまでのことを思い出しながら、少し納得したような感じで頷く。
「まあ、悠希の春樹に対する過保護振りは、金銭的にも物質的にも、常識の範囲を越えていると思っていたが、前世が王子で、現世も金に困ってないところを考えると、妙に納得するものはあるな」
一俊先輩が、やっぱりあのスタジオは春樹のためか……と言いながら、伯に同情めいた視線を向ける。
「まあ、伯の不安は理解できる。悠希は学校も同じだし、部活も同じだ。でも、実際にどうなんだ春樹? お前は同時に2人と付き合うのか?」
「いいえ祥也先輩。付き合うのは伯だけです。悠希先輩を苦しめると分かっていますが、伯が束縛しなければ、悠希先輩にはこれからも俺のサポートをお願いします。結局、伯も苦しむことになると思います。俺も、いろんな感情に押し潰されそうになると思うけど、俺たちは……もう止まることができない運命です」
俺の話を真剣な顔で聞いている悠希先輩と伯は、俺に同意するように何度か頷く。
「そんなに難しく考えなくていいよ。前世の俺は、ラルカンドと一緒に居ることさえできず、何もしてやれなかった。それを思えば、今は幸せなんだ」
「悠希って、もしかしてM気質?」
「言うなあ蒼空、そうかもな。春樹と伯が仲良くしてても、春樹が元気で笑っていればいいと心から思う。でも、伯と別れたら、俺はその日に春樹を抱くけど」
どこか挑むような視線を伯に向け、悠希先輩はニヤリと笑う。
……悠希先輩、皆の前で、抱くとか言うのは止めてください。俺たち男同士なんですよ! 皆が引きますから。
「そんな日はこないと思いますが……悠希先輩、本当にいいんですね?」
「ああ、春樹の気持ちは、きっと変わらない」
互いに火花を散らしながら微笑んでいる2人に、俺はどういうリアクションをとっていいのか分からない。
確かに、悠希先輩を想う気持ちは変わらないという自信はある。
問題は、俺を睨んでいる啓太だ。怖すぎる!
「春樹……本当にいいんだな? 伯、春樹を泣かしたら、悠希先輩より先に俺が殴る。それから、お前ら芸能活動する自覚が足りないぞ! 特に伯! ラルカンドのスキャンダルになるような行動は慎め! 春樹も流されるな。付き合っていると、絶対に悟られるな」
啓太が俺と伯を……いや、特に伯を睨みながら、脅しをかけてくる。
「そうだな、プロデビューが決まったんだから、くれぐれも自重しろよ、伯」
蒼空先輩が伯の肩をパシンと叩いて、自重しろと注意するけど、俺と付き合うことになった伯を、応援するように笑いながらの注意だった。
「あっ! やばい。早く帰って親に説明しなきゃ。11日って直ぐじゃん!」
急に我に返った感じで祥也先輩が叫んだ。確かにのんびりしている時間はない。
いろいろあったプロデビュー祝賀会?だったけど、急遽解散してこれからの準備をすることになった。
2月11日、蒼空先輩は薬局経営者であり音楽家の父親と、伯は専業主婦の母親と、一俊先輩は公務員の父親と、祥也先輩は両親共に仕事だったので1人で契約に向かった。
今後の活動の説明を受け、忙しくなる時期、収入に関する取り決め等を確認し、契約書や同意書にサインした。
ちなみに、蒼空先輩には編曲者として印税が入ることになった。
バンドの名前は、伯の前世の名前から【リゼットン】か【リゼットル】と付けられる予定である。
契約の時には九竜副社長は同席しておらず、社長が対応したらしい。
九竜副社長がバンドの名前を知ったら、どんな顔をするのだろうかと想像し、次に会うのがちょっと楽しみになった。
月末には学年末試験があり、付き合い始めたとはいえ、俺と伯は相変わらずラインのやり取りしかできていなかったが、俺から送信するラインの写真は、川や山などの景色の写真が増えた。
声を聞くと会いたくなって辛いから、2人で会うのは春休みまで我慢しようと決めた。
でも、毎週のように悠希先輩のスタジオに集合し、伯たちのバンドは練習する。俺は新しい曲を作っていく。
何故か監視役のように啓太もやって来て、休日は一緒に電車で帰った。完全にバス通にしたので、休日に乗る電車はなんだか新鮮だった。
3月に入って、俺は家族にこれ迄の決定事項を夕飯の時に伝えることにした。
【離れたくない】の楽曲提供のシンガーが、新堂ミカさんであることは言っていたが、映画の主題歌になることは言ってなかった。
折角だから、姉貴の合格祝いの席で発表しようと、ずっと待っていたのだ。
「それでは、光希の大学合格を祝して乾杯!」と、父さんが嬉しそうにシャンパングラスを掲げた。
母さんも姉貴も兄貴も、もちろん俺も笑顔で、みんなとグラスを合わせる。うちの家族、全員酒には弱いのでノンアルコールだ。泡が出てるから雰囲気でOKである。
両親から御守りとして誕生石のネックレス、兄貴は旅行券5万円をお祝いとして姉貴にプレゼントしていく。
「姉ちゃん、俺からはこれね。プレミアものだから大事にしてよ。換金禁止だから」
「えぇ?……プレゼントはマンガ本なの?……しかも新品じゃないよね?どういうこと?」
みんなで回し読みし、ちょっとくたびれた感じの【あの日の夕焼けを忘れない】7巻を見て、姉貴は不服そうな視線を俺に向けて文句を言う。
「そのマンガ、7月からアニメになるって知ってた?」
「当たり前じゃん! 私を誰だと思っているの? 創英テレビでしょう?」
「そうそう。まあ、背表紙の裏を見てよ。3巻までサインが入ってるから」
俺の言葉を受けて、姉貴は1巻の背表紙を捲る。そこには俺のサインがしてある。
作詞・作曲 ラルカンド・フォース と。サインを考えるのが大変だった。
そして、2巻の背表紙を捲ると、【リゼットル】のバンド名のサインが、3巻目には、俺と伯たちのバンド全員のサインと、【絡んだ糸】と曲名が書いてあった。
「はあ? どういうこと? この【リゼットル】て何?」
「分かんない? 主題歌である【絡んだ糸】を歌うバンドの名前だけど」
「えっ?・・・ええぇ~っ! そ、それじゃあ、春樹の曲が主題歌になるの? ア、アニソン? うっそ~! 信じらんない。でかした弟よ! なんて素敵なプレゼントなの! それで、この【リゼットル】ってバンドの皆さんは、し、知り合いなの?」
ガバッと抱きついてきた姉貴は、既にテンションMAXである。ちょっと怖いくらいに、ギラギラした瞳で俺に質問してくる。
先日スタジオで練習していた時の動画を、特別に姉貴に見せてやる。
俺が撮ったので、どうしても伯の登場回数が多いのは不可抗力である。
全員私服で、お洒落に決めている。それなりに格好いいと思う。九竜副社長も、バンドの実力よりもルックスが気に入っていた雰囲気だったし、蒼空先輩は中性的な魅力があり、一俊先輩は知的でクールビューティな雰囲気、祥也先輩は一見チャラそうだけどカッコいい。伯は真面目な優等生風である。それぞれ個性的でイケメンだ。
俺のスマホを覗き込んでキャーキャー騒いでいる姉貴が、動画を自分のスマホに転送してくれと頼んできたが、このバンドも受験が終わるまでシークレット活動だからと説明し、なんとか許してもらった。
この日俺は、姉貴の超自慢の弟という地位を獲得した。
感動冷めやらぬところで、俺の作った【離れたくない】が、野上監督の映画【色と糸】の主題歌になることも発表し、父さんと母さんがビックリして固まった。
4
あなたにおすすめの小説
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
憧れの先輩の結婚式からお持ち帰りされました
東院さち
BL
アンリは職場の先輩の結婚式にやってきた。隣で泣いている男に出会わなければちょっとしんみりしてやけ酒するつもりの片思い。
クロードは未だ会ったことのない妹の結婚式にやってきた。天使のような妹を直で見られて嬉しいのと兄と名乗れないことに涙した。すると隣の男がハンカチを貸してくれた。
運命の出会いが二人を近づける、そんな恋の一幕です。
両方の視点があります。
のんびり更新するつもりです。
魔王の溺愛
あおい 千隼
BL
銀の髪が美しい青い瞳の少年。彼が成人の儀を迎えた日の朝すべてが変わった。
喜びと悲しみを分かち合い最後に選ぶのは愛する者の笑顔と幸せ───
漆黒の王が心を許したのは人の子。大切な者と心つなぐ恋のお話。
…*☆*…………………………………………………
他サイトにて公開しました合同アンソロジー企画の作品です
表紙・作画/作品設定:水城 るりさん
http://twitter.com/ruri_mizuki29
水城 るりさんのイラストは、著作権を放棄しておりません。
無断転載、無断加工はご免なさい、ご勘弁のほどを。
No reproduction or republication without written permission.
…*☆*…………………………………………………
【公開日2018年11月2日】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる